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ADL(日常生活動作)とは?概要と評価方法を徹底解説

はじめに

ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)は、食事や排泄、移動、入浴など、私たちが日常生活を送るうえで不可欠な基本的行動を指します。高齢者医療や介護、リハビリテーションの現場では、患者の自立度や介護の必要性を評価するための重要な指標として用いられています。
本コラムでは、「ADL」「概要」「評価方法」をキーワードに、ADLの基本的な概念から、現場で広く使われている評価手法について、医療従事者向けにわかりやすく解説します。


ADLとは何か

ADLは、基本的日常生活動作(Basic ADL)と、手段的日常生活動作(Instrumental ADL: IADL)に分類されます。
・基本的ADL(BADL):食事、整容、排泄、移動、入浴、更衣などの身体的な動作
・手段的ADL(IADL):買い物、調理、洗濯、服薬管理、金銭管理、電話の使用など、より複雑な日常生活の行動

ADLが低下すると、介護の必要性が高まるため、早期の評価と介入が重要です。


ADL評価の目的と重要性

ADLの評価は、以下のような目的で活用されています。
・要介護認定や介護度判定の参考
・リハビリテーションの目標設定
・入退院支援・在宅復帰支援
・多職種間の情報共有

正確なADL評価により、患者の状態を客観的に把握し、最適な介入計画を立案できます。


主なADL評価方法

ADLを評価するための方法にはさまざまなものがありますが、以下の2つが代表的かつ広く用いられています。

① バーセルインデックス(Barthel Index:BI)

バーセルインデックス(BI)は、10項目の基本的ADLを0~100点の範囲で評価するスケールです。

項目 点数範囲
食事 0~10点
移乗(ベッド⇔車椅子) 0~15点
整容 0~5点
トイレ動作 0~10点
入浴 0~5点
歩行(または車椅子) 0~15点
階段昇降 0~10点
更衣 0~10点
排便コントロール 0~10点
排尿コントロール 0~10点

 

合計点によってADL自立度を把握でき、介護保険における要介護認定の参考にもなります。日本老年医学会のサイト(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_03.html)にも評価用紙が公開されており、臨床現場での活用が容易です。

② FIM(Functional Independence Measure)

FIMは、身体機能のみならず認知機能も含めた18項目を評価し、自立度を7段階で採点します。13項目が身体機能(運動項目)、5項目が認知機能(認知項目)に分類され、最大得点は126点です。
・身体項目:食事、整容、更衣、トイレ、移動、歩行など
・認知項目:理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶

FIMは特にリハビリテーション医療で広く使用されており、患者の機能回復や在宅復帰の見込みを評価する上で有用です。


その他のADL評価尺度

BIやFIM以外にも、次のような評価尺度が存在します。
・Katz Index:基本的ADLの6項目を「自立」「要支援」で評価。簡便で高齢者施設などで用いられます。
・LawtonのIADL尺度:IADLに特化した尺度で、買い物、食事準備、服薬管理など8項目で評価します。
・DASC-21(認知症高齢者の日常生活自立度判定基準):主に認知症患者のADLとBPSD(行動・心理症状)を評価。
・老研式活動能力指標:日本で開発されたIADL評価ツールで、身体的・知的・社会的活動の3側面から評価します。

これらは対象者や評価目的に応じて使い分けられており、包括的なケア計画の立案に役立ちます。


まとめ

ADL評価は、高齢者や要介護者の生活支援、リハビリ、介護方針の立案に不可欠な指標です。代表的なバーセルインデックスやFIMをはじめ、状況に応じた評価ツールを使い分けることで、より的確な支援が可能になります。医療従事者として、ADLの正確な理解と評価の技術を身につけることが、患者の生活の質を支える第一歩です。


参考文献

1. Mahoney FI, Barthel DW. “Functional evaluation: The Barthel Index.” Md State Med J. 1965.
2. Granger CV, Hamilton BB, et al. “Advances in functional assessment for medical rehabilitation.” Top Geriatr Rehabil. 1986.
3. 日本老年医学会. https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_03.html
4. Lawton MP, Brody EM. “Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living.” Gerontologist. 1969.
5. Katz S, et al. “Progress in the development of the index of ADL.” Gerontologist. 1970.

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