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身体機能と運動機能の違いとは?
リハビリや運動療法に役立つ知識

はじめに

医療やリハビリテーションの現場では、「身体機能」と「運動機能」という言葉が頻繁に使われます。これらは似た意味を持つように思えますが、実際には異なる概念であり、運動器疾患の予防や治療において正しく理解することが重要です。本記事では、身体機能と運動機能の違いについて解説し、エビデンスに基づいた知見を紹介します。

身体機能とは?

身体機能(body function)は、国際生活機能分類(ICF)において「人体の生理的・解剖学的機能」と定義されています。具体的には、以下のような要素が含まれます。

・筋力:筋肉が発揮できる最大の力
・関節可動域(ROM):関節が動かせる範囲
・神経伝達:中枢神経および末梢神経の働き
・循環機能:血液循環や心肺機能
・感覚機能:触覚、視覚、平衡感覚など

これらの要素が正常に働くことで、人は適切な姿勢を維持し、運動を行うことができます。

運動機能とは?

運動機能(motor function)は、身体機能を基盤として発揮される動作の能力を指します。
具体的には、

・歩行
・座位・立位の保持
・バランス能力
・巧緻運動(手先の動作)
・運動の協調性(スムーズな動作)

などが含まれます。運動機能は、神経系、筋骨格系、感覚系が相互に作用することで発揮されます。

身体機能と運動機能の違い

項目 身体機能 運動機能 
定義 身体の基本的な生理・解剖学的機能 身体機能を基盤として発揮される動作能力 
 筋力、関節可動域、神経伝達 歩行、バランス、巧緻運動 
測定方法 筋力測定、関節可動域測定、血液検査など 歩行速度、立ち上がりテスト、Timed Up and Go testなど 


身体機能が低下すると、運動機能にも悪影響を及ぼします。例えば、高齢者では筋力低下(サルコペニア)が進行すると、立ち上がり動作や歩行能力の低下につながります(Cruz-Jentoft et al., 2019)。

運動が必要な理由

運動機能を維持・向上させるためには、適切な運動が必要です。特に、運動器の健康を維持することは、日常生活の質(QOL)向上に直結します。

1.筋力トレーニング

筋力の維持・向上にはレジスタンストレーニングが有効であることが報告されています(Peterson et al., 2010)。

2.柔軟性と関節可動域の維持

関節可動域を維持するためには、ストレッチングやヨガなどの運動が推奨されます(Behm et al., 2016)。

3.バランストレーニング

転倒予防にはバランストレーニングが効果的です。特に高齢者においては、片脚立ちやTai Chi(太極拳)が有効とされています(Sherrington et al., 2017)。

まとめ

身体機能と運動機能は密接に関連していますが、それぞれ異なる概念です。身体機能が低下すると、運動機能にも影響を及ぼし、日常生活に支障をきたす可能性があります。そのため、運動器の健康を維持するために、定期的な運動が重要です。

医療従事者としては、患者の身体機能と運動機能の評価を適切に行い、エビデンスに基づいた運動指導を実施することが求められます。

参考文献

• Cruz-Jentoft AJ, et al. “Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis.” Age and ageing, 2019.
• Peterson MD, et al. “Resistance exercise for muscular strength in older adults: A meta-analysis.” Ageing Research Reviews, 2010.
• Behm DG, et al. “Effectiveness of traditional and alternative stretching methods on range of motion: A systematic review and meta-analysis.” European Journal of Applied Physiology, 2016.
• Sherrington C, et al. “Exercise for preventing falls in older people living in the community.” Cochrane Database of Systematic Reviews, 2017.

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