2026年3月取材


私は泌尿器科医として、主に排尿機能を専門に診療を行っています。2009年に当院へ入職し、現在は透析専門医および指導医として透析医療に携わっています。
群馬県における透析医療の体制は、泌尿器科と腎臓内科がおおよそ半数ずつを担っており、内科中心の体制が多い他地域と比べると、特色のある構成となっています。当院でも泌尿器科が透析を担当していることから、透析医療の分野の中でも、腎臓リハビリテーションには以前から強い関心を持ってきました。
かつては、食事や運動を制限することで検査データの悪化を防ぐという考え方が主流でしたが、近年では「しっかり食べ、適切にリンを下げる」といった考え方へと変化しています。同様に、リハビリテーションの実施が透析の質にも影響を与える可能性が指摘されており、リハビリをしっかり行うことが、透析時間を延長するのと同程度の効果があるとも報告されています。そのような背景から、透析中のリハビリテーションにも関心を持ち、学会活動を通じて知見を深めています。
当院の患者さんの特徴として、比較的若年で、夜間透析を希望される方が多い点が挙げられます。施設によっては、夜間透析を月・水・金のみで実施しているところもありますが、当院では月曜日から土曜日まで毎日3クール体制で運用しており、日中に就労されている方や夜間透析を希望される方が他院から転院されてくるケースも少なくありません。
夜間透析の患者さんは就労されている方が多く、多くの方がご自身で車を運転して通院されています。一方で、ADLが低下している患者さんの中には送迎を希望される方もおられます。公立病院では送迎対応がないことが一般的ですが、民間病院では患者さんへのサービス向上として送迎体制を整えている場合もあり、それを理由に当院を選ばれる方もいらっしゃいます。また、ADL低下により在宅生活が困難となり、老健施設や特別養護老人ホームなどの関連施設に入所しながら通院される方もおられます。入院中に透析導入となった方や、他院で透析を受けていた患者さんが別疾患で当院に入院し、その後関連施設へ退院、通院を継続されるケースもあり、当院では比較的元気な方から送迎を必要とされる方、さらには在宅生活が困難な方まで、幅広いADLの患者さんを受け入れています。
当院には病院併設の運動施設があり、そこのスタッフからも、透析患者さんのリハビリをしたいとの提案を何年も前から受けていました。診療報酬改定に伴い透析中の運動療法が評価されることになり、「点数がつくのであればやってみよう」という流れから、リハビリスタッフが透析患者さんに関わる体制が整い、腎臓リハビリテーションが本格的に開始されました。
それ以前にも、パンフレットを用いて腎臓リハビリテーションを紹介する取り組みは行っていましたが、実際に継続して取り組まれる患者さんはほとんどいないのが実情でした。透析室でリハビリスタッフがチューブやボールなどの器具を使って直接指導を行うようになり、その効果を目の当たりにして、「すごい!」「良くなった!」と実感しました。一方で、運動リハビリの算定期間が終了した後、患者さんが自主的に運動を継続できるかどうかという点は、どの施設においても共通の課題です。実際には、多くの患者さんが継続できていないのが現状だと感じています。
そうした課題を検討していた折、スタッフからG-TESのデモ機の提案があり、現場の意向を尊重してデモを実施し、導入に至りました。
現在当院では、腎臓リハビリテーションの算定期間を終了した患者さんへのフォローとしてG-TESを使用しているほか、夜間透析時に、比較的元気ではあるもののリハビリ介入の対象になりにくい患者さんや、足がつるといった症状を有する方にも使用しています。
患者さんに使用感を尋ねると、「痛みはなく、やめたいと思うことはない」という声が多く聞かれます。歩行や走行といった運動の代替として、透析中に実施できる点が評価されており、筋肉をつけるというよりも、筋力低下を防ぐ役割が大きいと感じています。使用中は決して「気持ちいい」といったものではないようですが、実際にG-TESを使用されている患者さんの表情が明るくなっていることは印象的です。


