毎年6月5日は「ロコモ予防の日」とされています。この日は、運動器の健康を見直し、ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)の予防と対策の重要性を考える機会です。
ロコモとは、運動器の障害によって移動機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。高齢者に多いとされていますが、若年層でも発症リスクがあるため、早期の予防が重要です。本記事では、ロコモの基礎知識と予防策について、最新のエビデンスを交えながら解説します。
ロコモとは、骨・関節・筋肉などの運動器に障害が生じることで、歩行や移動が困難になる状態を指します。日本整形外科学会が提唱する概念であり、進行すると介護が必要になるリスクが高まります。
ロコモの主な原因には以下のようなものがあります。
・サルコペニア(加齢による筋肉量の減少)
・骨粗鬆症(骨密度の低下)
・変形性関節症(膝や股関節の軟骨がすり減る)
・脊柱管狭窄症(背骨の神経が圧迫される)
「ロコモ予防の日」は、日本整形外科学会によって制定されました。「6(ロ)5(コ)」の語呂合わせから6月5日が選ばれ、ロコモの認知度向上と予防の啓発を目的としています。
ロコモを予防することで、
・要介護状態になるリスクを低減
・健康寿命を延ばし、生活の質(QOL)を向上
・転倒・骨折の予防につながる
といったメリットがあります。
特に、高齢者にとってロコモの進行は日常生活の自立度を大きく左右するため、早期からの対策が必要です。
ロコモ予防には、運動、栄養、生活習慣の改善が重要です。
1. 運動習慣の確立
運動は、筋力維持や関節の柔軟性向上に役立ちます。以下の運動がロコモ予防に推奨されています。
・スクワット(下肢筋力強化)
・片脚立ち(バランス能力向上)
・ウォーキング(持久力維持)
日本整形外科学会では「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を推奨しており、これらの運動を日常的に取り入れることが推奨されています(Yoshimura et al., 2020)。
2. 栄養管理
筋肉や骨の健康を維持するためには、以下の栄養素を意識することが大切です。
・タンパク質(筋肉の維持・増強)
・カルシウム(骨の強化)
・ビタミンD(カルシウムの吸収を助ける)
高齢者では特にタンパク質摂取が不足しがちであり、ロコモ予防のために食事のバランスを見直すことが必要です(Cruz-Jentoft et al., 2019)。
3. 生活習慣の見直し
ロコモの進行を防ぐためには、以下の生活習慣の改善が重要です。
・適度な運動を継続する
・過度な負担を避ける(無理な動作や重い荷物の持ち運びを控える)
・適切な体重管理を行う(肥満は関節に負担をかける)
ロコモの予防には、医療従事者の適切な指導と支援が不可欠です。
・患者教育の実施(適切な運動・食事のアドバイス)
・早期診断と治療の提供(整形外科、リハビリテーション科との連携)
・地域での啓発活動の推進(健康講座やイベントの開催)
6月5日の「ロコモ予防の日」を機に、運動器の健康を見直し、積極的に予防策を取り入れましょう。ロコモは早期対策によって進行を防ぐことが可能であり、医療従事者として患者に正しい知識と支援を提供することが求められます。
・Yoshimura, N., et al. “Prevention of locomotive syndrome: clinical significance and evidence from epidemiological studies.” Clin Calcium, 2020.
・Cruz-Jentoft, A.J., et al. “Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis.” Age Ageing, 2019.
・Nakamura, K., et al. “Locomotive syndrome: definition and management.” Clin Rev Bone Miner Metab, 2016.