「最近、手や指がしびれる」「朝になると手がこわばっている」そんな症状に心当たりはありませんか?それは「手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)」かもしれません。手根管症候群とは、手首の内側にある「手根管」というトンネル状の部分で正中神経が圧迫され、痛みやしびれ、指の動かしづらさが生じる状態です。特に親指、人差し指、中指に症状が現れやすく、女性や中高年に多く見られます。今回は、日常生活でできる【セルフケア】方法について、マッサージやテーピングなどを中心にわかりやすく解説します。
● よくある症状
・親指~中指のしびれ、違和感
・手のひらの痛み
・指先の感覚が鈍くなる
・物を落としやすくなる
・夜間や朝方に症状が強く出る
これらの症状は進行すると、母指球(親指の付け根のふくらみ)がやせて力が入りづらくなることもあります。
● 原因は?
主な原因は以下のようなものです。
・更年期や妊娠によるホルモンバランスの変化
・手の使いすぎ(パソコン作業、家事、スマホ操作など)
・糖尿病、リウマチ、甲状腺機能低下症
・ガングリオン(腫瘤)などによる圧迫
これらが重なると、手根管内の圧力が上がり、神経が圧迫されて症状が出ます。
軽度〜中等度の手根管症候群では、自宅でできるケアが症状緩和に役立つことがあります。以下で、具体的なセルフケアの方法を紹介します。
1. 手首のストレッチ・体操
目的:手首周囲の柔軟性向上と神経の滑走性の確保
▼ 方法①:手首を反らせるストレッチ
・肘をまっすぐに伸ばし、反対の手で手のひらをゆっくり後ろに反らせます。
・20〜30秒保持して、左右それぞれ2~3セット行います。
▼ 方法②:神経滑走体操(メディアンナーブグライディング)
・指先を伸ばしたまま、肘を曲げ伸ばしして正中神経を滑らかに動かすような体操です。
・ゆっくり10回程度繰り返しましょう。
※滑走体操は、Huisstede et al.(2010)のレビューでも有効性が示唆されています。
2. マッサージ
目的:周囲の筋肉の緊張を緩め、血流を改善
▼ やり方:
・手のひらや前腕(手首から肘まで)をやさしく指圧しながらマッサージします。
・特に「手のひらの母指球筋」「前腕の屈筋群」を重点的に行いましょう。
・オイルやクリームを使うと滑らかに行えます。
注意点:強く押しすぎると逆に痛める可能性があるので、心地よい圧を意識してください。
3. テーピング
目的:手首の安定化と過剰な動きの抑制
▼ 基本の貼り方:
・手首の横断方向に伸縮テープを1~2本巻き、手根管部分の過度な動きを抑えます。
・サポーターの代わりに使用することも可能ですが、夜間装着は医師と相談して行ってください。
テーピングは短期間での使用が基本で、皮膚トラブルに注意しましょう。
4. アイシングと温熱の使い分け
・急性期(痛みが強いとき): 氷や冷湿布でアイシング
・慢性期(こわばり中心): 蒸しタオルなどで温める
ご自身の症状に合わせて使い分けましょう。
セルフケアで改善が見られない、もしくは症状が悪化している場合は、医療機関を受診してください。以下のような状態では早期受診が必要です。
・毎日手がしびれてつらい
・親指に力が入らず物が持てない
・指の感覚がほとんどない
治療としては、装具療法、ステロイド注射、手術療法(靭帯の切開)などがあります。いずれにしても、専門医の診断が大切です。
・長時間同じ姿勢での作業を避け、こまめに休憩を取りましょう
・手首に過度な負担がかかる動作を減らす(例:スマホ操作の時間を短くする)
・就寝時はリストスプリントを装着するのも有効です
手根管症候群は、日常の工夫や簡単なセルフケアで症状の進行を防いだり、軽減させたりできることがあります。早期の対処がカギですので、「もしかして?」と思ったら、今回ご紹介したストレッチやマッサージをぜひ試してみてください。また、症状が長引く、悪化する場合は早めの受診をおすすめします。
・Huisstede, B. M., et al. (2010). “Carpal tunnel syndrome. Part II: effectiveness of surgical treatments—a systematic review.” Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 91(7), 1005–1024.
・O’Connor, D., Marshall, S., & Massy-Westropp, N. (2003). “Non-surgical treatment (other than steroid injection) for carpal tunnel syndrome.” Cochrane Database of Systematic Reviews, (1), CD003219.
・American Academy of Orthopaedic Surgeons (AAOS). “Carpal Tunnel Syndrome: Information for Patients.”

