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褥瘡の原因と治療法とは?
ガイドラインに基づく最新の対応法

はじめに

高齢化の進行や在宅医療の拡大により、褥瘡(じょくそう)の予防と治療はますます重要性を増しています。褥瘡は、単に皮膚の損傷だけでなく、患者のQOLを著しく低下させる疾患であり、感染や疼痛の原因にもなります。
本コラムでは、褥瘡の発生メカニズム、リスク要因、国内外のガイドラインに基づく治療法を、エビデンスとともに医療従事者向けに詳しく解説します。

褥瘡とは?

褥瘡とは、持続的な圧迫やずれなどの力が皮膚およびその下にある組織に加わることで生じる、局所的な組織壊死のことを指します。骨突出部位(仙骨部、大転子部、踵部など)に好発し、寝たきりや長時間同一体位を続ける患者に多く見られます。

褥瘡の原因

● 直接的要因(物理的ストレス)

・圧迫(pressure):体重によって皮膚と骨の間に圧がかかることで血流が低下し、組織壊死を引き起こします。
・ずれ(shear):体位ずれにより皮膚が引き伸ばされ、血管が蛇行・閉塞することで虚血が生じます。
・摩擦(friction):ベッド上での体動や移乗時の摩擦により、表皮が損傷しやすくなります。

● 間接的要因(全身状態の影響)

・栄養障害(低アルブミン血症など)
・浮腫
・貧血・低酸素血症
・末梢循環不全
・皮膚の乾燥・湿潤(失禁関連皮膚炎:IAD との関連)

NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)では、褥瘡の原因を「圧迫」+「ずれ」+「組織耐性の低下」の組み合わせとして定義しています。

褥瘡の分類(ステージ)

褥瘡は皮膚および皮下組織の損傷の程度に応じて、以下のように分類されます(厚生労働省/NPUAP分類)。

ステージI:非可逆性の発赤、皮膚欠損なし
・ステージII:表皮~真皮の部分的な欠損(浅い潰瘍)
・ステージIII:皮下脂肪にまで及ぶ完全な組織欠損
・ステージIV:筋肉・骨・腱まで露出する深部潰瘍

これらの評価は、治療方針決定に大きな影響を与えます。

ガイドラインに基づく治療方針

● 日本褥瘡学会ガイドライン(2015)
日本褥瘡学会が発行する「褥瘡予防・管理ガイドライン」は、科学的根拠に基づいた診療支援を目的としており、以下の4本柱を基に治療が構成されています。
1. 圧迫の除去と体位変換
2. 局所創傷管理(ドレッシング材、外用薬)
3. 栄養管理
4. 全身管理・感染対策

各治療法のポイント

1.圧迫除去と体位変換
・最も基本的かつ重要な治療法です。
2時間ごとの体位変換、エアマットやウレタンマットの使用が推奨されます。
・骨突出部の圧を分散する体位(30度側臥位など)も効果的とされています。
Gefen et al.(2014)によると、適切なマットレス使用により褥瘡リスクを50%以上低減できることが示されています。

2.局所創傷管理
湿潤環境を維持する創傷ケア(モイスチャーコントロール)が基本。
・ハイドロコロイド、フォーム、アルギン酸などのドレッシング材の選択は創の状態に応じて行います。
壊死組織がある場合は、デブリードマン(外科的、酵素的、生物的)を行う必要があります。
European Pressure Ulcer Advisory Panel (EPUAP)も、モイスチャーバランスの維持を推奨しています。

3.栄養管理
・栄養状態の改善は、創傷治癒を促進する鍵です。
・低アルブミン血症(Alb<3.0g/dL)やBMI低下がある場合は、高タンパク・高カロリーの栄養介入が推奨されます。
・必要に応じて経腸栄養やサプリメント(亜鉛、ビタミンCなど)も考慮します。
Langer et al.(2003)では、栄養改善により褥瘡の治癒期間が短縮することが報告されています。

4.感染対策
・感染徴候(発赤、腫脹、浸出液増加、異臭、発熱など)がある場合は、抗菌薬の使用や局所洗浄が必要です。
・感染性褥瘡は治癒が遅れやすく、MRSA対策も重要です。

電気刺激を用いた治療の可能性

近年、電気刺激療法(Electrical Stimulation Therapy, EST)が褥瘡治療の新たな選択肢として注目されています。電気刺激は、創傷治癒を加速させるメカニズムが複数報告されています。

● 電気刺激による作用機序
・組織血流の改善:局所の血流を増加させ、酸素供給を促進
・細胞遊走の促進:線維芽細胞や白血球が傷口に集まりやすくなる
・創傷収縮と肉芽形成の促進
・抗菌効果:一部の菌に対し殺菌効果を示す報告もあり

● エビデンスと活用例
Wood et al.(1993)のメタ解析では、電気刺激療法が褥瘡の治癒期間を短縮する有意差が認められました。
日本褥瘡学会ガイドライン(2015)でも、推奨度Bとされていましたが、最新の改訂版(2022)では推奨度1A:行うことを推奨する(強い推奨)となっています。

● 実施方法の一例
・低周波または高電圧パルス電流(HVPC)を使用
・1日20~60分、週3~5回実施が目安
注意点としては、ペースメーカー装着者、創部に金属が存在する患者などには慎重な適応判断が必要です。

チームアプローチの重要性

褥瘡治療は、単独の医療者では完結しません。褥瘡対策チーム(PCT:Pressure ulcer Care Team)による多職種連携が、治癒率の向上と再発予防に大きく寄与します。
・医師:治療方針と全身管理
・看護師:創傷ケア、体位管理
・理学療法士・作業療法士:ポジショニング、活動性向上
・管理栄養士:栄養状態の評価と介入

予防の視点:再発させないために

治癒後も、再発防止が重要です。再発率は高く、報告によれば1年以内に30~50%の再発が起こるとされています。
再発予防には以下が必要です。
・座位時間の制限
・適切な座位姿勢とクッション選定
・毎日の皮膚チェック
・栄養・水分摂取の継続

まとめ

褥瘡は、圧迫やずれによって発生する皮膚・軟部組織の壊死であり、重症化すると患者のQOLや生命予後に影響を及ぼします。ガイドラインに基づいた総合的なアプローチ、そして多職種による連携が治療の鍵となります。
医療従事者として、早期発見と的確な介入、継続的な予防活動を通じて、患者の生活の質を守りましょう。

参考文献

1. 日本褥瘡学会(2015)『褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版』
2. Gefen A, et al. (2014). Pressure ulcers: Current understanding and future directions. J Tissue Viability, 23(4): 216-225.
3. Langer G, et al. (2003). Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev.
4. National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP). Prevention and Treatment of Pressure Ulcers: Clinical Practice Guideline (2019).
5. European Pressure Ulcer Advisory Panel (EPUAP). Guidelines on Prevention and Treatment of Pressure Ulcers (2014).

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