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最近よく聞くフレイルとは?定義と種類、医療現場での注意点まで

はじめに

日本の高齢化が進む中で、「フレイル」という概念が注目を集めています。フレイルとは、健康と要介護の中間に位置する状態を指し、早期発見と介入によって健康な状態に戻る可能性がある可逆的な状態です。本コラムでは、「フレイル」の定義と種類に加え、医療従事者が押さえておくべき注意点や評価方法について詳しく解説します。加えて、近年注目されている新しいフレイル概念(アイフレイル、オーラルフレイル、フレイルチェストなど)についてもご紹介します。

フレイルとは何か?その定義と特徴

フレイルは、加齢に伴う様々な身体的・心理的・社会的機能の低下により、ストレスに対する脆弱性が増した状態を意味します。最初にこの概念を提唱したのはFriedらであり、以下の5項目のうち3つ以上に該当する場合に「フレイル」と判定されます。

・体重減少
・疲れやすさ
・歩行速度の低下
・握力の低下
・身体活動量の減少

該当数が1~2項目の場合は「プレフレイル」とされ、早期介入が推奨されます。

フレイルの種類

フレイルには大きく分けて以下の3つの側面があります。

1.身体的フレイル(Physical Frailty)
筋力の低下、歩行困難、サルコペニアなどが含まれます。

2.心理的・認知的フレイル(Cognitive/Psychological Frailty)
うつ症状や認知機能の軽度低下を指し、認知症リスクの指標にもなります。

3.社会的フレイル(Social Frailty)
孤立、役割喪失、社会的参加の減少などが含まれ、生活機能の低下に直結します。

最近注目されている「○○フレイル」の概念

近年、フレイルの概念はさらに細分化され、特定の部位や機能に着目した以下のような用語が登場しています。

・アイフレイル(Eye Frailty)
加齢による視力低下、白内障や緑内障など視覚障害が原因で生活機能が低下する状態。
転倒リスクの増加や外出の制限、社会的孤立につながることが懸念されています。

・オーラルフレイル(Oral Frailty)
噛む力、飲み込む力、舌や口唇の機能低下などが進行し、食生活や栄養状態に悪影響を与える状態。
誤嚥性肺炎や低栄養、さらには身体的フレイルの進行に関連するため、歯科的介入が重要です。

・フレイルチェスト(Flail Chest)
外傷による肋骨骨折などで胸郭が不安定になり、呼吸機能が低下する重篤な状態。
高齢者では転倒や軽微な外傷でも起こる可能性があり、救急医療や集中治療の対象となります。

・ヒアリングフレイル(Hearing Frailty)
加齢性難聴や聴覚障害によってコミュニケーションが困難となり、社会的孤立や認知機能低下を引き起こす状態。
補聴器の使用や環境音への配慮などが早期から必要です。

・高齢者フレイル(Geriatric Frailty)
上記の複数のフレイル要因を複合的に抱える高齢者の総合的な脆弱状態を意味します。
医学的評価に加えて、地域包括ケアや多職種連携が重要です。

フレイル評価と早期発見の重要性

フレイルは早期に発見することで、予防や回復が可能な状態です。以下のような評価ツールが臨床で活用されています。

・J-CHS(日本版 Cardiovascular Health Study)
・KCL(Kihon Checklist)
・フレイルバスター

いずれも身体・認知・社会性の3側面から構成され、簡易かつ実用的に評価が可能です。

フレイルの予防と介入策

フレイルの進行を防ぐためには、多角的なアプローチが必要です。

1.運動
レジスタンストレーニング(筋力強化)
有酸素運動(ウォーキングなど)
バランス訓練

2.栄養
タンパク質・ビタミン・ミネラルの摂取強化
オーラルフレイル対策としての咀嚼訓練や食形態の見直し

3.社会参加
地域サロンや高齢者教室への参加促進
孤立を防ぐ定期的な訪問や声かけ

4.医療・介護との連携
地域包括支援センターとの協働
フレイル予防プログラム(リハビリ、保健指導など)の導入

まとめ

フレイルは単なる身体的な衰えではなく、心理・社会的側面を含めた総合的な脆弱性の状態です。医療従事者としては、高齢者の生活背景や多面的な健康状態を理解し、早期評価と個別対応による介入が求められます。近年増えてきたアイフレイルやオーラルフレイルといった部位別のフレイルにも注目し、地域との連携や包括的支援を進めることが、真の高齢者ケアにつながります。

参考文献

1. Fried LP, et al. (2001). “Frailty in older adults: evidence for a phenotype.” J Gerontol A Biol Sci Med Sci.
2. Dent E, et al. (2016). “Frailty measurement in research and clinical practice: A review.” Eur J Intern Med.
3. 日本老年医学会. フレイル診療ガイド2021.
4. Shimada H, et al. (2013). “Prevalence of frailty in community-dwelling Japanese older adults.” J Am Med Dir Assoc.
5. Inoue M, et al. (2020). “Eye frailty and its association with falls and functional decline in community-dwelling older adults.” BMC Geriatrics.
6. Tanaka T, et al. (2018). “Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly.” J Gerontol A Biol Sci Med Sci.

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