現代社会では、仕事や移動、趣味の時間まで、私たちは多くの時間を座って過ごしています。長時間の座位行動は健康に悪影響を及ぼすことが多く、心臓病や糖尿病、肥満、筋骨格系のトラブルなどのリスクを高めることが知られています。そのため、世界保健機関(WHO)は「身体活動・座位行動ガイドライン」を発表し、日常生活での運動習慣や座位時間の管理の重要性を示しています。
WHOが2020年に発表した「身体活動・座位行動ガイドライン」では、全年齢層を対象に、健康維持や疾病予防のために推奨される運動量や座位時間の指針が示されています。これにより、自分の生活習慣を見直し、無理なく運動を取り入れることができます。
ガイドラインのポイントは主に次の通りです。
・週150分以上の中強度の有酸素運動
週に合計150分以上のウォーキングや自転車などの中強度運動を行うことが推奨されています。強度の高い運動を行える場合は、週75分でも十分です。これは心血管系の健康を守るうえで非常に有効です。
・筋力トレーニングの実施
週に2回以上、全身の筋力トレーニングを行うことが推奨されています。筋力の維持は、加齢による筋量の減少(サルコペニア)を予防し、日常生活動作の安定にもつながります。
・座位行動の制限
長時間座り続けることは、心血管疾患や糖尿病、肥満リスクを高めることが研究で示されています。そのため、1時間以上座り続ける場合は、短いストレッチや軽い歩行を挟むことが推奨されています。特にデスクワークの多い方は、意識的に立ち上がる時間を作ることが重要です。
・座位時間の代替として軽い運動を推奨
長時間座る時間を減らすだけでなく、軽い家事やウォーキングなどで体を動かすことも、健康維持に効果的です。ガイドラインでは、座り過ぎのリスクを軽減するための生活習慣の工夫も紹介されています。
座り過ぎは単なる疲労や腰痛の原因だけではありません。近年の研究では、長時間の座位行動はメタボリックシンドロームや糖尿病、心血管疾患のリスク増加に関与することが明らかになっています。また、精神的なストレスや不安感とも関連があることが報告されています。
ある研究では、1日8時間以上座る生活をしている人は、心血管疾患による死亡リスクが座る時間が少ない人に比べて高いことが示されました。さらに、運動不足による筋力低下は、加齢に伴う転倒リスクや日常生活動作の低下にもつながります。
では、具体的にどのように座り過ぎを防ぎ、運動を取り入れればよいのでしょうか。ポイントを紹介します。
・こまめに立ち上がる
デスクワーク中でも、1時間に1回は立ち上がり、軽いストレッチや歩行を行うことで血流が促進されます。
・通勤や買い物で体を動かす
エレベーターの代わりに階段を使う、近距離は徒歩や自転車を使うなど、日常生活に運動を組み込むことができます。
・テレビやスマホの時間を管理する
長時間座ってスマホやテレビを見る場合は、休憩時間を設け、軽い体操や立位での動きを取り入れましょう。
・筋力トレーニングを取り入れる
自宅でもできるスクワットや腕立て伏せ、チューブを使った運動などで筋力維持を意識することが推奨されます。
・運動を習慣化する
運動は短時間でも毎日続けることが大切です。ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなど、自分に合った運動を見つけましょう。
WHOのガイドラインを参考に生活することで、単に健康リスクを減らすだけでなく、生活の質(QOL)の向上にもつながります。例えば、日常的に軽い運動を取り入れることで疲労感が減り、集中力やストレス耐性も高まることが報告されています。
また、座り過ぎを防ぐ工夫を取り入れることで、腰痛や肩こりの予防にもなります。オフィスワークの多い現代人にとって、日常生活の中で意識的に体を動かすことが重要です。
現代社会では、座り過ぎと運動不足が健康リスクとして大きな課題です。WHOが示す「身体活動・座位行動ガイドライン」を参考に、1日150分以上の中強度運動や週2回の筋力トレーニングを取り入れること、そして長時間座り続けない生活習慣を意識することが重要です。小さな工夫を積み重ねることで、健康寿命を延ばし、日常生活の質を高めることができます。座り過ぎを見直し、運動習慣を上手に生活に取り入れていきましょう。
掲載日:2026/2/3

