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医療従事者に多い「感情労働」とそのセルフケア方法 ― 燃え尽きないために知っておきたい対処法【医療従事者の健康】

医療従事者は日々、患者やその家族とのコミュニケーションを通じて、診療やケアを提供しています。その中で生じる「感情をコントロールしながら働く労働」——すなわち感情労働が、医療現場では避けて通れない課題となっています。
本コラムでは、医療従事者に特有の感情労働の実態と、心身の健康を守るためのセルフケアの方法について、エビデンスをもとに解説します。

感情労働とは ― 医療従事者にとっての現実

1. 感情労働の定義

「感情労働」とは、労働の一環として感情を管理・表現することを求められる業務を指します。Hochschild(1983)の研究では、感情労働は「感情表現の管理」を通じてサービスを提供する仕事と定義されました。
医療従事者は、以下のような場面で感情労働を強いられています。

患者への共感的な対応
苦情や不満への対応
悲しみや怒りなどの感情を抑えながらの業務
参照:Hochschild AR. The Managed Heart. University of California Press; 1983.

2. 医療従事者に特有の感情労働

医療現場では、単にサービスを提供するだけでなく、患者の命や人生に関わるため、医療従事者の感情労働は他業種よりも強い精神的負荷がかかることが報告されています。

患者・家族の感情的対応への共感的対応
終末期医療や緩和ケアでの感情のコントロール
医療事故やクレーム対応による心理的ストレス
これらが積み重なることで、感情的疲労や燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高まります。
参照:Moss M, et al. Burnout syndrome in critical care healthcare professionals. Am J Respir Crit Care Med. 2016

感情労働がもたらす医療従事者への影響

1. 燃え尽き症候群(バーンアウト)

感情労働に起因する代表的な問題が、バーンアウトです。
Maslachによると、バーンアウトは以下の3要素から成り立ちます。

・情緒的消耗(Emotional Exhaustion)
・脱人格化(Depersonalization)
・個人的達成感の低下(Reduced Personal Accomplishment)
バーンアウトは、仕事のパフォーマンス低下だけでなく、離職や心身の健康障害に直結する重大な問題です。
参照:Maslach C, Jackson SE. The measurement of experienced burnout. J Occup Behav. 1981

2. 二次的外傷性ストレス(二次的トラウマ)

医療従事者は患者のトラウマに接することで、自身も二次的外傷性ストレスを抱えることがあります。これにより、感情の麻痺や情緒不安定に陥ることもあり、適切な対処が必要です。
参照:Figley CR. Compassion fatigue: Toward a new understanding of the costs of caring. Springer. 1995

医療従事者が実践したいセルフケア方法

1. 感情労働への意識化とリフレクション

まず重要なのは、自分自身が感情労働のストレスを受けていることに気づき、振り返る(リフレクション)ことです。

日々の業務で感じたことを記録する
同僚との振り返りや対話
自己の感情や反応を客観視
これにより、自分の感情を適切に整理し、コントロールしやすくなります。
参照:Epstein RM. Mindful practice. JAMA. 1999

2. ストレスマネジメントの実践

感情労働からくるストレスを軽減するために、以下の方法が有効とされています。

・マインドフルネス瞑想
・リラクゼーション法(呼吸法・ヨガ)
・適度な運動と睡眠の確保

特にマインドフルネスは、感情コントロール力の向上やバーンアウト予防に効果があると報告されています。
参照:Irving JA, et al. Mindfulness-based stress reduction: A meta-analysis. J Psychosom Res. 2009

3. 組織的なサポートと環境づくり

医療機関側が提供できる支援も重要です。

定期的なストレスチェック
スーパービジョンやカウンセリング体制
チームでの対話・サポートの場づくり
職場全体で感情労働の問題を共有し、セルフケアを支える風土を作ることが、結果として医療の質向上にもつながります。
参照:West CP, et al. Interventions to prevent and reduce physician burnout. Lancet. 2016

まとめ

医療従事者にとって、感情労働は避けられない業務の一部ですが、その負荷を自覚し、適切にセルフケアを行うことは、心身の健康維持と職業的持続可能性に直結します。
リフレクションやマインドフルネスをはじめとしたセルフケアを実践し、職場全体での支援体制を強化することで、医療現場における感情労働の負担軽減に取り組んでいきましょう。

参考文献

1. Hochschild AR. The Managed Heart. University of California Press; 1983.
2. Moss M, Good VS, Gozal D, et al. Burnout syndrome in critical care healthcare professionals. Am J Respir Crit Care Med. 2016;194(1):106-113.
3. Maslach C, Jackson SE. The measurement of experienced burnout. J Occup Behav. 1981;2(2):99-113.
4. Figley CR. Compassion fatigue: Toward a new understanding of the costs of caring. Springer. 1995.
5. Epstein RM. Mindful practice. JAMA. 1999;282(9):833-839.
6. Irving JA, Dobkin PL, Park J. Mindfulness-based stress reduction: A meta-analysis. J Psychosom Res. 2009;68(6):539-544.
7. West CP, Dyrbye LN, Shanafelt TD. Interventions to prevent and reduce physician burnout. Lancet. 2016;388(10057):2272-2281.

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