「朝、指が動かしにくい」「曲げた指が伸びない」「カクンと音がして痛い」――そんな症状を感じたことはありませんか?その不快な症状、もしかすると「ばね指」かもしれません。
ばね指は、指の動きに違和感や痛みを伴う症状で、進行すると日常生活にも支障をきたします。特に家事やパソコン作業、スマートフォンの操作など、手を頻繁に使う現代人にとっては他人事ではない症状です。
本コラムでは、ばね指の初期症状や原因、進行するとどうなるのか、そして放置のリスクや対策方法まで、わかりやすく解説します。気になる指の違和感、早めの対応で改善を目指しましょう。
ばね指とは、指の腱(けん)がスムーズに動かなくなり、「カクン」「パチン」といったばねのような動きを起こす疾患です。医学的には「弾発指(だんぱつし)」と呼ばれます。
指を曲げる筋肉は、腱というひも状の組織を通じて指の骨に力を伝えます。その腱が通るトンネル状の部分を「腱鞘(けんしょう)」と呼びますが、この腱鞘が炎症や肥厚により狭くなると、腱の動きが妨げられ、指の曲げ伸ばしの際に引っかかりが生じます。これがばね指の主なメカニズムです。
また、発症しやすいのは親指・中指・薬指で、特に女性や更年期世代に多く見られます。更年期によるホルモンバランスの変化や、家事・育児・パソコン作業といった手の酷使が、ばね指のリスクを高めると考えられています。
ばね指は、ある日突然強い症状が現れるというより、徐々に違和感や痛みが出てくるのが特徴です。以下のような初期症状に心当たりがある方は、早めに対策を考える必要があります。
・朝、指がこわばって動かしにくい
・指の付け根(手のひら側)に痛みや腫れがある
・指を曲げた後に伸ばしにくい
・曲げた指が「カクン」「パチン」と跳ねるように伸びる
これらの症状は、日中には和らぐこともあるため、「たいしたことない」と放置されやすいのが厄介です。しかし、放置することで腱や腱鞘の炎症が悪化し、指が完全に曲がったまま戻らなくなることもあります。
ばね指の原因は「指の使いすぎ」と「腱鞘の炎症」です。特に以下のような人は発症リスクが高いとされています。
・パソコンやスマホを長時間使う
・編み物や裁縫、料理など細かい作業を頻繁に行う
・ピアノ演奏やスポーツなど指を酷使する習慣がある
・更年期以降の女性
・糖尿病や関節リウマチなどの基礎疾患がある
腱鞘炎の一種として扱われることもありますが、ばね指は「腱が引っかかる」という機械的な障害を伴うため、一般的な腱鞘炎よりも進行すると厄介です。
ばね指を放置すると、炎症が慢性化し、次のような問題が起こることがあります。
・痛みが常に続くようになる
・指の動きが悪くなり、曲げ伸ばしに制限が出る
・引っかかりが強くなり、自力で伸ばせなくなる
・指が曲がったまま固まってしまう
こうなると、日常生活にも大きな支障が出るため、早期対応が重要です。特に「朝のこわばり」や「軽い痛み」で済んでいるうちに対策を取ることが、重症化を防ぐポイントです。
ばね指の対策は、初期であれば自宅でのセルフケアでも改善が期待できます。以下の方法を試してみましょう。
1. 指を休ませる
使いすぎた指をまずはしっかり休ませましょう。
必要に応じてサポーターやテーピングで固定することも有効です。
2. 温めて血流を促進
お風呂にゆっくり入ったり、蒸しタオルで温めたりして血流を促しましょう。炎症が強いときは、冷やすのも効果的です。
3. ストレッチとマッサージ
無理のない範囲で、指のストレッチや手のひらのマッサージを行うと、筋肉の緊張を和らげ、腱の動きを助けます。
4. 指の負担を減らす習慣を意識
スマホの操作時間を短くする、キーボードやマウスの使い方を見直すなど、日常生活で指にかかる負担を軽減する工夫も大切です。
セルフケアで改善が見られない場合や、症状が進行している場合には、医療機関での治療が必要です。一般的な治療には以下のようなものがあります。
・薬物療法:消炎鎮痛薬やステロイド注射などで炎症を抑える
・物理療法:超音波や電気刺激などで血流を促進
・装具療法:スプリントなどで固定して安静を保つ
・手術:重症の場合は、腱鞘を広げる手術(腱鞘切開)が行われる
早期に受診すれば、手術に至らず改善するケースが多いため、気になる症状があれば早めに整形外科を受診しましょう。
ばね指は「指をよく使う人」に多く、特に女性にとっては他人事ではない症状です。初期であればセルフケアで改善が見込めますが、放置すれば指が動かなくなるなどのリスクもあります。 もし、「指がこわばる」「カクンとする」などの違和感を感じたら、早めの対策が大切です。日常生活の工夫やセルフケア、そして必要に応じた医療機関の受診で、快適な指の動きを取り戻しましょう。