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年齢とともに変わる「代謝」の仕組みとは?知っておきたいメカニズムと対策法【知っ得!健康知識】

「最近、食べる量は変わらないのに太りやすくなった」「若いころより疲れが取れにくい」──そんな悩みの背景には、年齢による「代謝」の変化が関係しているかもしれません。
代謝とは、体がエネルギーを作り出し、必要な活動を維持するための化学反応の総称です。呼吸をする、体温を維持する、内臓を動かす、筋肉を動かす……すべてが代謝の一部です。本コラムでは、この代謝の仕組みと年齢による変化について、科学的なエビデンスをもとにわかりやすく解説し、代謝を保つためにできる生活習慣の工夫についてもご紹介します。

基礎代謝と全体の代謝の違い

代謝には主に3つの種類があります。
・基礎代謝(Basal Metabolic Rate:BMR)
 安静にしている状態でも消費されるエネルギー。心臓の拍動、呼吸、体温維持などに使われます。
・活動代謝
 運動や日常生活で体を動かすことで消費されるエネルギー。
・食事誘発性熱産生(DIT:Diet-Induced Thermogenesis)
 食事の消化・吸収・代謝のために使われるエネルギー。
この中でも、全体のエネルギー消費のうち6〜7割を占めるのが基礎代謝です。

年齢とともに代謝が下がる理由

・筋肉量の減少(サルコペニア)
加齢により筋肉量が減少することを「サルコペニア」といいます。筋肉はエネルギー消費の多い組織の一つであり、筋肉量が減ると基礎代謝も自然と低下します。
一例として、Janssenら(2002)の研究によると、60代の男性は20代の男性に比べて平均して約10~15%基礎代謝量が低下することが報告されています。

・ホルモンの変化
年齢とともに成長ホルモンや性ホルモン(テストステロン、エストロゲンなど)の分泌量が低下します。これらのホルモンは筋肉や脂肪、エネルギー代謝に大きく関与しており、分泌量の減少は代謝機能の低下を引き起こします。

・ミトコンドリア機能の衰え
細胞内でエネルギーを生み出す「ミトコンドリア」は、年齢とともにその数や働きが低下すると言われています。これにより細胞レベルでの代謝効率が落ち、エネルギー消費が減っていきます。

年齢別:代謝の変化と注意点

・20代~30代
この時期は代謝が最も活発です。しかし、運動不足や不規則な食生活が続くと、徐々に代謝機能の低下が始まることもあります。

・40代~50代
ホルモンバランスの変化が大きく、特に女性は更年期を境にエストロゲンの分泌が急激に減少し、脂肪がつきやすくなります。筋肉の維持が重要な年代です。

・60代以降
サルコペニアや活動量の低下により、基礎代謝が著しく減少します。無理のない運動習慣を取り入れることで、代謝低下のスピードを緩やかにできます。

代謝を維持するためにできること

・筋肉を維持・増加させる運動習慣
有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングも取り入れることが重要です。筋肉を維持することで基礎代謝が高まり、体全体のエネルギー効率も改善されます。
おすすめ:スクワット、かかとの上げ下げ、軽めのダンベル運動など

・タンパク質中心のバランスの良い食事
高齢者では特にタンパク質摂取が不足しやすく、筋肉量の維持が難しくなります。体重1kgあたり1.0〜1.2gのタンパク質摂取が推奨されています。

・睡眠とストレス管理
睡眠不足や慢性的なストレスは、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、代謝機能の低下を招きます。副交感神経を優位にする生活リズムや、入眠前のリラックスタイムを確保しましょう。

まとめ:年齢に合わせた代謝ケアを

「代謝は年齢とともに落ちていくもの」と諦める必要はありません。代謝のメカニズムを理解し、適切な食事や運動習慣を取り入れることで、年齢を重ねても健やかな体を維持できます。
自分の代謝状態に気づき、小さなことから改善を始めてみませんか?

参考文献・引用論文一覧

1. Janssen, I., Heymsfield, S. B., Wang, Z. M., & Ross, R. (2000). Skeletal muscle mass and distribution in 468 men and women aged 18–88 yr. Journal of Applied Physiology, 89(1), 81-88.
2. Short, K. R., Bigelow, M. L., Kahl, J., Singh, R., Coenen-Schimke, J., Raghavakaimal, S., & Nair, K. S. (2005). Decline in skeletal muscle mitochondrial function with aging in humans. Proceedings of the National Academy of Sciences, 102(15), 5618-5623.
3. Deutz, N. E., et al. (2014). Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: recommendations from the ESPEN Expert Group. Clinical Nutrition, 33(6), 929-936.
4. Barrett, K. E., Barman, S. M., Brooks, H. L., & Yuan, J. X.-J. (2019). Ganong’s Review of Medical Physiology (26th ed.). McGraw-Hill Education.

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