スマートフォンやパソコンの長時間使用、趣味や仕事による細かい作業など、現代人の生活において「手」や「指」の使い過ぎは珍しいことではありません。
最近では、使い過ぎによる手指の痛みやしびれ、こわばりといったトラブルが増加傾向にあります。本コラムでは、「手」「指」「使い過ぎ」をキーワードに、これらの症状がなぜ起こるのか、そして予防や対策について、医学的エビデンスに基づいてわかりやすく解説します。
1. 腱鞘炎(けんしょうえん)
腱鞘炎は、腱とそれを包む腱鞘が炎症を起こすことで発症します。特に親指の付け根に痛みが生じる「ド・ケルバン病」は、スマートフォンの過剰使用が一因とされています。手首の同じ動作を繰り返すことで、炎症が起こりやすくなります。
2. ばね指(弾発指)
ばね指は、指の腱が炎症を起こし、動きがスムーズでなくなる状態です。指を曲げた際にカクンと戻る、ばねのような動きをするのが特徴で、家事や手作業を頻繁に行う方に多く見られます。
3. 手根管症候群
長時間のタイピングやマウス操作により、手首にある手根管内の正中神経が圧迫され、しびれや痛みを引き起こす症状です。特に中指、人差し指、親指に症状が現れます。女性に多く、ホルモンバランスも影響すると言われています。
4. ガングリオン
関節や腱の周辺にゼリー状の腫瘤ができるガングリオンも、手指の使い過ぎが原因とされます。痛みを伴う場合もあり、手の甲や手首にできやすいとされています。
現代社会では、以下のような生活習慣が手指のトラブルの原因になっています:
・スマートフォンの長時間使用:片手でのスクロールや文字入力により、親指に負担が集中します。
・パソコン作業:デスクワークの普及により、キーボードやマウスを使う時間が増えています。
・趣味・家事・育児:編み物やDIY、掃除、料理、抱っこなど、繰り返し手指を使う動作が多く含まれます。
これらの動作が積み重なることで、知らず知らずのうちに手指を酷使しているのです。
1. 適度な休憩をとる
30分から1時間に一度は、手を休める時間を作りましょう。タイマーを使って意識的に休憩を取るのも効果的です。
2. ストレッチとマッサージ
指や手首のストレッチ、軽いマッサージは血流を促進し、筋肉や腱の緊張を和らげます。例として、指を一本ずつ優しく反らせる、手首をぐるぐる回すなどの簡単な動作があります。
3. 正しい姿勢と作業環境の見直し
パソコン作業では肘が90度になるような椅子の高さや、手首を反らさずに入力できるキーボードの配置が重要です。スマートフォンの使用時も、できるだけ両手を使うよう心がけましょう。
4. サポーターやテーピングの活用
負担を軽減したい場合には、手首や親指のサポーターを使用することで、過度な動きを防ぐことができます。
5. 症状が続く場合は専門医へ
痛みやしびれが長引く場合には、整形外科やリハビリテーション科を受診しましょう。早期の対応が慢性化を防ぐ鍵です。
「手」や「指」の使い過ぎは、現代人にとって避けられない課題かもしれません。しかし、日常生活の中で少し意識するだけで、手指の健康を守ることができます。無理をせず、手指をいたわる習慣を今日から始めてみませんか。