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年末年始前後に気をつけたい ― 患者の生活リズムと健康管理

はじめに

年末年始は多くの人にとって特別な期間であり、家族や友人と過ごす時間が増える一方で、生活リズムが乱れやすい時期でもあります。睡眠時間の変化、食生活の乱れ、飲酒機会の増加、そして運動不足は、患者さんの健康に大きな影響を及ぼします。医療従事者にとって、この時期に起こりやすい健康リスクを理解し、患者指導に役立てることは重要です。本コラムでは、「年末年始」「生活リズム」「健康管理」という観点から、最新のエビデンスを踏まえて指導のポイントをご紹介します。

年末年始が患者の生活リズムに与える影響

年末年始には仕事や学校が休みとなり、普段とは異なる生活リズムが形成されがちです。研究によると、休日や長期休暇中は「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれる体内時計の乱れが生じやすく、これが心身の健康に悪影響を及ぼすと報告されています。
特に睡眠リズムの乱れは、自律神経バランスを崩し、循環器系や代謝系のリスクを高める要因となります。また、夜更かしや昼までの睡眠は日中の活動性を低下させ、体力低下やフレイルの進行につながることが知られています。高齢患者や慢性疾患を抱える患者にとって、生活リズムの乱れは予後に直結する問題であるため、医療従事者が早めに注意喚起を行うことが求められます。

年末年始に多い食生活の乱れと健康リスク

正月料理や忘年会・新年会に代表されるように、年末年始は高カロリー・高塩分の食事を摂取する機会が増えます。日本高血圧学会の報告では、塩分摂取量の増加は血圧上昇と強く関連しており、特に高血圧患者にとっては急性増悪のリスクとなります。
また、アルコール摂取量の増加も問題です。急性心不全の発症と飲酒習慣との関連を示す研究もあり、患者に対して「飲酒量を抑える」「連続した飲酒を避ける」といった具体的なアドバイスが必要です。
医療従事者は、年末年始に入る前の診察時に、患者の既往歴やリスクを踏まえて食生活への注意点を指導することが望まれます。

運動不足と体調不良のリスク

寒冷な冬季にあたる年末年始は、外出頻度の減少や活動量の低下も目立ちます。特に高齢者では、運動不足がサルコペニアや転倒リスクを高めることが報告されています。
在宅でできる軽いストレッチや体操を提案することは有効です。また、歩数計や活動量計の使用は、患者のモチベーション維持に役立ち、生活リズムの安定化にもつながります。医療従事者は、患者が実践可能な運動習慣を「小さな行動」に落とし込んで指導することが大切です。

健康管理のためのセルフモニタリング

生活リズムの乱れを最小限に抑えるためには、患者自身によるセルフモニタリングが有効です。例えば以下のような方法があります。

・睡眠記録をつける:就寝・起床時刻を記録し、乱れが大きくならないよう調整する。
・体重・血圧測定:日々の変動を把握し、異常があれば早めに医療機関に相談する。
・活動量のチェック:1日の歩数を把握し、極端な運動不足を防ぐ。

これらは患者の自己効力感を高め、年末年始の健康管理に直結する行動となります。医療従事者はこうしたセルフモニタリングを患者指導に積極的に取り入れるべきです。

医療従事者が行うべき具体的な指導ポイント

年末年始に向けて、医療従事者が患者へ伝えるべきポイントを整理すると次の通りです。

1. 生活リズムの維持
 休日でも起床・就寝時間を大きく変えないことを指導する。
2. 食生活の注意
 塩分・糖分・脂質の過剰摂取を避ける工夫を提案する。
3. 飲酒の節度
 適量飲酒や休肝日を設けることの重要性を説明する。
4. 運動習慣の継続
 短時間・低強度でもよいので体を動かす習慣を守る。
5. セルフモニタリングの実践
 血圧や体重の記録を習慣化させる。

これらはエビデンスに基づいた具体的な行動指導であり、患者のセルフケア能力を高めるための有効なアプローチです。

まとめ

年末年始は患者にとって生活リズムが乱れやすく、健康管理が難しくなる時期です。医療従事者があらかじめそのリスクを把握し、エビデンスに基づいた指導を行うことで、患者の健康を守るサポートが可能となります。生活習慣病の増悪や急性イベントの予防のためにも、診療現場での声かけが重要です。

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