筋断裂(muscle rupture)は、筋肉が部分的または完全に損傷する状態を指します。主にスポーツや事故、突然の負荷が原因となることが多く、特にアスリートや高齢者に発生しやすいです。
筋断裂の症状は、損傷の程度によって異なりますが、一般的には以下のような症状が見られます。
・急激な鋭い痛み:損傷直後に強い痛みを感じることが多いです。
・腫れと内出血:血管が損傷し、患部が赤紫色に変色することがあります。
・筋力低下:筋肉の収縮が困難になり、力が入らなくなることがあります。
・可動域の制限:痛みにより関節の動きが制限されることが多いです。
軽度〜中等度の筋断裂の場合、保存療法が適用されることが一般的です。
・RICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation)
o 安静(Rest):患部への負担を減らし、回復を促します。
o 冷却(Ice):炎症を抑え、痛みを軽減します。
o 圧迫(Compression):内出血を防ぎ、腫れを抑えます。
o 挙上(Elevation):患部を心臓より高くすることで腫れを抑えます。
・薬物療法:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が炎症と痛みの管理に用いられます。
・物理療法:超音波療法や低周波治療が疼痛軽減に有効とされています。
完全断裂の場合、保存療法では回復が難しいため、手術が必要になります。
・縫合手術:筋線維を直接縫合する手術が一般的です。
・腱移植術:重度の筋断裂で修復が困難な場合、腱を移植して補強する手法も用いられます。
痛みが強い時期は安静を保ちつつ、アイシングや軽いストレッチを行います。
軽い筋力トレーニングを開始し、可動域を徐々に広げます。
筋肉の柔軟性を高めるストレッチも重要です。
ウェイトトレーニングやバランストレーニングを取り入れ、機能回復を目指します。
スポーツ復帰を目指す場合は、競技特異的なトレーニングを行います。
筋断裂は、スポーツや日常生活で発生しやすい外傷であり、早期の適切な治療とリハビリが重要です。軽度の場合は保存療法で回復しますが、重度のケースでは手術が必要になります。回復を促進するためには、段階的なリハビリを実施し、筋力と可動域の回復を目指すことが不可欠です。
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