当サイトページは日本国内の医療関係者(医師、理学療法士、その他医療関係者)の皆様を対象に医科向け医療機器を適正にご使用いただくための情報を提供しています。
日本国外の医療関係者や、一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

医療関係者ですか?

YES
/
NO

NOを選択すると、
トップページに戻ります。

ICU入院患者の鎮静下でも可能?安全に進めるICUリハビリの実践ポイント

1.ICU入院患者におけるリハビリの重要性

集中治療室(ICU)に入院する重症患者では、人工呼吸器管理や長期臥床に伴い、急速な筋力低下や身体機能の低下が生じることが知られています。これらは「ICU-acquired weakness(ICU-AW)」と呼ばれ、退院後の生活機能やQOLに長期的な影響を及ぼす可能性があります。
ICUでは患者の安全確保のために鎮静が使用されることが多く、これが活動量の低下や臥床期間の長期化を招く要因となる場合があります。しかし近年では、鎮静管理を適切に行いながら**ICU在室中からリハビリを開始する「早期リハビリ」**の重要性が広く認識されています。
人工呼吸器装着患者を対象としたランダム化比較試験では、鎮静の中断とリハビリを組み合わせた介入が機能回復を改善し、せん妄期間の短縮や人工呼吸器離脱日数の増加につながったことが報告されています(※1)。
このような研究結果から、ICUにおいても鎮静管理と連携したリハビリ介入が重要な医療戦略として注目されています。

2.ICUで鎮静が必要となる理由

ICU患者では以下のような理由から鎮静が必要になることがあります。
• 人工呼吸器との同調を保つため
• 痛みや不安の軽減
• 医療処置時の安全確保
• せん妄や興奮の管理
しかし、深い鎮静が長期間続くと活動量が著しく低下し、筋力低下や廃用症候群を助長する可能性があります。ICUでは従来、深い鎮静が一般的でしたが、現在は**浅い鎮静(light sedation)**を基本とする管理が推奨されるようになっています。
鎮静レベルの評価には**RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)**などの指標が使用され、適切な覚醒レベルを維持することで、リハビリ介入の安全性と実施可能性が高まります。
つまり、ICUでの安全なリハビリを実現するためには、鎮静管理とリハビリ介入の連携が重要なポイントとなります。

3.鎮静下でリハビリを行う際の安全評価

ICU患者に対してリハビリを実施する際には、安全性を確保するための評価が不可欠です。特に鎮静下では、患者状態を慎重に判断する必要があります。
主な評価項目は以下の通りです。
①循環動態
• 血圧
• 心拍数
• 昇圧薬使用の有無
循環状態が不安定な場合にはリハビリを延期することがあります。
②呼吸状態
• 酸素飽和度
• 呼吸数
• 人工呼吸器設定
呼吸状態が安定していることが、安全なリハビリ実施の前提となります。
③鎮静レベル
RASSなどの評価を用いて、過度な鎮静状態ではないかを確認します。
④意識レベル
簡単な指示への反応や覚醒状態を確認し、患者の協力が得られるかを評価します。
これらの項目を多職種で共有し、リハビリ開始の可否を判断することが安全管理の基本となります。

4.ICUで実施されるリハビリの段階

ICU患者のリハビリは、患者状態に応じて段階的に進められます。鎮静下であっても、以下のような介入が可能です。
①他動的な関節可動域運動や有酸素運動
鎮静が強い場合でも実施できる基本的なリハビリです。最近は機器を使った運動も取り入れられています。関節拘縮や筋萎縮の予防を目的として行われます。
②ベッド上運動
鎮静レベルが浅くなり覚醒が得られれば、自動運動や簡単な筋力トレーニングを実施します。
③座位訓練
状態が安定していれば、ベッドアップや端座位保持を行います。
座位姿勢は呼吸機能や循環機能の改善にも寄与します。
④立位・歩行訓練
人工呼吸器装着中でも、状態が安定していれば立位や歩行訓練が可能な場合があります。

研究では、人工呼吸器装着患者に対する早期リハビリが、筋力や機能回復を改善する可能性があると報告されています(※2)。
ただし、すべての患者に同じ介入が適応されるわけではなく、患者状態に応じた段階的な実施が重要です。

5.安全なICUリハビリを支えるチーム医療

ICUで鎮静下の患者にリハビリを実施する場合、多職種連携が不可欠です。主に以下の職種が関与します。
• 医師
• 看護師
• 理学療法士
• 作業療法士
• 臨床工学技士
特に人工呼吸器装着患者では、
• チューブ抜去
• 血圧変動
• 酸素化低下
などのリスクが存在します。
しかし、ICUでの早期リハビリに関するシステマティックレビューでは、重大な安全イベントは非常に低頻度であり、適切な管理のもとでは安全に実施可能であると報告されています(※3)。
このため、リハビリ前のカンファレンスやモニタリング体制を整えることが、安全なICUリハビリ実践の鍵となります。

6.鎮静管理とリハビリを組み合わせたICUケア

近年、ICUではABCDEバンドルなどの包括的ケアが推奨されています。これは以下の要素から構成されます。
• A:鎮痛管理
• B:自発呼吸試験
• C:鎮静管理
• D:せん妄管理
• E:早期離床・リハビリ
このような包括的アプローチにより、鎮静の過剰使用を防ぎながらリハビリを早期から実施できる環境が整います。
ICU患者の長期予後を改善するためには、単に生命を救うだけでなく、身体機能の回復を見据えた治療戦略が重要です。

7.まとめ

ICU入院患者では、人工呼吸器管理や鎮静の影響により身体機能低下が生じやすくなります。しかし、適切な評価と管理を行えば、鎮静下であっても安全にリハビリを実施することは可能です。
ICUリハビリを安全に実施するためには、以下のポイントが重要です。
• 鎮静レベルの適切な管理
• 循環・呼吸状態の評価
• 段階的なリハビリ介入
• 多職種チームによる連携
ICUにおけるリハビリは、患者の機能回復やQOL向上に直結する重要な医療介入です。鎮静管理とリハビリを統合したアプローチを取り入れることで、ICU患者の回復支援をより効果的に行うことが期待されます。

参考文献

(※1)Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial, William D Schweickert, et al. Lancet. 2009; Volume 373, Issue 9678,p1874-1882.
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(09)60658-9
(※2)The effects of early mobilization in mechanically ventilated adult ICU patients: systematic review and meta-analysis, Lijie Wang, et al.Frontiers in Medicine. 2023;Volume 10
https://doi.org/10.3389/fmed.2023.1202754
(※3)Safety of Patient Mobilization and Rehabilitation in the Intensive Care Unit: Systematic Review with Meta-Analysis,Nydahl P, et al. Annals of the American Thoracic Society, Volume 14, Issue 5, May 2017, Pages 766–777
https://doi.org/10.1513/AnnalsATS.201611-843SR


掲載日:2026/4/22

関連商品

記事一覧に戻る