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予後と機能改善を目指す!低栄養・サルコペニア合併透析患者へのリハビリの工夫

慢性腎不全患者の中でも、透析導入後の患者は筋量減少や身体機能低下をきたしやすく、低栄養やサルコペニアの合併率が高いことが明らかになっています。実際、維持透析患者の間ではサルコペニアの有病率が高く、筋力低下は転倒リスクや死亡率上昇とも関連します※1。こうした状況下で、「透析患者にどのようなリハビリ介入が安全かつ効果的か」は臨床現場で重要なテーマです。
本稿では、低栄養・サルコペニアを合併した透析患者に対して、安全に配慮しながら行うリハビリの工夫と効果を、最新のエビデンスに基づいて解説します。

サルコペニアはなぜ透析患者で問題となるのか

サルコペニアは筋肉量と筋力の両方が低下する状態であり、ADL(日常生活動作)の低下やQOL悪化、さらには高い死亡リスクと関連します。透析患者では、尿毒症や慢性炎症が持続し、身体活動量が低下する傾向が強いため、筋肉蛋白の分解が優位となりやすいとされています(※1)。
また、透析に伴う栄養素損失や食欲不振、定期的な治療拘束も加わり、低栄養とサルコペニアが重なった状態が多くの透析患者で認められているため、単なる運動機能低下ではなく、多面的な介入が必要です。

リハビリ介入は本当に有効か?最新エビデンスから

透析患者に対して行う運動療法(リハビリ)は、かつて運動強度や安全性の面で懸念されてきました。しかし、近年のシステマティックレビューでは、透析患者における運動介入がサルコペニア関連の身体機能改善につながる強いエビデンスが示されています。
Fourteenのランダム化比較試験を含む包括的レビューでは、抵抗運動が筋力改善に「強い証拠」を示し、複合運動(有酸素+抵抗)も筋力改善に「中等度の証拠」を示しました。これらの介入は筋量そのものに対しては明確な変化がない研究もあるものの、筋力・身体機能の改善とQOL向上に寄与する可能性が高いとされています(※2)。
このレビューにおける具体的な改善対象は以下の通りです:
• 筋力:握力の向上(抵抗運動)
• 身体機能:立ち上がり能力や歩行距離の改善
• 生活機能全体:QOL関連スコアの改善傾向
これらは、透析患者へのリハビリが単なる体力維持ではなく、実際の機能改善につながる可能性を示しています。

低栄養・サルコペニア合併透析患者へのリハビリの実際

透析患者に対するリハビリを実施する際は、栄養と運動のバランスを考えることが必須です。以下のような工夫が有効とされています。

① 栄養評価とリハビリの連携

サルコペニアの進行を抑えるには、栄養介入(タンパク質補給・エネルギー充足)が重要です。アルブミンや体組成の評価を行い、管理栄養士と連携して栄養計画を立てることで、運動効果を最大化します。
また、透析中はアミノ酸や微量栄養素の損失が起こるため、食事療法を運動プログラムと同時進行させることが推奨されています。

② 透析中運動(Intradialytic Exercise)の活用

透析中に行うリハビリは、時間的制約を克服する優れたアプローチです。低~中程度の有酸素運動や抵抗運動(例:下肢エルゴメーター、負荷バンド運動)を、透析中の安定した時間帯に実施することで、筋力・身体機能改善に寄与する報告が多くあります(※2)。
透析中は常にバイタルサインをモニタリングし、血圧や循環動態が安定していることを確認しながら実施します。

③ 個別化された運動プログラムの設定

透析患者は、年齢、心血管合併症、血圧変動などが個々に異なるため、リハビリも患者ごとに強度と内容を調整する必要があります。Borgスケールや自覚症状、日常の疲労度を指標に、低強度から始めて安全に進める運動処方が理想的です。
また、立ち上がりやバランス練習など、日常生活動作に直結する機能訓練を積極的に取り入れることで、高齢透析患者の転倒リスク低減にもつながります。

リハビリ介入を成功させるチームアプローチ

低栄養・サルコペニア合併透析患者に対するリハビリは、多職種連携が鍵を握ります。透析治療を行う医師・看護師・理学療法士・管理栄養士が情報を共有し、患者の全体像を把握したうえで、栄養とリハビリを統合したケア計画を作成することが成功のポイントです。
特に栄養改善と運動処方を同時に進めることが、サルコペニア対策として最も効果的であり、患者の機能的予後を改善する可能性があります。

まとめ

低栄養・サルコペニアを合併した透析患者に対するリハビリは、正しく設計されれば、安全かつ効果的に筋力・身体機能の改善やQOL向上をもたらします。透析患者における運動介入は単なる補助的施策ではなく、サルコペニア進行を抑える治療戦略として重要です。
透析現場では、栄養評価と運動処方を連携させ、個別性に配慮したリハビリプログラムを実践することで、患者本来の機能回復を支援することが期待されます。

参考文献(書誌情報)

※1)Prevalence and severity of sarcopenia in patients on maintenance hemodialysis: a cross-sectional study, Yujie Yang , et al. BMC Nephrology, 25(1):385.
https://doi.org/10.1186/s12882-024-03836-z

※2)The Effects of Intradialytic Exercise on Key Indices of Sarcopenia in Patients With End-stage Renal Disease: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials, Daniel Pender, et al.ACRM, Volume 5, Issue 1100252(2023)
https://doi.org/10.1016/j.arrct.2022.100252

掲載日:2026/03/16

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