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ICUで褥瘡を防ぐには?重症患者における褥瘡予防のポイント

重症患者が入室するICUでは、長時間の安静や循環動態の不安定さ、医療機器の装着などにより褥瘡の発生リスクが非常に高いとされています。褥瘡は患者の苦痛を増大させるだけでなく、感染症や入院期間延長の要因となり、医療資源の消費にもつながります。そのためICUにおいては、入室直後から褥瘡予防を意識したケアを実施することが重要です。

本コラムでは、「ICU」「褥瘡」「予防」という視点から、ICU在室中の褥瘡予防の対応について、最新のエビデンスをもとに解説します。

1.ICU患者はなぜ褥瘡リスクが高いのか

ICUでは、人工呼吸管理や鎮静管理などの影響により、患者の自発的な体動が著しく制限されることが多くなります。また、血圧低下や循環不全などにより末梢組織の灌流が低下し、皮膚や皮下組織が虚血状態になりやすい環境にあります。

さらに、ICU患者には以下のような褥瘡リスク要因が存在します。

・長時間の臥床
・鎮静や意識障害による体位変換困難
・栄養状態の低下
・血行動態の不安定
・医療機器による圧迫

ICU患者を対象とした研究では、重症患者の褥瘡発生率は一般病棟より高く、早期の予防介入が重要であると報告されています(※1)。

そのためICUでは、入室時から褥瘡リスクを評価し、早期に予防策を開始することが重要です。

2.ICUで重要となる褥瘡リスク評価

褥瘡予防の第一歩は適切なリスク評価です。多くの医療機関では、ブレーデンスケールなどの評価ツールが用いられています。

ブレーデンスケールでは以下の項目を評価します。

・感覚知覚
・湿潤
・活動性
・可動性
・栄養状態
・摩擦・ずれ

ICU患者はこれらの項目の多くで低スコアとなる傾向があります。特に、鎮静下の患者では感覚知覚と可動性が低下し、褥瘡発生のリスクが高くなります。

そのためICUでは、定期的なリスク再評価を行い、状態変化に応じて予防戦略を見直すことが推奨されています(※2)。

3.体位変換はICU褥瘡予防の基本

ICUにおける褥瘡予防の基本は、定期的な体位変換です。長時間同一体位を維持すると、骨突出部に圧力が集中し、組織虚血が生じます。

一般的には2時間ごとの体位変換が推奨されることが多いですが、ICU患者では循環動態や人工呼吸器管理などの影響により、必ずしも画一的に実施できるとは限りません。

そのため以下のようなポイントを考慮することが重要です。

・循環状態を確認しながら体位変換を行う
・医療機器ラインの抜去を防ぐ
・ずれや摩擦を最小限にする
・圧抜きポジショニングを意識する

特に仙骨部や踵部は褥瘡が発生しやすいため、クッションやポジショニングピローを活用し、圧分散を意識した体位管理が重要になります。

4.医療機器関連褥瘡への注意

ICUでは人工呼吸器マスク、チューブ固定具、カテーテルなど、多くの医療機器が使用されます。これらの機器は皮膚を長時間圧迫するため、医療機器関連褥瘡(MDRPU)の原因となることがあります。

医療機器関連褥瘡の予防には以下のような対策が有効です。

・固定部位の定期的な皮膚観察
・クッション材の使用
・固定位置の調整
・皮膚保護材の活用

ICU患者では、顔面や耳介などの部位にも褥瘡が発生することがあり、通常の褥瘡とは異なる部位にも注意が必要です。

5.栄養管理も褥瘡予防の重要な要素

褥瘡予防においては、栄養状態の管理も重要な要素です。低栄養状態では創傷治癒能力が低下し、褥瘡の発生および重症化のリスクが高まります。

ICU患者では、炎症反応や代謝亢進によりタンパク質消費が増加します。そのため早期からの栄養評価と適切な栄養補給が求められます。

栄養管理では以下の点が重要です。

・エネルギー必要量の評価
・十分なタンパク質摂取
・早期経腸栄養の導入
・栄養状態のモニタリング

研究では、適切な栄養管理が褥瘡予防に寄与する可能性が示されています(※3)。

6.多職種連携による褥瘡予防

ICUにおける褥瘡予防は、看護師だけでなく多職種によるチーム医療が重要です。

例えば以下のような役割があります。

看護師
皮膚観察、体位変換、日常ケア

医師
循環管理、鎮静調整

管理栄養士
栄養評価と栄養療法

理学療法士
早期離床やポジショニング

特に近年では、ICUにおける早期リハビリテーションが褥瘡予防にも寄与する可能性が示唆されています。患者の状態が安定している場合には、早期から関節可動域訓練や離床を進めることが重要です。

7.ICU褥瘡予防の鍵は「早期介入」

ICUにおける褥瘡予防で最も重要なのは、褥瘡が発生する前の早期介入です。

具体的には以下のような取り組みが重要になります。

・入室時からのリスク評価
・定期的な体位変換
・医療機器による圧迫対策
・栄養管理
・多職種連携

これらを組み合わせた包括的なケアにより、ICU患者の褥瘡発生を減少させることが期待できます。

重症患者のケアでは生命維持管理が優先されることが多いですが、褥瘡予防は患者のQOLや予後にも影響する重要なケアです。ICUチーム全体で予防意識を共有し、日常ケアの中に組み込んでいくことが重要といえるでしょう。

参考文献

(※1)Pressure injury risk factors in adult critical care patients: A review of the literature. Cox J. Ostomy Wound Management. 2017;63(11):30-43.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29166261/

(※2)Pressure injury prevalence in intensive care versus non-intensive care patients: A systematic review and meta-analysis. Fiona Coyer, et al. Australian Critical Care. 2017;Volume 30, Issue 5p244-250
https://doi.org/10.1016/j.aucc.2016.12.003

(※3)Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers. Gero Langer, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2024 Feb 12;2(2):CD003216.
https://doi.org/10.1002/14651858.CD003216.pub3

掲載日:2026/4/10

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