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早期離床リハビリテーション加算とは?ICUでの実践と算定要件を徹底解説

はじめに

集中治療室(ICU)における早期離床とリハビリテーションの重要性が高まる中、診療報酬制度においてもその取り組みが評価されるようになりました。今回は、令和6年度診療報酬改定で注目されている「早期離床・リハビリテーション加算」について、概要や算定要件、そして実際の効果に関するエビデンスを交えて解説します。

早期離床・リハビリテーション加算とは?

「早期離床・リハビリテーション加算」は、ICUなどの特定集中治療室に入室した患者に対して、入室後早期から離床やリハビリテーションを実施することで、最大14日間、1日あたり500点が加算される制度です。

この加算は、患者の運動機能や呼吸機能、摂食嚥下機能などの維持・改善を目的とした多職種によるチーム医療の取り組みを評価するものです。対象となる病棟は以下の通りです。

ICU(特定集中治療室)
HCU(ハイケアユニット)
SCU(脳卒中ケアユニット)
PICU(小児特定集中治療室)
EICU(救命救急入院料算定病棟)

算定要件のポイント

算定には、以下のような厳密な要件が定められています。

1. 専任スタッフの配置
ICU経験5年以上の医師
集中治療経験5年以上かつ研修修了の看護師
急性期医療経験5年以上の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士

2. 早期介入の開始
入室後48時間以内に離床・リハビリ計画を立案し、実施を開始

3. プロトコルの整備と記録
離床・リハビリの実施内容と時間を診療録に記載
定期的なプロトコルの見直し

4. 他のリハビリ加算との併算定不可
同日に疾患別リハビリテーション料(心大血管、脳血管、呼吸器など)との併算定は不可

ICUでの早期離床・リハビリの効果

実際にICUで早期離床・リハビリテーション加算を導入した施設では、以下のような効果が報告されています。

1. 在院日数の短縮と自宅退院率の向上
松江市立病院の研究では、加算導入前後の患者を比較した結果、早期リハ群では在院日数が有意に短縮し、退院時のFIM(機能的自立度評価)が高く、自宅退院率も向上したと報告されています(*1)。

2. 人工呼吸器管理期間の短縮
同研究では、人工呼吸器管理期間も短縮され、せん妄発症率の低下も確認されました。これにより、患者の身体的・精神的負担の軽減が期待されます。

3. 多職種連携の強化
2022年度の全国アンケート調査によると、加算導入後に多職種連携が改善されたと回答した施設は65.5%にのぼり、チーム医療の質向上にも寄与していることが示されています(*2)。

現場の課題と今後の展望

一方で、加算導入に伴う業務量の増加や、休日対応の体制整備など、現場では課題も多く報告されています。特に、休日のリハビリ提供体制については、看護師のみで対応している施設が多く、理学療法士や作業療法士の関与が限定的であることが課題とされています(*2)。

また、加算点数の増加や算定可能日数の延長を望む声も多く、今後の制度改定に向けた議論が期待されます。

まとめ

「早期離床・リハビリテーション加算」は、ICUにおける早期介入の重要性を診療報酬制度として評価する画期的な取り組みです。医療従事者が制度の理解を深め、適切な算定と実践を行うことで、患者の予後改善と医療の質向上につながります。今後もエビデンスに基づいた取り組みを積極的に推進し、制度の改善に向けた現場からの声を届けていくことが求められます。

参考文献

1. 松浦 佑哉(松江市立病院 リハビリテーション部)当院ICUにおける早期離床・リハビリテーションの効果と課題の検討
https://doi.org/10.32294/mch.23.1_8

2. 倉田和範. (2024). 2022年度診療報酬改定における早期離床・リハビリテーション加算の見直し. 日本リハビリテーション医学会雑誌, 33(1-3), 23-20.
https://doi.org/10.15032/jsrcr.23-20

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