透析治療(特に血液透析)は、慢性腎不全患者にとって生命維持に不可欠な治療ですが、「透析効率(Kt/V や URRなど)」を高めることは、長期フォローや合併症リスク低減を考える上で非常に重要です。
近年、運動療法(特に透析中運動)が透析効率にプラスの影響を及ぼす報告が増えており、医療従事者の関心が高まっています。
本稿では、運動が透析効率に与える影響のメカニズム、臨床エビデンス、導入・継続のポイント、今後の課題について整理します。
「透析効率」は、血液透析における体内の老廃物除去の十分度を示す指標で、代表的なものが Kt/V や URR(尿素減少比)です。
・Kt/V:透析装置のクリアランス(K)、透析時間(t)、体液量(V)をもとに計算される指標です。
・適切な透析効率は、合併症リスク低減、残存腎機能の保護、QOL維持に直結します。
しかし、透析患者は筋力低下・運動機能低下が多く、透析間で活動量が少ないため、運動不足が透析効率に影響する可能性があります。
血液透析中の運動は、筋血流を増加させ、組織中の尿素などの溶質が血管内に再分布されやすくなることを促進します。
8週間の透析中有酸素運動プログラムでは、spKt/V が約38%改善し、URRも約11%増加しました(※1)。
6か月間、透析中に中強度の有酸素運動を週3回・60分行った試験では、運動群で Kt/V と URR の両方が有意に改善しました(※2)。
24週間の透析中複合運動(有酸素+レジスタンス)介入では、spKt/V が13.2%改善し、血圧低下や6分間歩行距離の増加も認められました(※3)。
透析中3時間の低強度自転車運動では、Kt/V が約20%、URR が11%、クレアチニン除去比が26%改善しました(※4)。
運動中のバイタルサインは安定しており、安全に持続可能であることが示されています。
・心血管リスク、透析安定性、貧血、骨・関節の問題などを評価
・運動導入に適した安定患者を選定
・頻度・時間:週2〜3回、1セッション60分程度
・内容:有酸素運動(自転車エルゴメーター)、レジスタンス運動
・強度:Borgスケール13〜14(中強度)
・バイタルサイン(血圧、心拍数、SpO₂)のモニタリング
・シャント部損傷を避ける固定・配置
・中止基準を設定(疲労過多、めまい、心拍変動など)
・運動が透析効率向上につながることを説明
・運動日誌や記録による成果の可視化
・自宅運動への誘導や定期フォローで継続支援
・大規模・長期試験による臨床アウトカム評価の必要性
・個別化プログラム設計の最適化
・施設内運動指導体制の整備
・コスト・持続性の検討
透析中の運動療法は、透析効率(Kt/V・URR)を改善する可能性があり、有酸素・レジスタンス運動を組み合わせることで心血管系や運動耐容能にも好影響を与えます。
医療従事者は、評価・安全管理・個別化プログラム・継続支援を通じて、運動療法を透析治療の重要な柱として活用すべきです。
※1)Raheleh Mohseni, et al. The effect of intradialytic aerobic exercise on dialysis efficacy in hemodialysis patients: a randomized controlled trial. Nephrology Dialysis Transplantation. 2008;23(12):3960-3964.
https://doi.org/10.5001/omj.2013.99
※2)Ekaterini Vogiatzaki, et al. The effect of a 6 month intradialytic exercise program on hemodialysis adequacy and body composition. BMC Nephrology. 2022;23:185.
https://doi.org/10.1007/s11255-022-03238-w
※3)Mei Huang, et al. The effect of intradialytic combined aerobic and resistance exercise on hemodialysis efficiency in end stage renal disease patients: a randomized controlled trial. Int Urol Nephrol. 2020 May;52(5):969-976.
https://doi.org/10.1007/s11255-020-02459-1
※4)Sakkas GK, Karatzaferi C, Nikos T, et al. The effect of prolonged intradialytic exercise in hemodialysis efficiency indices. ASAIO Journal 57(3):p 213-218, May 2011.
https://doi.org/10.1097/MAT.0b013e318215dc9e
掲載日:2026/2/10

