毎年9月3日は、日本睡眠学会と日本睡眠環境学会が制定した「秋の睡眠の日」です。
この日は、睡眠に関する正しい知識の普及と、より良い睡眠環境づくりを促すことを目的としています。
なぜ「9月3日」なのかというと、「ぐっ(9)すり(3)」の語呂合わせに由来しています。
また、春の3月18日には「世界睡眠の日」がありますが、日本では季節の変わり目である秋にも睡眠を見直す機会を設けようと、2011年に制定されました。
特に「秋」は、気温や湿度が睡眠にとって理想的な環境に近づく季節。
このタイミングで睡眠の質を高め、健康づくりに活かすことが推奨されています。
秋になると「よく眠れるようになった」と感じる人が多いのではないでしょうか。
実際、睡眠と気温・環境の関係には科学的な裏付けがあります。
理想の睡眠環境は「温度26℃以下・湿度50%前後」
人間は、体温が下がることで眠気を感じ、深い睡眠に入ることがわかっています。
そのため、就寝時の室温は26℃以下、湿度は50%前後が理想とされ、これは秋の夜間の気候条件に非常に近いのです。
また、蒸し暑い夏場は深部体温が下がりにくく、眠りが浅くなりがちですが、秋は自然と体温が下がりやすくなるため、睡眠の質が高まりやすい季節といえます。
秋は日照時間が短くなり、夜が長く感じられる季節です。
この「秋の夜長」は、睡眠をしっかり取るための絶好のタイミングといえるでしょう。
メラトニン分泌と睡眠の関係
日照時間が短くなることで、眠気を促すホルモンメラトニンの分泌が増えることが知られています。
これにより、自然と眠りにつきやすくなり、深い睡眠へと導かれるのです。
つまり、秋は“ぐっすり眠る”ための生理的な条件が整う季節といえるのです。
良質な睡眠は、心身の健康を保つうえで欠かせないものです。
では、睡眠不足や質の低下が続くと、どのようなリスクがあるのでしょうか。
1. 免疫力の低下
睡眠は、免疫システムと密接に関わっています。
睡眠不足は免疫応答を弱め、風邪や感染症にかかりやすくなることが報告されています。
2. 精神的な不調
慢性的な睡眠不足は、うつ病や不安障害の発症リスクを高めることがわかっています。
3. 生活習慣病との関連
睡眠不足は、糖尿病・高血圧・肥満など生活習慣病のリスク要因となることも明らかになっています。
「秋の睡眠の日」に合わせて、生活の中で実践したい睡眠習慣をご紹介します。
1. 寝る前のスマホ・PC使用を控える
ブルーライトはメラトニン分泌を抑制し、入眠を妨げるため、就寝1時間前は使用を控えましょう。
2. 夕食は就寝2〜3時間前に済ませる
食事直後は消化活動が活発になるため、夕食は早めにとることで深い睡眠を促します。
3. 軽い運動・ストレッチを取り入れる
寝る前に軽いストレッチや深呼吸を行うことで、リラックス効果が得られ、入眠しやすくなります。
4. 規則正しい生活リズム
休日でも極端な寝坊は避け、毎日同じ時間に起きることで、体内時計が整い、睡眠の質が安定します。
9月3日の「秋の睡眠の日」は、単なる記念日ではなく、
自分の睡眠を見直し、健康への第一歩を踏み出すきっかけにしたい日です。
秋という自然が後押ししてくれる季節を活かし、
より良い睡眠習慣を身につけて、心と体の健康を手に入れましょう。
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