骨粗しょう症とは、骨密度が減少し、骨がもろくなってしまう病気です。
骨折リスクが高まることで、寝たきりや生活機能の低下を引き起こし、健康寿命に大きく関わる疾患といえます。日本では、特に高齢者や女性に多く、50歳以上の女性の約半数が骨粗しょう症またはその予備群と報告されています。しかし、骨粗しょう症は“自覚症状のない”進行性疾患であるため、予防や早期発見が重要とされています。
骨は単なる硬い組織ではなく、日々新陳代謝を繰り返す生きた組織です。
骨リモデリングとは
骨は「破骨細胞」によって古くなった骨が壊され、「骨芽細胞」によって新しい骨が作られる――この“骨リモデリング”によって健康な骨が維持されています。
しかし、このバランスが崩れ、破骨細胞の働きが強まったり、骨芽細胞の働きが弱まったりすると、骨量が減少し、骨粗しょう症へと進行してしまいます。
骨リモデリングのバランスを崩す原因はいくつかあります。
1. 加齢
年齢とともに、骨芽細胞の活動が低下し、骨形成力が弱まります。特に閉経後の女性は、エストロゲン分泌の低下により骨吸収が促進され、急激に骨密度が減少します。
2. 栄養不足
カルシウム・ビタミンD・ビタミンKの不足は、骨の健康維持に必要な栄養素の不足につながり、骨粗しょう症のリスクを高めます。
3. 運動不足
運動は、骨に適度な刺激を与え、骨密度を高める重要な要素です。特に負荷運動は骨形成を促進します。
4. 生活習慣
過度な飲酒・喫煙・極端なダイエットなどは、骨密度を低下させる要因です。
骨粗しょう症は、生活習慣の見直しで予防が可能な疾患です。ここでは、科学的根拠に基づいた予防法をご紹介します。
1. 栄養バランスの取れた食事
カルシウム摂取
日本人の成人が推奨されるカルシウム摂取量は約700〜800mg/日です(日本人の食事摂取基準2020年版)。
牛乳・ヨーグルト・小魚・豆製品からの摂取が推奨されます。
ビタミンDとビタミンK
・ビタミンDは腸でのカルシウム吸収を促進し、
・ビタミンKは骨たんぱく質(オステオカルシン)の活性化に関わります。
食事からの摂取だけでなく、適度な日光浴もビタミンDの生成に効果的です。
2. 適度な運動習慣
ウォーキングや階段昇降など、骨に負荷がかかる運動を定期的に行うことが効果的です。
特に、週3回以上・1回30分程度の運動が推奨されています。
3. 禁煙・節酒
喫煙は骨密度を低下させることが報告されており、節度ある飲酒も骨の健康維持に重要です。
4. 定期的な骨密度測定
特に閉経後の女性や高齢者は、定期的に骨密度検査を受け、早期発見・早期対応につなげましょう。
骨粗しょう症は、症状が出てからでは治療に時間がかかります。そのため、“骨の健康に意識を向けること”が何よりも大切です。転倒や骨折を予防し、人生100年時代を健康に過ごすために、今日からできることから始めてみませんか。
・骨粗しょう症は「骨を壊す」と「骨を作る」のバランスが崩れて起こる病気です。
・栄養・運動・生活習慣の改善により、予防することが可能です。
・早期の骨密度測定と適切な生活習慣で、骨の健康を守りましょう。
骨粗しょう症は、予防と意識の積み重ねが健康を守るカギです。今日から、骨の健康を考えた生活を意識してみてください。
・Holick, M. F. (2007). Vitamin D deficiency. The New England Journal of Medicine, 357(3), 266-281.
・Howe, T. E., et al. (2011). Exercise for preventing and treating osteoporosis in postmenopausal women. Cochrane Database of Systematic Reviews, (7).
・Kanis, J. A., et al. (2013). European guidance for the diagnosis and management of osteoporosis in postmenopausal women. Osteoporosis International, 24(1), 23-57.
・Kanis, J. A., et al. (2005). Smoking and fracture risk: a meta-analysis. Osteoporosis International, 16(2), 155-162.
・Sims, N. A., & Martin, T. J. (2020). Osteoclasts provide coupling signals to osteoblast lineage cells through multiple mechanisms. Annual Review of Physiology, 82, 507-529.
・Riggs, B. L., Khosla, S., & Melton, L. J. (2002). Sex steroids and the construction and conservation of the adult skeleton. Endocrine Reviews, 23(3), 279-302.