当院の透析センターにおいてG-TESを導入するに至ったきっかけは、荻原先生をはじめとする臨床工学技士の取り組みにありました。腎臓リハビリテーションでは、リハビリスタッフが患者さんと1対1で関わっている間は、比較的意欲的に運動に取り組んでいただけます。しかし、リハビリ期間が終了し、自主的なセルフトレーニングを勧めても、多くの患者さんが継続できないという課題がありました。
そうした中で、臥床したまま筋力トレーニングや有酸素運動が行える点は、G-TESの大きな特長だと感じています。透析患者さんの中には、そもそも運動に対する関心が低い方も多く、たとえ日常生活が自立している方であっても、実際に運動できる場所や機会に出会うことは決して多くありません。スポーツジムに通うことに心理的なハードルを感じる方や、透析を受けている身で運動をしてもよいのかと不安を抱えている方も少なくないため、透析中に医療機関内で臥床したまま運動効果が得られる環境には大きな意義があると考えています。
使用方法の面においても、電極ベルトを巻くだけで使用できる点は非常に簡便です。既存の電気刺激機器でも対応可能ではないかという意見もありますが、機器によっては専門的な知識や経験が必要となり、筋走行やモーターポイントの理解など、セラピストの技量によって介入効果にばらつきが生じる可能性があります。その点、G-TESは装着方法が標準化されており、個人差の出にくい介入が可能であると感じています。
G-TESは電極ベルトを装着するだけで筋収縮を得ることができ、主動作筋と拮抗筋の双方に同時に刺激を与えられる点が、大きな特長です。特に、急性期で離床が困難な患者さんに対して、早期から筋力トレーニングや有酸素運動を行えることは、早期離床の促進につながります。重篤な患者さんが多い急性期病院において、離床を支援できる手段を有していることは、病院としての強みになると考えています。
私は、G-TESを透析センターのみで使用するのは有効活用しきれていないと感じています。当院にはSCU(脳卒中集中治療室)があり、入院当日からリハビリ介入が行われるケースも多いため、より早期からG-TESを使用できる可能性があります。挿管中や人工呼吸器装着中など全身状態が不安定な患者さんでは、通常のリハビリ介入は20分程度に限られ、ストレッチや関節可動域訓練で終了してしまうことが少なくありません。そこで、G-TESを使用した20分の物理療法を通常のリハビリに加えることにより、従来20分だったリハビリが40分に延長でき、リハビリの質向上と病院の収支改善にもつながるのではないかと考えています。
病棟では看護師とリハビリスタッフがそれぞれの役割のもと患者さんに関わっていますが、疾患は脳外科に限らず、呼吸器疾患や消化器疾患、内科疾患など多岐にわたります。その中には、廃用症候群が進行した段階でリハビリのオーダーが出るケースも少なくありません。ADLが低下してから介入するのではなく、ADL低下前の段階で介入することが重要であり、その一つの手段としてG-TESを初期段階から活用できればと考えています。リハビリ開始を先送りせず、より早期から介入できれば、在宅復帰支援や入院期間の延長、回復期病院への転院を減らすことにつながり、患者さんの負担軽減にも寄与すると考えています。


当院でG-TESを使用した際の診療報酬は、消炎鎮痛等加算として35点を算定しています。機器コストを考慮すると、一定数の患者さんに継続して使用していく必要があると考えています。当院では月・水・金、火・木・土の3部体制で運用しており、現在は合計で約40名の患者さんにG-TESを使用しています。
導入当初は全例で代謝モードから開始し、3~4か月経過時点で介入前後の変化を評価してきました。その結果を踏まえ、現在は基本的にすべての患者さんに筋トレモードを使用しています。使用感については個人差があり、代謝モードを好まれる方もいますが、全体としては筋トレモードを評価する声が多い印象です。
