変形性膝関節症(Osteoarthritis of the knee)は、膝関節の軟骨がすり減り、関節の炎症や痛み、変形を引き起こす疾患です。特に中高年に多く見られ、進行すると日常生活に大きな支障をきたします。
変形性膝関節症は、以下のような人に多く発症します。
・高齢者:加齢に伴い軟骨が摩耗しやすくなるため、50歳以上の人に多く見られます。
・女性:閉経後の女性ではホルモンバランスの変化により、関節の軟骨が弱くなることが報告されています。
・肥満者:体重が増えることで膝関節にかかる負担が大きくなり、変形性膝関節症のリスクが上昇します。
・遺伝的要因:家族内での発症率が高いことが示唆されており、遺伝的素因も関与すると考えられています。
・関節に負担のかかる職業・運動歴:長時間の立ち仕事や膝に負担のかかるスポーツ経験がある人も、発症リスクが高まることが報告されています。
保存療法は、初期から中等度の患者に適用されることが多く、以下の方法が推奨されています。
1.運動療法
運動療法は、膝関節の安定性を向上させ、疼痛を軽減するのに有効です。
・筋力トレーニング:特に大腿四頭筋の強化が重要であり、痛みの軽減に寄与すると報告されています。
・ストレッチ:膝周囲の筋肉を柔軟に保つことで、関節の負担を軽減できます。
・有酸素運動:膝に負担の少ないウォーキングや水中運動が推奨されています。
2.体重管理
肥満は変形性膝関節症の進行を加速させるため、体重を適正範囲に維持することが重要です。減量により関節への負担が軽減され、痛みが軽減することが報告されています。
3.薬物療法
症状の管理には以下の薬剤が使用されます。
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや炎症を抑えるために使用されます。
・ヒアルロン酸注射:関節の潤滑性を向上させ、痛みの軽減に寄与すると考えられています。
・ステロイド注射:短期間の疼痛管理に有効ですが、長期的な効果は限定的とされています。
保存療法で効果が見られない場合、以下の手術療法が検討されます。
1.人工膝関節置換術(TKA)
重度の変形性膝関節症に対して実施される手術で、痛みの軽減と機能改善が期待されます。
2.高位脛骨骨切り術(HTO)
比較的若年の患者に適応されることが多く、関節のアライメントを調整することで症状の改善を図ります。
(1)運動の適切な負荷
過度な運動は関節に負担をかけるため、無理のない範囲で実施することが重要です。
(2)長期的な管理
変形性膝関節症は慢性疾患のため、治療と管理を継続することが大切です。
(3)医師との連携
自己判断での治療は症状を悪化させる可能性があるため、医師の指導のもと適切な治療を受けることが推奨されます。
変形性膝関節症は、高齢者や女性、肥満の方に多く見られる疾患であり、早期の対応が重要です。治療法には、運動療法や薬物療法などの保存療法と、人工膝関節置換術などの手術療法があります。症状の進行を防ぐためには、適切な運動や体重管理、医師との連携が不可欠です。エビデンスに基づいた治療法を実践し、QOLの向上を目指しましょう。
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