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心臓リハビリテーションとは?
ガイドラインに基づく最新のプログラム

はじめに

心血管疾患は日本における主要な死亡原因の一つであり、患者の予後を改善し、再発を防ぐためには「心臓リハビリテーション」が不可欠です。心臓リハビリは、科学的根拠に基づいたプログラムを通じて、患者の身体機能を改善し、QOL(生活の質)を向上させることを目的としています。
本記事では、心臓リハビリテーションの基本的な考え方、最新のガイドラインに基づくプログラム、そしてエビデンスを紹介します。

心臓リハビリテーションとは?

心臓リハビリテーション(Cardiac Rehabilitation, CR)とは、心疾患の患者に対して行われる包括的な医療プログラムのことです。主に以下の目的を持ちます。
・冠動脈疾患や心不全患者の再発・再入院の予防
・身体機能の向上と生活の質の改善
・運動耐容能の向上と精神的健康の維持
・心血管リスク因子の管理(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)

心臓リハビリテーションの適応と対象疾患

日本循環器学会および日本心臓リハビリテーション学会のガイドラインによると、心臓リハビリは以下の疾患を対象としています。
・急性心筋梗塞
・狭心症(経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス術後を含む)
・慢性心不全
・弁膜症(手術後を含む)
・先天性心疾患
・大血管疾患(大動脈解離、大動脈瘤など)

心臓リハビリテーションの構成要素

心臓リハビリは、単なる運動療法ではなく、医学的管理、生活習慣の改善、心理社会的支援を組み合わせた包括的なアプローチが求められます。

1. 医学的評価

リハビリ開始前に、患者の心機能や全身状態を評価し、安全にプログラムを進めるための指標を決定します。評価項目には以下が含まれます。
・運動負荷試験(心肺運動負荷試験:CPX)
・心エコー検査
・血液検査(BNP, NT-proBNP など)
・心電図モニタリング

2. 運動療法

心臓リハビリの中心となるのが「運動プログラム」です。推奨される運動強度は、心肺運動負荷試験の結果をもとに決定されます。

・有酸素運動(Aerobic Exercise):
o ウォーキング、エルゴメーター、ジョギングなど
o 週3〜5回、1回20〜60分
o 心拍数の50〜80%(予備心拍数法、Borg指数12〜14)

・レジスタンス運動(Resistance Training):
o 軽度〜中等度の筋力トレーニング
o 上肢・下肢の筋力維持を目的
o 週2〜3回

有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、心血管疾患患者の運動耐容能や心機能が改善することが報告されています。

3. 栄養指導

心血管リスク因子を管理するために、食事療法も重要です。
・塩分制限(6g/日未満)
・地中海式食事療法(魚、オリーブオイル、野菜、ナッツ類を多く含む)
・動物性脂肪の制限と良質な脂質の摂取

4. 禁煙・生活習慣指導

喫煙は心血管疾患のリスクを大幅に増加させるため、禁煙指導は必須です。加えて、ストレス管理や睡眠習慣の改善も、心臓リハビリテーションの一環として取り組まれます。

5. 心理社会的支援

心疾患の患者は、うつ病や不安障害を合併しやすいことが知られています。心理カウンセリングや社会復帰支援を含めた包括的なアプローチが求められます。

心臓リハビリテーションのエビデンス

心臓リハビリテーションの有効性は数多くの研究で示されています。

・心血管イベントの再発リスク低減:
o メタアナリシスによると、心臓リハビリテーションを受けた患者は、死亡率が約20〜30%低下することが報告されています。
・運動耐容能と生活の質の改善:
o 6分間歩行距離(6MWT)が有意に改善することが示されています。
・入院期間の短縮:
o 早期退院後の心臓リハビリテーションが、再入院率を低下させることが確認されています。

まとめ

心臓リハビリテーションは、心血管疾患患者の予後を改善し、再発を防ぐために不可欠なプログラムです。最新のガイドラインでは、有酸素運動、筋力トレーニング、栄養指導、生活習慣の改善、心理社会的支援を組み合わせた包括的なアプローチが推奨されています。
医療従事者として、患者の安全なリハビリを支援するために、最新のエビデンスとガイドラインに基づいた適切な指導を行うことが求められます。

参考文献
・Anderson L, et al. “Exercise-Based Cardiac Rehabilitation for Coronary Heart Disease.” Cochrane Database Syst Rev. 2016.
・Piepoli MF, et al. “European Guidelines on Cardiovascular Disease Prevention in Clinical Practice.” Eur Heart J. 2014.
・Taylor RS, et al. “Impact of Cardiac Rehabilitation on Mortality and Morbidity.” Eur J Prev Cardiol. 2021.
・日本循環器学会. “心臓リハビリテーションガイドライン2021.”

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