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心臓リハビリテーションにおける運動強度と注意点~安全で効果的な実践のために~

はじめに

心臓リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)は、虚血性心疾患、心不全、心臓手術後などの患者に対して行われる包括的なプログラムです。薬物療法や食事療法と並び、運動療法はその中心的役割を担っており、生命予後や再入院率、患者の生活の質(QOL)改善に寄与すると報告されています(*1)。

一方で、心疾患患者に運動を導入する際には、適切な運動強度を設定し、安全性を確保することが極めて重要です。本稿では、心臓リハビリにおける運動強度の考え方、実際の設定方法、そして臨床で注意すべき点についてエビデンスをもとに解説します。

心臓リハビリの目的

心臓リハビリの目的は単なる体力向上にとどまりません。主な目的は以下の通りです。
・心血管イベント再発の予防
・運動耐容能の改善
・再入院率や死亡率の低下
・不安・抑うつの軽減
・社会復帰・就労支援

メタ解析によると、心臓リハビリを受けた患者は受けなかった患者に比べ、総死亡率および心血管死亡率が有意に低下することが示されています(*1)。

運動療法における運動強度の意義

心臓リハビリにおける運動療法では、「過負荷による心イベントリスクの回避」と「十分なトレーニング効果の獲得」という二つの課題を両立する必要があります。

運動強度が低すぎれば体力改善効果は乏しく、逆に強すぎれば不整脈や虚血性変化、血圧変動などのリスクが高まります。そのため、科学的根拠に基づいた強度設定が不可欠です。

運動強度の評価方法

心臓リハビリで推奨される運動強度の評価には、以下の方法があります。

1. 心拍数を用いた方法

最大心拍数の40~70%を目安とする方法が広く用いられます。最大心拍数は「220-年齢」で推定されますが、β遮断薬を服用している患者では心拍応答が鈍くなるため注意が必要です。

2. 心肺運動負荷試験(CPX)

心肺運動負荷試験により得られる嫌気性代謝閾値(AT)を基準に運動処方を行うのが最も信頼性の高い方法とされています。AT強度での運動は安全性が高く、心不全患者においても有効であることが示されています(*2)。

3. Borgスケール(自覚的運動強度)

患者自身が感じる呼吸困難感や疲労感を0~20で評価する方法です。心疾患患者ではBorgスケール11~13(やや楽~ややきつい)を目安に運動を行うことが推奨されます。

心疾患別の運動強度設定

虚血性心疾患

狭心症や心筋梗塞後の患者では、虚血性変化や狭心症状をモニタリングしながら、心電図や血圧の変化を観察することが重要です。AT強度以下を目安とした有酸素運動が推奨されます。

心不全

慢性心不全患者においても、軽中等度強度の有酸素運動は心拍出量の改善や末梢筋機能の強化につながることが報告されています(*3)。ただし、急性増悪時には禁忌です。

心臓手術後

CABG(冠動脈バイパス術)や弁置換術後の患者では、創部治癒や胸骨安定性を確認しつつ、早期離床から段階的に運動を導入します。

運動療法の実際

心臓リハビリにおける運動療法は、有酸素運動、レジスタンストレーニング、柔軟体操などで構成されます。
・有酸素運動:ウォーキング、エルゴメータ、自転車などを20~40分、週3~5回
・レジスタンス運動:大筋群を中心に1RM(最大挙上重量)の30~50%で実施
・柔軟体操:全身のストレッチをウォームアップ・クールダウンとして導入

これらを組み合わせることで、心肺機能のみならず筋力や柔軟性の維持向上にもつながります。

運動実施時の注意点

運動処方にあたっては以下の点に留意する必要があります。
・運動中は心電図、血圧、SpO₂をモニタリングする
・胸痛、強い呼吸困難、めまい、失神、動悸などの症状出現時は直ちに中止
・利用薬剤(特にβ遮断薬、利尿薬)による循環動態への影響を考慮
・高齢患者では転倒リスクや整形外科的リスクにも注意

まとめ

心臓リハビリにおいて運動強度は治療効果と安全性を左右する重要な要素です。心肺運動負荷試験による評価が最も望ましいとされますが、心拍数やBorgスケールなどの簡便な方法も活用できます。医療従事者はエビデンスに基づいた運動処方を行い、患者個々の状態に合わせたリハビリを実施することが求められます。

参考文献

1. Anderson, L., Thompson, D. R., Oldridge, N., et al. (2016). Exercise-based cardiac rehabilitation for coronary heart disease: Cochrane systematic review and meta-analysis. JACC (67),1. https://doi.org/10.1016/j.jacc.2015.10.044
2. Arena, R., Myers, J., Guazzi, M. (2008). The clinical and research applications of aerobic capacity and ventilatory efficiency in heart failure. Heart Fail Rev. 2008;13(2):245-69. https://doi.org/10.1007/s10741-007-9067-5
3. Taylor, R. S., Sagar, V. A., Davies, E. J., et al. (2014). Exercise-based rehabilitation for heart failure. Cochrane Database of Systematic Reviews, (4), CD003331. https://doi.org/10.1002/14651858.CD003331.pub4

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