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高齢者の骨折予防:転倒を防ぎ、安全な生活を支えるために

はじめに

日本では高齢化が進行し、高齢者の転倒および骨折が重大な健康問題となっています。転倒による骨折は、要介護の原因や寝たきりのリスクを高め、QOL(生活の質)の著しい低下を引き起こす要因となります。本コラムでは、「高齢者」「骨折」「予防」のキーワードを軸に、転倒防止に焦点を当て、医療従事者向けにその予防策を解説していきます。

高齢者における骨折の現状と課題

高齢者の骨折の中で最も頻度が高く、かつ重篤な影響を及ぼすのが大腿骨近位部骨折です。日本整形外科学会の統計では、年間約20万人以上の高齢者がこの骨折を経験しており、そのうち多くが転倒を契機としています。
また、転倒による骨折は再発のリスクも高く、初回の骨折後1年以内に再骨折を起こす率は10〜15%と報告されています(Kanis et al., 2004)。

転倒・骨折リスクを高める要因

高齢者が転倒しやすくなる背景には、以下のような多因子が複雑に絡んでいます。
・加齢に伴う筋力低下(サルコペニア)
・平衡感覚の衰え
・視力・聴力の低下
・認知機能の低下
・多剤併用や降圧薬によるふらつき
・家屋内の環境(段差、照明不良、滑りやすい床など)
これらの因子が複合的に影響することで、転倒→骨折→寝たきりという悪循環に陥るリスクが高まります。

高齢者の骨折予防における転倒対策の重要性

高齢者の骨折を防ぐには、骨密度の維持や薬物療法だけでなく、転倒を未然に防ぐ環境整備と身体機能の維持・向上が不可欠です。転倒防止は、予防の第一歩であるとともに、介護予防にも直結する重要な介入ポイントです。

具体的な転倒予防策

1. 身体機能の改善・維持

・筋力トレーニング(特に下肢)
・バランス訓練(Tai Chi、立位バランストレーニングなど)
・有酸素運動(ウォーキング、軽い体操)

2. 栄養管理

・ビタミンDとカルシウムの適切な摂取
・低栄養予防(特にサルコペニア対策)

3. 服薬の見直し

・降圧薬や睡眠薬の副作用確認
・ポリファーマシー(多剤併用)の整理

4. 環境整備

・家屋内の段差や滑りやすい床材の改修
・廊下やトイレ、浴室への手すり設置
・夜間の照明確保と明るさの調整

5. 医療・介護との連携

・地域包括支援センターや訪問リハビリの活用
・フレイル予防プログラムの実施
・転倒リスクアセスメントの定期実施

まとめ

高齢者の骨折予防は、単なる医療介入だけでなく、生活全体に関わる多職種連携と環境整備が不可欠です。医療従事者として、転倒リスクを正確に評価し、個別性のある支援を提供することが、骨折予防の鍵となります。高齢者が安全で自立した生活を維持できるよう、予防的アプローチを実践していきましょう。

参考文献

1. Kanis, J. A., et al. (2004). “Risk of subsequent fracture after a prior fracture.” Osteoporosis International.
2. Gillespie, L. D., et al. (2012). “Interventions for preventing falls in older people living in the community.” Cochrane Database of Systematic Reviews.
3. Bischoff-Ferrari, H. A., et al. (2009). “Fall prevention with supplemental and active forms of vitamin D: a meta-analysis of randomised controlled trials.” BMJ.
4. 日本整形外科学会・日本老年医学会. 高齢者の転倒・骨折予防ガイドライン(最新版)

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