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高齢者の歩行訓練と筋力維持・増強 ― リハビリで実践したい効果的なアプローチとは?

はじめに

日本は超高齢社会を迎え、高齢者の自立支援や介護予防は医療・介護現場における重要な課題です。特に「歩行能力の低下」は転倒や生活不活発病のリスクを高め、要介護状態を招く要因の一つとされています。
そこで本コラムでは、高齢者を対象とした「歩行訓練」と「筋力の維持・増強」を目的としたリハビリテーションの効果的なアプローチについて、最新のエビデンスに基づき解説します。

高齢者における歩行能力低下の背景

加齢に伴う筋力低下やバランス機能の低下は、高齢者の歩行能力に大きく影響します。特に下肢筋力の減少は、歩行速度の低下や歩幅の短縮、歩行の不安定さにつながります。
また、サルコペニアやロコモティブシンドロームといった加齢関連疾患も、歩行能力低下の一因です。

歩行訓練の基本と効果

歩行訓練は、単に歩く動作を繰り返すだけでなく、正しい歩行パターンを再学習させることが目的です。具体的には、

・歩行補助具を用いた歩行訓練
・トレッドミルを活用した速度調整付き歩行訓練
・バランス練習や段差昇降運動

などが挙げられます。特にトレッドミル歩行は、転倒リスクを抑えつつ反復的に歩行練習ができるため、有効性が示されています。

筋力維持・増強の重要性とトレーニング法

高齢者の筋力トレーニングでは、特に下肢筋群(大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋)を対象とした運動が推奨されます。低〜中強度のレジスタンストレーニングでも筋力増強効果が得られることが報告されており、

・椅子からの立ち上がり動作(スクワット)
・カーフレイズ(踵上げ)
・セラバンドを使った抵抗運動

など、自重や軽負荷で行えるものが有効です。また、週2〜3回の頻度が推奨されています。

歩行訓練と筋力強化を組み合わせたリハビリの効果

歩行訓練と筋力トレーニングを組み合わせることで、歩行能力・バランス機能の改善が相乗的に得られることが多くの研究で示されています。
特に、

・筋力強化→歩行訓練の順序
・バランストレーニングを加えた複合的アプローチ

が効果的とされており、リハビリテーションの現場では包括的な運動プログラムの導入が重要です。

高齢者の特性に配慮した運動負荷と安全管理

高齢者には、心血管系や骨・関節の疾患リスクがあるため、運動負荷の設定には細心の注意が必要です。目安としては、

・運動強度はBorgスケールで11〜13(ややきつい程度)
・モニタリングを行いながらの実施
・疲労感や疼痛に配慮した調整

が求められます。リハビリ実施時には必ず医療従事者の観察下で行い、安全管理を徹底しましょう。

まとめ

高齢者の歩行訓練と筋力維持・増強は、自立支援や介護予防に欠かせない要素です。科学的根拠に基づいたリハビリプログラムの導入により、転倒予防や生活の質の向上が期待できます。
医療従事者は、個別の状態に応じた適切なアプローチを提供し、高齢者の生活機能維持に貢献していきましょう。

参考文献

・Rantanen T, Guralnik JM, Foley D, et al. Midlife hand grip strength as a predictor of old age disability. JAMA. 1999;281(6):558-560.
・Pohl M, Mehrholz J, Ritschel C, Ruckriem S. Speed-dependent treadmill training in ambulatory hemiparetic stroke patients: a randomized controlled trial. Stroke. 2002;33(2):553-558.
・Peterson MD, Sen A, Gordon PM. Influence of resistance exercise on lean body mass in aging adults: a meta-analysis. Med Sci Sports Exerc. 2010;42(2):326-337.
・Latham NK, Bennett DA, Stretton CM, Anderson CS. Systematic review of progressive resistance strength training in older adults. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2003;58(1):M48-64.

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