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生体に電気を流すことの驚くべきメリット ― 電気刺激療法の効果と注意点を徹底解説

はじめに ― 電気刺激はなぜ医療で使われるのか

電気刺激と聞くと、「痛そう」「危険なのでは?」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、医療現場では古くから生体への電気刺激が治療やリハビリに活用されてきました。
本コラムでは、電気刺激が生体に与えるメリットとそのメカニズム、具体的な効果、さらに使用する際の注意点について、科学的根拠に基づき詳しく解説します。

生体に電気を流す仕組みとは

生体は微弱な電気信号でコントロールされていることをご存じでしょうか。心臓の拍動や筋肉の収縮、神経の伝達も、すべて電気的な信号によって調整されています。生体に外部から電気刺激を与えることで、これらの生体反応に働きかけることができるのです。

生体電気の基本メカニズム

人体の細胞膜には電位差(膜電位)があり、刺激によってこの電位差が変化すると、筋肉の収縮や神経の興奮が起こります。この生理学的な仕組みを利用し、医療機器では制御された電気刺激を生体に与えて、特定の反応を促す治療法が用いられています。

医療における電気刺激の主なメリット

1. 筋肉の強化と萎縮予防
長期のベッド上安静や加齢による筋力低下は、身体機能の低下を招きます。電気刺激療法(Electrical Muscle Stimulation:EMS)は、筋肉に電気刺激を与えて強制的に収縮させることで、筋力低下の予防や改善に役立つとされています。特に、運動が困難な高齢者や患者のリハビリに有効です。

2. 血流改善と浮腫軽減
電気刺激により筋肉が収縮すると、血液循環が促進されます。これにより、血流の改善や静脈還流の促進、浮腫の軽減に効果が期待されています。特に下肢の血流促進には、低周波電気刺激が有効であるとする研究もあります。

3. 痛みの緩和(TENS療法)
経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)は、皮膚表面から電気刺激を与えて神経を刺激し、痛みを和らげる方法です。TENSは慢性疼痛や術後の痛み、筋・関節痛の緩和に有効であり、副作用が少ない非薬物療法として広く活用されています。

4. 神経の活性化とリハビリ効果
脳卒中後のリハビリなどでは、麻痺した部位の神経を活性化させる目的で電気刺激が利用されることがあります。運動神経への適切な刺激は、神経可塑性を促し、運動機能の回復を助けるとされています。

生体への電気刺激の注意点

電気刺激には多くのメリットがありますが、安全に使用するためには注意すべきポイントも存在します。

1. 使用禁忌の確認
ペースメーカーを使用している方や心疾患のある方には、電気刺激療法は禁忌とされています。使用前に必ず医師の確認を受ける必要があります。

2. 刺激強度と時間の管理
過度な電気刺激は、皮膚トラブルや筋疲労の原因になります。機器の設定は使用目的に応じて適切に管理し、使用時間も守ることが重要です。

3. 適切な部位への使用
神経の走行や筋肉の配置を理解し、正しい部位に電極を装着することが効果的な治療のポイントとなります。

電気刺激を安全に利用するために

医療機関やリハビリ施設では、専門知識を持った医療従事者が適切に電気刺激を活用しています。家庭用の電気刺激機器も市販されていますが、効果的かつ安全に使うためには、使用前に専門家の指導を受けることをおすすめします。
また、効果を過度に期待したり、自己流での長時間使用は避け、製品の取扱説明書や使用上の注意事項を守ることが大切です。

まとめ

電気刺激は、生体に働きかけることで、筋肉の強化、血流改善、痛みの緩和、神経活性化など、さまざまな医療効果をもたらします。正しい知識と適切な使用によって、電気刺激は生体にとって多くのメリットを提供します。しかし、一方で注意点を守らなければ、副作用やトラブルのリスクもあります。これらを十分に理解した上で、安全かつ効果的に活用することが大切です。
電気刺激の可能性を知り、医療や健康維持のために役立ててみてはいかがでしょうか。

参考・引用文献

・Enoka, R. M., & Duchateau, J. (2016). Electrical stimulation of muscle: Theoretical aspects and practical implications. Exercise and Sport Sciences Reviews, 44(1), 42-49.
・Maffiuletti, N. A. (2010). Physiological and methodological considerations for the use of neuromuscular electrical stimulation. European Journal of Applied Physiology, 110(2), 223-234.
・Zhang, Q., et al. (2018). The effect of electrical stimulation therapy on lower limb edema in patients with chronic venous insufficiency. International Wound Journal, 15(3), 333-341.
・Johnson, M. I., & Bjordal, J. M. (2011). Transcutaneous electrical nerve stimulation for the management of painful conditions: Focus on neuropathic pain. Expert Review of Neurotherapeutics, 11(5), 735-753.
・Knutson, J. S., et al. (2015). Neuromuscular electrical stimulation for motor restoration in hemiplegia. Physical Medicine and Rehabilitation Clinics, 26(4), 729-745.
・Walsh, D. M. (1997). TENS—clinical applications and related theory. Churchill Livingstone.

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