中野南口クリニック院長の木全です。
ここでクリニックを開設して約5年になります。もともとは東京女子医大におりまして、そこから何人かのスタッフに来てもらい、現在治療をしています。まぁ、ただのクリニックなので、何か新しいことというよりは既存の患者さんが長く透析できる、ということに集中しています。
G-TESに関してですが、通常であれば高齢者の筋力保持に重点を置かれるかもしれませんが、当院は勤務している患者様の比率が高い事もあり、G-TESをデスクワーク中心に仕事されている患者様を対象として、現在は行っています。高齢患者様にG-TESを行うことを否定するわけではありませんが、透析時間内に行える患者数にも制限があり、より効果的・効率的にと考えた末の決断です。
はい、透析に関しては基本的に日本透析学会にガイドラインが存在します。そのガイドラインにカルシウムやリン、カリウムなど管理について規定がありますが、現在70歳を超える高齢者の透析導入が多くなっていますので、その人たちに厳格な『リン管理』を行い、血管石灰化等が抑制出来るかもしれませんが、余命に対してどこまで有益かに関しては疑問を感じています。厳格に管理する事で、患者の栄養状態が下がったのでは意味がないとの考えから、食事を含めた患者様のQOLなりADLを保ちつつ、ガイドライン管理を緩めてでも管理出来ないかと考えています。
G-TES自体は、自分の記憶が正しければニプロの営業の方が、「こんな機械がありますよ」と他の事案に付け足して、唐突にご紹介いただいたのがスタートだったと思います。
最初は、全く期待もしていませんでしたが、レンタル期間中に複数の職員が出力50%未満の設定で使用し、翌日には筋肉痛を訴えた事もあり、G-TESがパワフルで、十分の能力があると実感しました。普通にEMS装置を買うと考えると、いいお値段するとは思いましたが、医療機器の中ではそれだけの価値がある装置だと思い購入しました。
月・水・金は午前・午後と、働いている方がいらっしゃる夜間の合計でだいたい40名程度、火・木・土は約20名程度の患者さんが透析にいらしています。一日当たり臨床工学技士4名と看護師4名のトータル8名前後で対応しています。
患者さんの特徴としては、透析をしながら就業している患者さんの割合が多く、年齢が比較的若い方が多いということです。
G-TESを使用開始してから、一番長い方でちょうど7か月を経過したところです。最初にG-TESを導入したのは全員就業されている方で、50代後半~60代の方々です。
また、お一方、5か月くらいの長期入院をされて戻ってきた方がいらっしゃいます。重症筋無力症もある方で、当院に戻られた時からG-TESを始めてちょうど2か月経過したところです。食事の量は入院前より減ってしまった感はありますが、筋力は維持できていて、今日も杖をつきながら歩いていらっしゃいました。ベースに筋肉の病気をお持ちですが、今日の診察の際には歩きが結構良くなってきたとご本人がおっしゃっていました。転びにくそうな歩き方というか、見ていてバランスが良くなってきているなと感じました。
7か月以上使用している方からは、歩き始めの一歩を踏み出しやすくなった、通勤の時に駅から歩くのが億劫でなくなった、階段の昇り降りが楽になったなどの感想をいただいています。「健康診断で体脂肪が減ったのがわかったよ」という方もいらっしゃいます。
下肢の筋肉がもりもりに増えたというわけではなく、キープできている感じがするというのが皆さんからよく聞かれることです。当院では1回20分で実施しているのですが、患者さんからは、もっと長時間やりたいという意見が多いです。G-TESをぜひ継続したいという方も多いです。
体成分分析装置での測定で、筋肉量が減らないように見える結果も出ています。ガッツリ増えるわけではないのですが、キープできているということだと思います。2年で7%筋肉が減るという研究データもある中で、これは注目すべきことだと思います。健常人ですら加齢とともに筋肉量が減るという中、透析患者で割と高齢で、という方の筋肉量が減らずにキープできている。それもたった4~5か月やってみただけでわかる、というのはすごいと思います。
透析患者さんからすると週3回4時間以上動けない状態に必ずなってしまうところで、その時間に運動ができるというのはとても良いと思います。こちらが忘れていると患者さんから「今日はないの?」と言われます(笑)。透析室は隣との間隔が狭いので、G-TESをやっていると隣の方から「それ何?」 「私もやってみたい」と声が出ることもあり、そうやって興味を持った方に広がっていっています。
診療報酬としては、「J119」として請求しています。購入価から減価償却を計算すると、途方もない年数がかかりますが、患者が骨折などで他院へ入院し、離席している期間の血液透析の診療報酬を加味すれば、相応の利益のある装置と考えています。参考までに当院で保険請求している際のテンプレートを載せさせて頂きます。
やはりクリニックでは原疾患の悪化や転倒での入院など、患者さんのイベントにより離席してしまうことがあります。それはこちらではどうしようもないことでした。しかし、例えば患者さんの歩行がしっかりしてきた・安定してきたとなれば、転倒して骨折で3~6か月の入院=およそ透析治療39~78回分の離席を防ぐことができる、ということになります。
2年で7%ずつ低下していく筋肉量を維持することで、患者さんの歩ける期間が延びるということは私生活でもたいへん変わります。自分で出かけられるなど、QOLに対してもとても良い影響があります。透析に通う送迎を使わず自力で通える期間が長くなるかもしれません。
そのような「目に見えないマイナス」を減らす一助にG-TESはなっているように思います。