日本人の平均睡眠時間は世界の各国と比較すると非常に短く、5~6時間未満という衝撃的な結果が出ています。
特に睡眠時間が短いのは40~50歳代の男女で、睡眠の質に限っては女性のほうが不満を感じていることが明らかになっています。
そこで関連性が強いと言われているのが「更年期」です。
事実、40~50歳代の女性は更年期と重なることもあり、不眠との関連は深いものがあります。
この記事では女性の更年期障害と睡眠の関係について詳しく解説していきます。
女性の更年期障害と睡眠の関係について解説します。
女性の更年期障害はさまざまな症状があるものの、睡眠への影響はきわめて強いと言えます。
東京医科歯科大学女性健康医学講座の寺内公一教授によると、更年期は女性ホルモンのエストロゲンが関与するため、睡眠の質に大きく影響するとのこと。
そして、あくまで睡眠への不満を訴えているのは40~50代の女性であることから、女性ホルモンが大きくゆれ動く更年期こそが、不眠を招いている可能性が高いと言われています。
厚生労働省が平成27年に発表した「国民健康・栄養調査」によると、睡眠の質にもっとも不満を感じているのは40~50代女性で、以下のような悩みを抱えていることが明らかになっています。
・「日中に眠気を感じる」
・「睡眠時間が足りない」
・「睡眠全体の質に満足できない」
このように女性の更年期障害と睡眠の関係性は強いと言えます。
不眠などの睡眠障害は更年期による影響かもしれません。
女性の更年期障害について詳しく解説します。
更年期障害とは、閉経前後10年くらいの期間において、日常生活に支障をきたす症状や障害のことを指します。
更年期障害の原因はさまざまですが、もっとも代表的なのは「女性ホルモン(エストロゲン)の低下」による身体の変化と言われています。
その他にも次のような要因があります。
・家庭や職場における対人関係
・子どもの独立
・家族の病気
・家族の介護
・死別
・ストレス
・本人の性格
これらひとつでも発症しますし、総合的に関わって発症するケースもあります。
更年期障害における主な症状は次の3つに大別されます。
1. 血管運動神経の症状
2. 身体の症状
3. 精神の症状
■血管運動神経の症状
ほてり、のぼせ、発汗など
■身体の症状
冷え、しびれ、めまい、動悸、胸痛、息苦しさ、頭痛、肩こり、腰背部痛、関節痛、疲れやすいなど
■精神の症状
イライラする、抑うつ気分、不安、不眠、うつなど
女性の更年期障害の治療について解説します。
更年期障害の治療法は大きく分けると次の2つに大別されます。
1. ホルモン補充療法
2. 漢方薬
それぞれ特徴があり、患者に適した治療法を用います。
ホルモン補充療法は女性ホルモンを補うかたちで、できるだけ閉経前の状態に近づけることを目的とした治療です。
次のような症状に対して効果があると言われています。
・ほてり
・のぼせ
・発汗
漢方薬は医薬品ではないため即効性はありませんが、東洋医学の基本概念「気・血・水の乱れを整える」ことを目的とし、長いスパンでの服用によってさまざまな症状を改善できます。
通常、漢方薬は患者の体質や症状から適切なものを判断して処方されますが、女性の更年期障害には次のものが代表的です。
・加味逍遥散(かみしょうようさん)
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
更年期に発症するうつ病は不眠の原因になってしまう可能性があります。
睡眠を客観的に評価した研究結果によると、女性は男性より長く眠り、よく眠れているようです。
しかし、40~50代になると突然に眠れた実感がなくなり、不眠が続くようになることがあります。この場合、更年期障害が招く「うつ病」が原因の可能性があります。
更年期に発症するうつ病は不眠を招く原因ですが、そのほかにも女性の更年期障害における症状と似ている部分が多いです。
さらに合併している可能性もあるため、本人が気づかないというケースは珍しくありません。
更年期のうつ病、そして更年期障害において注意すべき症状は以下の3つ。
1. 強い不安
2. 不眠
3. 食欲低下による体重の減少
これらに悩まされている場合は合併している可能性があるので、医師に相談することをおすすめします。
更年期障害はさまざまな症状や障害があるため、本人が発症に気づきにくい部分があります。
現時点で更年期障害の疑いがある場合は、次の専門外来にて診断を受けましょう。
・「更年期外来」
・「女性外来」
または心療内科や精神科に相談することで具体的な治療法が確立します。