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どんな患者さんに有効?
呼吸リハビリテーションの目的と効果とは?

はじめに

呼吸器疾患を抱える患者に対して、身体機能やQOL(生活の質)の改善を目的として実施されるのが「呼吸リハビリテーション」です。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)をはじめとする慢性呼吸器疾患では、運動耐容能や呼吸困難感、日常生活動作の制限が生じやすく、それらを包括的に改善するための介入が求められます。本コラムでは、「呼吸リハビリテーション」「目的」「効果」のキーワードを軸に、その基本的な考え方と臨床での活用例について医療従事者向けに詳しく解説します。

呼吸リハビリテーションとは

呼吸リハビリテーション(Pulmonary Rehabilitation)とは、患者ごとの状態に応じて構成された多職種による包括的な介入プログラムであり、主に以下のような要素から構成されます。
・運動療法(有酸素運動、筋力トレーニング)
・呼吸訓練(腹式呼吸、口すぼめ呼吸など)
・栄養指導
・疾患教育
・心理的サポート
これらの要素を組み合わせ、身体機能・精神機能・生活機能の改善を目指す包括的アプローチです。

呼吸リハビリテーションの主な対象疾患

呼吸リハビリテーションは、主に以下のような呼吸器疾患を抱える患者に適応されます。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・間質性肺疾患(ILD)
・気管支喘息
・肺がんの術前術後
・胸郭変形や神経筋疾患に伴う呼吸障害
特にCOPDに対しては、運動能力の向上や呼吸困難感の軽減といった明確なエビデンスが蓄積されており、ガイドラインでも推奨されています。

呼吸リハビリテーションの目的

呼吸リハビリテーションの実施目的は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。
・呼吸困難の軽減
・運動耐容能の改善
・ADL(日常生活動作)の拡大
・入院回数の減少と在宅療養支援
・精神的健康(不安や抑うつの軽減)
・疾患の理解促進とセルフマネジメント能力の向上
これらの目的を達成するために、患者一人ひとりの状態や目標に応じた個別化プログラムが必要です。

呼吸リハビリテーションの効果

複数の臨床研究により、呼吸リハビリテーションの有効性が科学的に示されています。代表的な効果は以下の通りです。
1. 運動能力の向上 COPD患者において、6分間歩行距離が有意に延長されたことが報告されています。
2. 呼吸困難の軽減 呼吸リハ後にはBorgスケールでの呼吸困難感が軽減されたという報告があります。
3. QOLの改善 St. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)などのスコアが有意に改善するケースが多く報告されています。
4. 再入院率の低下 COPD患者に対する呼吸リハにより、増悪による再入院率が低下したとするメタアナリシスも存在します。
5. 心理的サポート効果 不安や抑うつといった精神的症状が改善されることで、自己効力感の向上や治療意欲の増進につながります。

プログラムの実際と運用上の注意点

呼吸リハビリテーションは、医師、理学療法士、作業療法士、看護師、栄養士、臨床心理士などの多職種が連携して提供します。
・評価:開始前には、スパイロメトリー、6分間歩行試験、呼吸困難スケール、QOL評価などを実施します。
・個別プログラムの設定:身体状況、疾患の進行度、精神状態、生活背景をふまえて個別に設定します。
・実施頻度と期間:週2〜3回を基本とし、8〜12週間程度の継続が効果的とされています。
・在宅支援:外来・入院だけでなく、在宅での継続支援プログラムも重要です。

まとめ

呼吸リハビリテーションは、単なる運動訓練にとどまらず、生活全体を改善するための包括的介入です。特にCOPDなどの慢性呼吸器疾患においては、運動耐容能、呼吸困難感、QOL、入院率といったさまざまな指標において明確な効果が認められており、ガイドラインでも強く推奨されています。医療従事者としては、患者の状態に応じた適切なプログラムを提供し、多職種での連携を図りながら、患者の生活の質を支える支援を行っていくことが求められます。

参考文献

1. McCarthy B, et al. (2015). Pulmonary rehabilitation for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev.
2. Puhan MA, et al. (2011). Pulmonary rehabilitation following exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev.
3. Spruit MA, et al. (2013). An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement: key concepts and advances in pulmonary rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med.

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