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持病がある人の災害への備え・対策とは?命を守るためのポイント

地震や台風、豪雨など、日本は自然災害が多い国です。
近年は災害の規模が大きくなり、避難生活が長期化するケースも増えています。そんな中、特に注意が必要なのが「持病がある人」です。災害時には医療資源が限られ、普段通りの治療や薬の入手が困難になることもあります。そのため、持病がある人ほど「災害への備え」が重要なのです。
本コラムでは、「災害」「備え」「持病」というキーワードをもとに、持病がある人が今からできる災害対策について、最新のエビデンスに基づいてわかりやすく解説します。

災害時、持病がある人が直面するリスク

医療へのアクセスが困難に

災害時には、病院やクリニックが被災して診療ができなくなったり、道路の寸断により通院が困難になったりすることがあります。また、救急車や訪問医療サービスも平常通りの運用が難しくなるため、緊急時の対応が遅れる可能性があります。
実際に、2011年の東日本大震災では、慢性疾患をもつ避難者において、糖尿病、高血圧、心疾患などの持病の悪化が多く報告されました。

医薬品や医療機器の不足

毎日の服薬や自己管理は命に関わる重要な行為です。しかし、災害によって薬局の在庫がなくなったり、処方が受けられなかったりすることがあります。また、インスリン注射や血糖測定器、酸素濃縮器などの医療機器が使えなくなるリスクもあります。
停電や電池切れによって機器が使用できなくなるケースも想定されます。

持病がある人が行うべき災害への備え

1. 医療情報を整理・携帯する
災害時には、自分の病気について的確に伝えることが大切です。以下のような情報を「お薬手帳」や「災害用医療情報カード」にまとめておくと安心です。
・持病の種類(例:糖尿病、心不全、てんかんなど)
・現在服用している薬の名前・用量・服用時間
・主治医の名前・連絡先
・アレルギーの有無
・医療機器の使用状況(ペースメーカー、人工呼吸器など)

2. 薬と医療用品を備蓄する
最低でも「7日分」、できれば「2週間分」の薬を備蓄しておくことが推奨されています(厚生労働省, 2020)。
また、以下のような医療用品もあわせて準備しておきましょう。
・常備薬(飲み薬・塗り薬・貼り薬など)
・血圧計、血糖測定器、体温計
・消毒液、ガーゼ、包帯
・医療用マスクやグローブ
・電池や充電器(医療機器用)

3. 災害時の避難計画を立てておく
避難先の環境は、持病の管理に大きな影響を与えることがあります。
以下のようなポイントを事前に確認しておきましょう。
・電源確保が必要な医療機器がある場合、電源のある避難所を確認しておく
・通院先の病院と連携している避難場所があるかを調べておく
・災害時に同行避難できる支援者(家族・近隣住民など)を事前に決めておく

4. 服薬・健康管理の習慣を継続する
災害時でも可能な限り通常の服薬や測定を続けることが重要です。急な中断は、命にかかわるリスクを高めます。
避難生活の中でも、スケジュール管理ができるよう、アラーム付きの時計やスマートフォンを活用するのも効果的です。

持病ごとの具体的な対策例

高血圧・心疾患の方
ストレスや水分・塩分制限の乱れによって血圧が上昇するリスクがあります。避難所での塩分過多の食事に注意し、可能であれば減塩タイプの非常食を備えておきましょう。
また、冷え込みや睡眠不足も心疾患を悪化させる可能性があるため、毛布や寝袋などの保温グッズも準備しておくと安心です。

糖尿病の方
インスリンや血糖測定器などの管理が必要です。保冷バッグや予備バッテリーの準備が重要です。
避難生活では高血糖になりやすく、脱水や感染症のリスクも高まるため、水分補給も意識的に行いましょう。

呼吸器疾患の方
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息をもつ方は、粉じんやストレスで症状が悪化する可能性があります。
予備の吸入薬やN95マスク、加湿器の備えがあると安心です。
酸素療法を行っている方は、非常用電源の確保について医師と事前に相談しましょう。

まとめ:持病がある人こそ、日常からの備えが命を守る

災害はいつ起こるかわかりません。特に持病がある人にとっては、「災害=命のリスク」となる可能性があります。
だからこそ、平常時からの備えが何よりも重要です。
「自分の病気を知る」「必要な物を備える」「周囲と連携する」――この3つを意識して、今日からできる対策を始めましょう。
自分や大切な人の命を守るために、日々の備えが明日を支えます。

参考文献・論文

1. Kario K. et al. (2012). Disaster Hypertension — Its Characteristics, Mechanisms, and Management. Circulation Journal, 76(3), 553–562. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-12-0024
2. Tanaka S. et al. (2015). Impact of the Great East Japan Earthquake on Glycemic Control in Patients With Diabetes. Diabetes Care, 38(9), e137–e138. https://doi.org/10.2337/dc15-0620
3. 厚生労働省(2020)「災害時における医薬品等の備蓄ガイドライン」

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