「健康寿命」とは、日常生活に制限なく自立して健康に過ごせる期間を指します。これは単なる平均寿命とは異なり、生活の質(QOL: Quality of Life)を考慮した指標です。
世界保健機関(WHO)は、健康寿命の延伸が高齢化社会における重要な課題であると提唱しており、日本も例外ではありません。
厚生労働省の報告によると、2022年時点での日本人の健康寿命は、男性が約72.68歳、女性が約75.38歳とされています。
一方、平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳であり、健康寿命と平均寿命の差(不健康期間)が依然として課題となっています。
健康寿命に影響を与える主な要因として、以下の点が挙げられます。
1. 生活習慣(食事・運動)
・バランスの取れた食事と適度な運動は、健康寿命延伸に寄与します。
・日本食は健康的である一方、塩分摂取が多く、高血圧のリスクとなることが指摘されています。
2. 社会的要因(地域・人間関係)
・高齢者の社会的孤立は健康リスクを高めます。
・地域コミュニティへの参加が健康維持に有効とされています。
3. 医療・介護の充実
・早期診断・治療の普及が病気の重症化を防ぎます。
・リハビリテーションの充実が要介護期間の短縮に貢献します。
4. 認知機能の維持
・認知症予防には、知的活動や適度な運動が有効とされています。
・認知機能の低下はQOLの低下に直結するため、積極的な対策が求められます。
日本政府は、健康寿命延伸に向けた「健康日本21(第二次)」を推進しており、主な施策には以下が含まれます。
・食生活改善:減塩・野菜摂取の促進
・身体活動の増加:ウォーキングなどの推奨
・禁煙推進:受動喫煙防止対策の強化
・フレイル予防:高齢者の筋力低下防止対策
さらに、地域包括ケアシステムの構築により、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる環境整備も進められています。
日本人の健康寿命を延ばすためには、生活習慣の改善、社会的つながりの維持、医療・介護の充実が不可欠です。
医療従事者としては、患者への生活習慣改善指導やフレイル予防の啓発を行うことが重要です。
1. 厚生労働省. 「健康日本21(第二次)」
2. 世界保健機関(WHO). 「Global Health Estimates」
3. 日本老年医学会. 「健康寿命の延伸に向けた提言」