2026年4月取材


当院は2021年に開院しました。以前勤務していた病院の統合・移転に伴い、人工透析医療を担う施設として開設し、今年で5年目を迎えます。地域に根付いた医療施設として今後も末永く、川西の地で患者さんと一緒にやっていきたいと思っています。
私はフレイルとサルコペニアの予防に注力しています。透析患者さんが弱ってゆく大きな要因は栄養と筋力の低下にありますので、フレイルとサルコペニアをいかにして防いでいくか、完全には防げなくてもその低下をより少なくしていけるように取り組んでいます。普段の診療においては、例えば透析の患者さんが週3回通院されるということは、その患者さんは、私にとっては自分の親以上に顔を合わせている存在とも言えますので、患者さんとは家族に近いような関係性を築きながら、患者さんが抱える体調面や生活上の課題に丁寧に耳を傾け、解決できることを共に考えていくことも診療のテーマのひとつとしています。
透析中の運動療法は、週3回、1回4時間の中で少し取り組むだけでは十分な効果が得られにくく、また透析以外の時間に新たに運動習慣を取り入れることも簡単ではないと感じています。私たちも透析診療を中心としているため、個別に運動療法を指導してゆくための体制や設備、コスト面の課題もありました。そうした中で、透析中にG-TESを導入することは、患者さんが運動習慣を身につけるためのひとつのきっかけになるのではないかと考えました。G-TESだけで全てが解決するとは思っていませんが、透析中にG-TESを使用することで、患者さんが「もっと動いてみよう」といった動機付けにつながる可能性を考えて導入しました。
G-TESの実際の使用については、既に車椅子中心で寝たきりに近い状態の方では、そこから大きく改善していくことはなかなか難しいと思います。足が上がりにくくなってきたなどのフレイルの兆候が見られる段階、要支援から要介護1~2程度の患者さんが最も伸びしろのある層だと思いますので、そうした方々に対してG-TESの使用を積極的におすすめしています。
G-TESの有用性は、透析患者さんに導入することで、運動意欲の向上や動機付けにつながる点にあると考えています。透析時間中の僅かな時間のみで、筋力がモリモリついて良くなるとはさすがに思いませんが、患者さんご自身がG-TESを使用している部位に触れて筋肉が動いていることがわかりますので、その目に見えてわかりやすいところが患者さんの運動意欲への動機付けにはちょうど良いと思っています。
患者さんの声としては、足が軽くなったような気がすると言われる方がいらっしゃいました。それが実際にG-TESによる筋力アップの効果なのかを評価することは、なかなか難しいのですが、患者さんにとってわかりやすく、自ら行う運動とは異なり電気刺激によって筋肉にアプローチする方法は、患者さんにとっても比較的抵抗なく受け入れやすいと思います。透析患者さんの運動については、ペダル運動やチューブを使ったトレーニングなどの方法も検討はしましたが、実際の運用には難しさを感じていました。その点、G-TESは確かに導入費用こそかかりますが、透析中に無理なく取り入れられ患者さんの負担も少ないという点で有効な選択肢だったと思います。実際に患者さんの受け入れも良好で、導入して良かったと思っています。
G-TESを導入して、まだ長期的な効果についてはわかりませんが、患者さんからは「こうした取り組みがあるのはすごく良い」といった声が聞かれています。G-TESを使用している様子を見て「自分もやってみたい」と関心を持たれて、そこからスタートされる方もいらっしゃいます。こうした治療は患者さんにとって魅力的に映るようで、クリニックのサービスとしての価値も感じていますし、結果的に運動への動機付けにもつながっているのではないかと思っています。
当院でのG-TESの使用で、実際の効果が見えにくいと感じるのは、G-TESの使用を透析日に限定しているからだと思います。現状では、ベッドとG-TESの両方が空いている時間もありますので、G-TESを連日使用するのもひとつの選択肢になり得ると思います。現在はそのようなケースはありませんが、今後はG-TESの使用を透析日だけに限定せずに継続的にできる方がいらっしゃれば、そこはお勧めしても良いと思っています。

令和元年に埼玉県の病院に入職し、当院には令和5年から務めています。
現在は、G-TESを導入する患者さんについての明確な基準はありませんが、転倒歴のある方や、すり足歩行が見られる方、痙性歩行の方など、患者さんの歩行状態を観察して、転倒リスクが高そうな方にお声がけして導入しています。また、患者さんとの会話の中からG-TESの使用をお勧めするケースもあります。例としては、飼っていたペットが亡くなってしまい、散歩をする機会がなくなって体力が落ちてきている気がすると言われる方でしたり、毎朝1時間以上歩く習慣がある患者さんで、足が上がらなくて段差につまずくと言われる方に導入しました。
当院でのG-TESの使用は大腿だけのクイックモードを採用しています。出力については導入時、患者さんに電気刺激がどのようなものかを体験してもらうため、代謝モードから開始しています。患者さんの中には電気刺激に抵抗感を持たれる方もいらっしゃるので、少しずつ刺激に慣れていただくようにしています。代謝モードの刺激に慣れてきた段階で、筋トレソフトモードや筋トレモードに移行しています。
G-TESの効果の例としては、押し車を使われている患者さんがG-TESを始めてから足に力が入るような感じがすると実感されていました。歩くことへの自信がつき、実際に行動範囲も広がったようで、G-TESを使用することは患者さんの精神的な面にも効果があると感じました。
透析の患者さんは、週3回4時間という長い時間をベッドやチェアで過ごされるので、そういった時間にG-TESを導入することで筋力向上に活用できるのは非常に有意義な取り組みだと思います。
G-TESを使用された患者さんのお声は、やはり先ほどのような、足に力が入るように感じて自信がついたという方がいらっしゃる一方で、あまり変化を感じないという方もおり、反応はさまざまです。効果は目に見えて分かるものではないため、G-TESの使用に加えて散歩のような日常生活の中で取り組める運動を積極的に提案していく必要があると感じています。また、私自身が実際にG-TESを使用してみたところ、日によって刺激の感じ方が異なるので、スタッフは患者さんの声や反応を丁寧に確認しながら、その都度適した出力に調整を行うことが必要だと感じています。

