日々の仕事や家事、スマートフォンの使用などで手を酷使していると、「親指が痛い」「指の動きがスムーズでない」といった不調に悩まされる方が増えています。その代表的な疾患に「強剛母指」と「ばね指」があります。いずれも手指の機能に関わるトラブルですが、原因や症状には違いがあります。
本コラムでは、強剛母指とばね指の特徴や違いを整理し、セルフケアや予防の工夫についてもわかりやすくご紹介します。特に働く女性にとって、手指の不調を早めに理解し、正しく対応することは日常生活や仕事のパフォーマンスを維持するうえで大切です。
「強剛母指(きょうごうぼし)」は、母指(親指)の付け根、具体的には第1中手指節関節(MP関節)に生じる拘縮や硬直を指します。指が曲げ伸ばししにくくなり、関節が硬く動かなくなるのが特徴です。
主な原因としては、外傷(骨折や靭帯損傷)の後に関節周囲の組織が硬くなる場合や、関節炎、長期間の過負荷などが考えられます。日常生活においては「ペンを持つ」「パソコンでタイピングする」「瓶のフタを開ける」といった動作に支障が出やすいです。
研究でも、手指の拘縮は炎症や瘢痕形成、軟部組織の線維化によって進行することが示されており、強剛母指も同様のメカニズムで進行すると考えられます。
一方、「ばね指(弾発指)」は腱と腱鞘の間で摩擦や炎症が生じ、腱の動きがスムーズにいかなくなる状態を指します。指を曲げ伸ばしする際に「カクン」と引っかかり、時にはバネのように勢いよく伸びる現象が特徴です。
ばね指は特に親指や中指に多く見られ、女性や更年期以降、糖尿病を持つ人に発症しやすいことが知られています。スマートフォンやパソコンの長時間使用もリスク要因として指摘されています。
一見するとどちらも「指が動かしにくい」状態ですが、病態は異なります。
| 特徴 | 強剛母指 | ばね指 |
|---|---|---|
| 部位 | 親指のMP関節 | 指の腱と腱鞘(主に親指・中指) |
| 主な症状 | 関節が硬い、動かしにくい | 引っかかり、カクンとした動き、痛み |
| 原因 | 外傷後、炎症、関節炎など | 腱と腱鞘の摩擦・炎症 |
| 動き | 動かそうとしても関節が硬く制限される | 動かせるが引っかかりがある |
| 好発 | 外傷歴のある人、中高年 | 更年期女性、糖尿病患者、反復動作の多い人 |
このように、強剛母指は関節自体の硬直が主体であるのに対し、ばね指は腱の動きの障害が主体です。
手指を温めると血流が改善し、炎症や拘縮の軽減に役立ちます。温かいタオルを当てたり、ぬるま湯に手を浸すのがおすすめです。研究でも、温熱による血流促進が関節可動域改善に寄与することが示されています。
強剛母指では、無理のない範囲で指を曲げ伸ばしするリハビリ運動が効果的です。ばね指では急な動きは避けつつ、腱の動きをスムーズにする軽いストレッチを取り入れるとよいでしょう。
長時間のタイピングやスマホ操作は、手指への負担を増やします。作業環境を整えたり、1時間ごとに手を休める習慣をつけることが予防につながります。
夜間に装具で指を安静に保つことで、ばね指の改善につながる場合があります。強剛母指でも関節を保護しつつ可動域を保つ工夫が重要です。
セルフケアで改善が見られない場合や、痛みやしびれが強い場合は医療機関を受診しましょう。強剛母指では理学療法や関節可動域訓練、必要に応じて外科的治療が検討されます。ばね指ではステロイド注射や手術による腱鞘切開が行われることがあります。
パソコンやスマホを使う時間が多い現代社会では、手指の不調は誰にでも起こり得ます。特に女性はホルモン変化や家事・育児の負担からリスクが高く、早めのセルフケアや予防意識が大切です。
手指の健康を守ることは、仕事の効率や生活の質を維持するためにも欠かせません。
・強剛母指は親指の関節が硬直して動かなくなる状態。
・ばね指は腱と腱鞘の炎症によって指の動きが「カクン」と引っかかる状態。
・いずれも手指を酷使する現代人に多く、特に働く女性は注意が必要。
・温熱、ストレッチ、負担軽減などセルフケアで予防や改善が可能。
・改善しない場合は早めに医療機関へ。
手指の不調を放置せず、早めに対応することで快適な毎日を過ごすことができます。

