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透析にならないために!透析予防指導の重要ポイント ― 糖尿病管理と生活習慣改善の視点から ―

はじめに

日本では、慢性腎臓病(CKD)患者数が1,300万人以上と推計されており、その多くが自覚症状のないまま進行し、透析療法が必要な末期腎不全(ESKD)に至るケースが後を絶ちません。特に「糖尿病性腎症」は、透析導入原因の第1位とされており、糖尿病患者への早期介入と継続的な管理が「透析予防」の鍵となります。
本コラムでは、糖尿病患者をはじめとしたCKD患者に対して、医療従事者が意識すべき透析予防指導のポイントを、最新のエビデンスに基づいて解説します。

糖尿病と透析予防 ― なぜ糖尿病がリスクになるのか

糖尿病は、持続的な高血糖状態により腎糸球体が障害され、アルブミン尿や糸球体濾過量(GFR)の低下を招きます。これが進行すると、不可逆的な腎機能低下に陥り、最終的には透析が必要になります(American Diabetes Association, 2022)。
特に、糖尿病性腎症の進行は「微量アルブミン尿」から始まるため、早期発見と介入が重要です。血糖コントロール、血圧管理、脂質管理の3本柱に加え、生活習慣全般の見直しが透析予防に直結します。

透析予防に必要な生活習慣改善指導

1. 血糖コントロールの徹底
血糖管理は、糖尿病性腎症の発症・進展を防ぐ最も重要な要素です。HbA1cの目標値は、合併症の有無や患者背景により異なりますが、7.0%未満が基本とされています(KDIGO, 2020)。
また、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は、血糖降下作用に加え、腎保護作用も報告されており、透析予防の観点からも有効と考えられています(Zelniker et al., 2019)。

2. 血圧管理
高血圧は腎症の進行に拍車をかけるため、厳格な血圧管理が推奨されています。CKD患者では、130/80 mmHg未満が目標とされ、ACE阻害薬やARBの使用が効果的とされています(KDIGO, 2021)。

3. 脂質管理
脂質異常症も腎症進行リスクの一因であり、スタチン系薬剤によるLDLコレステロール管理が重要です。心血管イベント予防の観点からも、脂質管理は透析予防の一環として欠かせません。

4. 体重管理と運動習慣
適正体重の維持と定期的な運動は、インスリン感受性の改善や血圧・血糖コントロールに寄与し、透析予防に効果的です。ウォーキングなどの有酸素運動を週150分以上行うことが推奨されています。

食事指導の重要性と実践

食事管理は、糖尿病とCKDの両方の観点から透析予防に不可欠です。エネルギー摂取量やたんぱく質、ナトリウム、カリウム、リンの制限が必要であり、個々の病態に応じた食事指導が求められます。
・糖尿病管理のための適正なエネルギー量の設定
・たんぱく質制限(0.8g/kg/日)で腎負荷を軽減
・塩分摂取量は1日6g未満に
管理栄養士との連携による具体的なメニュー提案や、患者の生活スタイルに合わせた指導が効果的です。

早期発見と継続的モニタリングの重要性

透析予防には、糖尿病性腎症の進行度を把握し、早期に適切な介入を行うことが求められます。
・アルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比)の定期的測定
・GFRの推定と経時的モニタリング
・合併症(高血圧、脂質異常症)の管理
特に、糖尿病患者には年1回以上の尿アルブミン検査と腎機能評価が推奨されています。

多職種連携による透析予防支援

透析予防には、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・理学療法士など、多職種による包括的なサポートが効果的です。患者一人ひとりのリスク評価と個別対応を行い、生活習慣改善の継続を支援します。
また、患者教育を通じた自己管理能力の向上も、透析予防の重要な柱となります。定期的な面談やフォローアップを通じて、患者のモチベーション維持を図りましょう。

まとめ

糖尿病性腎症をはじめとしたCKDの進行予防は、透析導入を防ぐために欠かせない医療介入です。血糖・血圧・脂質管理に加え、食事・運動・生活習慣改善を多職種で支援し、継続的なフォローアップを行うことで、透析予防に大きく貢献できます。
エビデンスに基づいた指導と、患者に寄り添ったサポートで、透析にならない未来を一緒に築いていきましょう。

参考文献

・American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes—2022. Diabetes Care. 2022;45(Suppl 1):S1-S264.
・KDIGO 2020 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2020;98(4S):S1-S115.
・KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Blood Pressure in Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2021;99(3S):S1-S87.
・Zelniker TA, Wiviott SD, Raz I, et al. SGLT2 inhibitors for primary and secondary prevention of cardiovascular and renal outcomes in type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis of cardiovascular outcome trials. Lancet. 2019;393(10166):31-39.

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