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秋の健康診断を活かす!医療現場で実践する生活習慣病予防と運動療法指導のポイント

はじめに

秋は医療現場で健康診断が実施され、患者の健康状態を確認する重要な時期です。
健康診断の結果をきっかけに、医療従事者は患者の生活習慣病リスクに早期に気づき、適切な指導を行うことが求められます。
高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病は、進行すれば重篤な疾患につながるため、医療従事者による一次予防の介入が非常に重要です。
本コラムでは、健康診断後の患者に対して、生活習慣病予防を目的とした運動療法や生活指導を医療現場でどのように行うべきか、エビデンスに基づいて解説します。

健康診断結果に基づく患者指導の重要性

1. 健康診断は患者の気づきを促す機会

患者は自覚症状がない限り、自身の健康リスクに無頓着な場合が多くあります。
しかし、健診結果として具体的な数値(例:血圧、血糖、コレステロール)が示されることで、

・健康意識が高まる
・行動変容のきっかけになる

といった効果が期待できます。
医療従事者はこのタイミングを逃さず、生活習慣病予防の必要性と改善方法を伝えることが重要です。

2. 健康診断で注目すべき生活習慣病リスク指標

・血圧
・空腹時血糖・HbA1c
・LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪
・BMI・腹囲

これらの結果が基準値を逸脱していた場合は、生活改善指導と共に運動療法の導入を検討します。

医療従事者が知っておきたい運動療法の基本

1. 有酸素運動の効果と指導方法

有酸素運動は、血圧・血糖・脂質の改善に有効とされています(Colberg et al., 2016)。
・目安:1回30分、週3〜5回、中等度強度(ややきつい)
・例:ウォーキング・軽いジョギング・サイクリング

継続が難しい患者には、
・10分×3回/日でも効果がある
と伝え、始めやすさを重視した指導が効果的です。

2. レジスタンス運動(筋力トレーニング)

筋力トレーニングは、基礎代謝向上やインスリン感受性改善に寄与します(Liu et al., 2019)。
・目安:週2〜3回、主要筋群を使った運動
・例:スクワット・かかと上げ・チューブトレーニング

運動負荷は無理なく、正しいフォームで、痛み等が伴わないように行うよう指導しましょう。

3. ストレッチ・柔軟体操の活用

運動開始前後のストレッチは、怪我の予防や柔軟性向上に役立ちます。
また、ストレッチ自体も血流改善やリラクゼーション効果があります。

医療現場で実践する生活習慣病予防指導のポイント

1. 健診結果説明時に生活改善の必要性を伝える

・現状のリスク
・今後起こりうる健康問題
・予防のために必要な生活習慣の改善

を明確に伝えることで、患者の行動変容を促します。

2. 患者に合わせた運動療法の提案

・運動未経験者には、まずは日常生活での活動量増加を提案
・身体に不安がある患者には、主治医と相談の上、個別の運動処方を検討
・医療機関内での運動指導プログラム活用も推奨

3. 継続できる仕組みづくり

・短時間・分割での運動提案
・日々の記録(運動日誌など)の推奨
・家族や周囲と一緒に取り組む環境づくり

継続しやすい工夫を伝えることが、生活習慣病予防の成功に直結します。

運動療法指導で注意すべき点

・過度な運動負荷は逆効果になるため、無理のない範囲で指導
・高血圧・心疾患・糖尿病がある場合は、主治医の指示のもと運動を開始
・定期的なモニタリングとフォローアップが必要

患者の安全と持続性を最優先に考えた運動指導が求められます。

まとめ

・健康診断は、患者の生活習慣病予防のための重要な介入チャンスです。
・医療従事者は、健診結果を活かした生活習慣改善・運動療法の指導を積極的に行いましょう。
・個々の患者の状況に合わせた提案と、継続できる環境づくりが、行動変容を促します。

患者の生活を支える医療従事者として、健康診断後のアプローチを有効に活用していきましょう。

参考文献

・Colberg SR, Sigal RJ, Yardley JE, et al. Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2016;39(11):2065-2079.
・Liu Y, Ye W, Chen Q, et al. Resistance Exercise for Glycemic Control, Muscular Strength, and Lean Body Mass in Older Adults With Type 2 Diabetes: A Meta-Analysis. Diabetes Ther. 2019;10(5):2115-2130.
・World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva: WHO; 2020.

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