患者さんからは、「下肢がつりにくくなった」「エレベーターを使わず階段を利用できるようになった」「息切れしにくくなった」など、前向きな意見が多く聞かれており、G-TES導入の効果を実感しています。
電気刺激療法の特性から、導入時にいきなり筋トレモードを使用すると刺激が強く継続が困難になる可能性があると考え、代謝モードから開始しました。実際に3か月程度継続すると、当初は電気刺激に抵抗感のあった患者さんも刺激に慣れ、筋トレモードへ移行後も問題なく使用できています。
そのため、初期は代謝モードから開始し、段階的に筋トレモードへ移行する運用を基本としています。文献におけるエビデンスは筋トレモードに関するものが中心であり、その点も踏まえ、当院ではまず3か月間代謝モードで介入し、効果を評価する形で運用してきました。
腎臓リハビリテーションは、透析時運動指導等加算や疾患別リハビリテーションの枠組みの中で実施しており、G-TESは現在1台で運用しているため、その範囲内で対応可能な患者さんを対象とし、まずは腎臓リハビリテーション終了後のフォローとして活用しています。リハビリ終了後のフォローは多くの施設で課題となっており、当院でも運動記録手帳やセルフトレーニング表の配布などを試みてきましたが、継続状況の把握には限界がありました。患者さんからは「続かない」というより、「一人では難しい」「モチベーションが保てない」といった声が多く聞かれます。
その点、G-TES導入後は継続できている患者さんが比較的多い印象があります。そのため、新規で腎臓リハビリテーションを始める患者さんよりも、すでにリハビリを経験し満足度の高かった患者さんを中心に、1部・2部の枠でG-TESを使用しています。夜間透析の患者さんについては、リハビリスタッフが対応できない時間帯であることから、足のつりやムズムズ感など、レストレスレッグス症候群様症状を訴える方を対象としています。
使用モードは代謝モードから開始し、その後筋トレモードへ移行しています。使用時間は週3回、1回20分を基本とし、患者さんの希望に応じて10分程度に調整する場合もあります。使用後の反応は概ね良好で、特に夜間透析の患者さんでは筋トレモードを好まれる方も多く見られます。切断(アンプタ)のある患者さんにも使用していますが、筋力トレーニングとして高い評価を得ています。
G-TESは代謝面だけでなく、筋力維持・向上の面でも多くのメリットがあり、今後は対象患者数を増やすことや、将来的な複数台体制での運用も検討していきたいと考えています。


当院では地域の皆様の健康づくりを目的として、「美心祭」というイベントを毎年実施しています。昨年の「美心祭」では、来場者の方々にG-TESを体験していただきました。当日は高齢の来場者が多く、日常的に運動を行うことが難しい方も多かったと考えられます。そのような中で、電極ベルトを装着するだけで筋力トレーニングができる点に、多くの方が驚かれていました。
体験時間は一人あたり5~10分程度でしたが、「足が軽くなった」「だるさが軽減した」といった声が多く聞かれ、短時間でも変化を実感していただけたと感じています。
当院では2022年より腎臓リハビリテーションを開始しています。リハビリ期間終了後も運動を継続していただけるよう、院内の多職種と連携し、パンフレットを作成するなどして、自宅で実施可能な運動メニューの提供を行っています。
近年、透析患者さんの高齢化が進んでおり、日常生活における活動量や筋力の低下が、本人の自覚がないまま進行しているケースも少なくありません。そのため、筋力低下が顕在化してから対応するのではなく、できるだけ早期の段階からG-TESを導入することが重要であると考えています。
現在は腎臓リハビリ終了後の患者さんを中心に使用していますが、今後は比較的筋力低下が目立たない早期段階の方にも導入していくことが望ましいと考えています。
G-TESを通して、患者さんご自身が身体の状態に目を向けるきっかけとなり、生活機能維持を支える一つの手段となるよう、今後も多職種と連携しながら活用を進めていきたいと思います。

