毎年7月17日は「理学療法の日」とされています。この日は、私たちの健康や生活の質を支えてくれる理学療法士の役割や理学療法の重要性について改めて考えるきっかけとなる日です。
本コラムでは、「理学療法の日」にちなんで、理学療法の概要、実際に行われている治療法の種類、理学療法士の仕事、そして最新の研究に基づく理学療法の効果について、わかりやすく解説します。
「理学療法の日」は、1966年7月17日に日本理学療法士協会が設立されたことに由来しています。この協会は、理学療法士の教育、研究、社会的地位の向上、そして国民の健康と福祉の増進を目的に設立されました。
その後、理学療法は日本全国の病院や施設で広く取り入れられ、高齢化社会の進展とともにますますその重要性が高まっています。7月17日は、理学療法の普及と啓発を目的とした記念日であり、多くの医療機関でイベントやキャンペーンが行われています。
理学療法(physical therapy)は、病気やけが、障害などによって身体の機能が低下した人に対し、運動や物理的手段を用いて機能の回復や維持を図る治療法です。理学療法士(PT:Physical Therapist)が専門的な知識と技術をもって、患者一人ひとりに適したプログラムを立案・実施します。
理学療法の目的は、単に筋力や関節の動きを改善することだけでなく、日常生活の自立や社会復帰をサポートすることにあります。したがって、入院中の患者から在宅で生活する高齢者、スポーツ選手まで、非常に広い範囲で対象とされています。
理学療法では、以下のような治療が行われます。
1. 運動療法
関節可動域訓練、筋力強化運動、バランス訓練、歩行訓練などを通じて、身体機能を回復させる治療法です。
2. 物理療法
温熱、電気刺激、超音波、牽引療法など、物理的エネルギーを使って痛みを和らげたり循環を促進させたりします。
3. 呼吸リハビリテーション
呼吸筋の強化や換気機能の改善を目的とし、慢性呼吸器疾患の患者に効果があるとされています。
4. 神経系リハビリテーション
脳卒中や脊髄損傷など、中枢神経に障害のある患者に対し、運動パターンの再学習や神経可塑性を利用した訓練を行います。
理学療法が科学的に効果を持つことは、多くの研究で示されています。
たとえば、膝関節変形症(変形性膝関節症)に対する運動療法の効果に関するメタアナリシスでは、有酸素運動や筋力強化運動が痛みの軽減や身体機能の向上に有効であることが確認されています。
また、脳卒中後の回復期における集中的な歩行訓練は、機能的歩行能力の改善に寄与することが報告されています。さらに、呼吸リハビリテーションは慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の息切れを緩和し、生活の質を改善することが示されています(McCarthy et al., 2015)。
このように、理学療法はさまざまな症状や病態に対して有効であり、医療の現場でも重要な役割を果たしているのです。
理学療法士は、国家資格を有する医療専門職です。大学や専門学校などで必要な教育課程を修了し、国家試験に合格することで資格を取得します。
理学療法士は病院だけでなく、介護施設、訪問リハビリ、スポーツチーム、地域包括支援センターなど、多様な場で活躍しています。また、医師や看護師、作業療法士、言語聴覚士など他の医療専門職と連携しながら、チーム医療の一員として治療を進めることも重要な役割です。
7月17日の「理学療法の日」には、全国の医療機関や関連団体が理学療法に関する無料相談、リハビリ体験会、講演会などを開催しています。
また、自分自身の健康について考える良いきっかけにもなります。たとえば、
・日常の歩行や姿勢に注意する
・軽いストレッチを取り入れる
・かかりつけの医師や理学療法士に相談してみる
など、小さな一歩が将来の健康につながります。
「理学療法の日」である7月17日は、日々私たちの生活を支えてくれている理学療法士と理学療法の大切さを再認識する日です。高齢化が進む現代において、健康寿命を延ばす鍵の一つがこの理学療法にあります。
これを機に、理学療法の重要性に目を向け、自分自身の健康づくりに活かしてみてはいかがでしょうか。
1. Fransen M, McConnell S, Harmer AR, Van der Esch M, Simic M, Bennell KL. (2015). Exercise for osteoarthritis of the knee: a Cochrane systematic review. Br J Sports Med, 49(24):1554–1557. https://doi.org/10.1136/bjsports-2015-095424
2. Langhorne P, Coupar F, Pollock A. (2009). Motor recovery after stroke: a systematic review. Lancet Neurol, 8(8):741–754. https://doi.org/10.1016/S1474-4422(09)70150-4
3. McCarthy B, Casey D, Devane D, Murphy K, Murphy E, Lacasse Y. (2015). Pulmonary rehabilitation for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev, (2):CD003793. https://doi.org/10.1002/14651858.CD003793.pub3