医療現場に身を置く医療従事者は、日々の救急対応、長時間勤務、夜勤、そして患者さんとのコミュニケーションなど、高い緊張感と負荷にさらされています。そんな中で「ちょっとした体のこわばり」「集中力の低下」「疲労感」が蓄積し、「気づいたら疲れが抜けない」「もうひと頑張りが難しい…」と感じることも少なくありません。こうした場面で大切になるのが、日常の合間に取り入れられる“簡単なストレッチ&エクササイズ”によるリフレッシュです。本コラムでは、医療従事者自身の健康を守るために、勤務中や休憩時間などの短い時間でも実践できるストレッチ&エクササイズを、なぜ効果があるのかというエビデンスを交えつつご紹介します。身体を動かし「リフレッシュ」する習慣を少しずつ身につけることで、疲れが蓄積しにくい体・心をつくることが可能です。
医療従事者の勤務環境は、長時間立ち・動き回る場面、患者対応での緊張、夜勤による体内リズムの乱れなど、一般的な職場とは異なるストレス条件が重なっています。そのため、身体的にも精神的にも「リフレッシュ」のタイミングを意図的に設けることが重要です。ある研究では、職場での短時間の身体活動(例えば10分程度の「活動ブレーク」)が集中力や認知機能の改善につながるという報告があります。例えば、10分間の運動休憩が医療従事者の注意力・実行機能を改善したという研究もあります。また、事務職を対象にしたストレッチ・運動プログラムでは、筋骨格系の痛みや疲労が軽減されたというデータもあります。つまり、長時間の勤務・高度な緊張状態にある医療従事者こそ、「短時間」「簡単」に体を動かす習慣を持つことが、快適に働き続けるための鍵なのです。
以下は、医療従事者の忙しい勤務中でも取り入れやすい「3ステップ構成」です。それぞれ1〜2分、合計して5分程度で完了できるものを選びました。いずれも特別な器具や広いスペースを要しませんので、休憩時間、手洗いや着替えの前後、または患者対応の合間などに“リフレッシュ”として取り入れてください。
・立ったままでも座ったままでも構いません。背筋を軽く伸ばして、吸う息で肩をゆっくり持ち上げ、吐く息でゆっくり下ろす肩回しを5回。
・次に、頭をゆっくり右から左へと傾け、首の側面の伸びを感じながら10秒キープ。反対側も同様。
・最後にゆっくりと深く3回呼吸します。
この動作により、肩・首の緊張が和らぎ、血流も促されることで“リフレッシュ感”が得られやすくなります。
・壁やカウンター、机の端などに両手を肩高さで置き、片足を後ろへ引いて胸を開くように前傾姿勢。20~30秒キープ。
・次に、手を腰に当てて背中を軽く丸める「背中丸めストレッチ」を20秒。肩甲骨の間の筋肉がほぐれます。
このセットを1分程で。立ち仕事や前かがみの姿勢が多い医療従事者にとって、胸を開き背すじを整えることは姿勢改善と疲労軽減に効果的です。事務職の研究でも、定期的なストレッチで姿勢改善・疲労軽減が報告されています。
・椅子に座ったまま、片脚を伸ばしてつま先を天井へ向け、膝を軽く曲げながら前に伸ばす動作を5回。反対脚も同様。
・続いて、立ち上がってその場で「かかと上げ→つま先上げ」を10回。足裏・ふくらはぎ・ふとももまで血流が促されます。
・最後に腕を肩の高さで横に広げ、胸を張りながら大きく斜め前に歩くような形で左右交互に3歩ずつ。
この約2分ほどの動きで、脚のむくみ・だるさを和らげ、全身の巡りが改善され“リフレッシュ”を実感しやすくなります。微運動でも勤務中の健康維持に効果があるという報告もあります。
・身体を動かすことで筋肉の硬直が和らぎ、血流が改善され、疲労物質の滞留も減少します。
・深呼吸・伸び・軽い動きを取り入れることで自律神経のバランス(交感神経・副交感神経)が調整され、精神的にも切り替えが図れます。
・短時間で体を動かすことで「リフレッシュタイムを設けた」という“切り替え”の作用が働き、集中力の再起動につながります。研究でも、勤務中の短い運動休憩が注意力・実行機能を改善する効果が確認されています。
・毎日少しずつ継続することで、慢性的な筋骨格系の痛みや疲労の蓄積も軽減できるというデータもあります。
・夜勤・交代勤務の影響で「朝・昼・夜」にズレがある勤務体制では、無理をせず“その場でできる”動きを選ぶことが大切です。
・多忙な時間帯には、患者対応の合間の2〜3分でも十分。例えば「患者移動終わり→次の準備まで」の隙間時間にステップ①だけやる、という習慣をつけるだけでも効果的です。
・チームで「リフレッシュ・ストレッチタイム」を共有するのも有効です。同僚と「次の休憩でステップ②やろう」と声を掛け合うことで、日常化しやすくなります。
・スマホ・スマートウォッチのリマインダー機能を活用して、「1時間ごとに立ち上がって1分脚を伸ばそう」などの習慣化を図るのもおすすめです。
・身体の変化(肩こり・腰重・脚のむくみ)をメモしておくことで、「今日はストレッチできていないな」という気づきにもつながります。
医療従事者が質の高いケアを継続して提供するためには、自身の健康が不可欠です。忙しい勤務の合間だからこそ、「簡単で効果的なストレッチ&エクササイズ」を“リフレッシュ”として取り入れることが、長く働き続けるための鍵です。わずか5分程度、身体を少しだけ動かすことで、姿勢・血流・集中力・気分の切り替えすべてに効果があります。紹介した3ステップは、どれも医療の現場でも実践しやすいものです。毎日の習慣にし、「働くあなた自身を守るケア」をぜひ始めてみてください。自分を労ることが、患者さんに対する「より良いケア」の第一歩でもあります。
掲載日:2026/2/28

