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呼吸器疾患と運動療法|心肺持久力をどう高めるか?― リハビリテーションにおける評価と実践のポイント

はじめに

呼吸器疾患の患者を担当していると、「呼吸機能は大きく変わらないのに歩ける距離が伸びた」「酸素化は安定しているのにすぐ息切れしてしまう」といった場面に遭遇することがあります。
こうした経験は、呼吸器疾患の症状が単に肺機能だけで規定されているわけではないことを示しています。
近年の呼吸リハビリテーションでは、呼吸機能の改善だけでなく、心肺持久力や身体活動量の維持・向上が重要視されています。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺疾患などでは、身体活動量の低下がさらなる機能低下を招く悪循環を形成することが知られています。
そのため、呼吸器疾患患者に対する運動療法は、「体力づくり」ではなく、生活機能やQOLの維持・向上を目的とした重要な医療介入として位置付けられています。
本コラムでは、呼吸器疾患と心肺持久力の関係、運動療法の意義、そしてリハビリテーションにおける実践のポイントについて紹介します。

呼吸器疾患で心肺持久力が低下する理由

結論から言えば、呼吸器疾患患者の運動耐容能低下は肺だけの問題ではありません。
COPDや間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患では、
 ・換気障害
 ・ガス交換障害
 ・呼吸困難
 ・身体活動量低下
 ・骨格筋機能低下
が複合的に関与します。
例えばCOPD患者では、息切れを避けるために活動量が減少します。
すると、
活動量低下
↓
下肢筋力低下
↓
運動耐容能低下
↓
さらに活動量低下
という負のサイクルが形成されます。
このため、呼吸器疾患患者の息切れは肺機能だけでは説明できず、全身のデコンディショニングも重要な要因となります。

心肺持久力はなぜ重要なのか

心肺持久力とは、運動時に酸素を効率良く取り込み、利用する能力を指します。
呼吸器疾患患者では、この能力の低下が以下のような問題につながります。
 ・歩行距離の低下
 ・ADLの制限
 ・外出機会の減少
 ・社会参加の制限
 ・QOL低下
特に高齢患者では、
「買い物へ行けない」 「坂道を避けるようになった」 「外出を控えるようになった」
といった生活機能への影響が大きくなります。
つまり、心肺持久力の低下は身体機能の問題に留まらず、生活や社会参加にも影響する重要な課題なのです。

呼吸リハビリテーションにおける運動療法の位置付け

近年のガイドラインでは、呼吸器疾患に対する運動療法は中核的な治療の一つとして位置付けられています。
Spruitらによる国際的な呼吸リハビリテーションのステートメントでは、呼吸リハビリテーションは運動能力や症状改善、生活の質向上に有効であると報告されています(※1)。
重要なのは、運動療法の目的が肺機能そのものを改善することではない点です。
運動療法の主な目的は、
 ・運動耐容能向上
 ・心肺持久力向上
 ・呼吸困難軽減
 ・身体活動量増加
 ・QOL改善
にあります。
そのため、呼吸器疾患患者に対する運動療法では、「どれだけ呼吸機能が改善したか」よりも、「どれだけ生活が広がったか」が重要な視点になります。

心肺持久力向上のための主な運動療法

有酸素運動

呼吸器疾患患者に対する運動療法の中心となるのが有酸素運動です。
代表例として、
 ・歩行練習
 ・トレッドミル歩行
 ・自転車エルゴメーター
 ・階段昇降
などがあります。
有酸素運動によって、
 ・酸素利用効率向上
 ・ 心肺持久力向上
 ・下肢筋持久力向上
が期待できます。
近年の研究では、運動トレーニングがCOPD患者の運動耐容能や呼吸困難感を改善することが報告されています(※2)

筋力トレーニング

呼吸器疾患では下肢筋力低下がしばしば問題となります。
そのため、
 ・スクワット
 ・レッグプレス
 ・立ち上がり練習
などの筋力トレーニングを併用することが推奨されています。
特に高齢患者ではサルコペニアを合併していることも多く、筋力改善はADL維持に直結します。
筋力向上によって運動効率が高まることで、結果として呼吸困難感の軽減につながるケースもあります。

呼吸筋トレーニング

呼吸器疾患患者の中には呼吸筋疲労を呈する症例も存在します。
そのため、
 ・横隔膜呼吸
 ・吸気筋トレーニング
 ・呼吸パターン指導
などが実施されます。
ただし、呼吸筋トレーニング単独ではなく、全身運動を含めた包括的な運動療法の中で活用することが重要です。

リハビリで押さえたい評価のポイント

呼吸器疾患患者のリハビリでは、安全かつ効果的な運動処方のために評価が欠かせません。
主な評価項目として、
 ・呼吸困難感
 ・酸素飽和度(SpO₂)
 ・心拍数
 ・血圧
 ・歩行能力
 ・運動耐容能
などがあります。
特に6分間歩行試験(6MWT)は、心肺持久力や生活機能を反映する評価として広く用いられています。
また呼吸器疾患患者では、安静時には問題なくても運動時に酸素飽和度が低下することがあります。
そのため、リハビリ中は症状だけでなく生理学的指標も継続的に確認することが重要です。

呼吸器疾患患者における運動療法の現状

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」において、身体活動の維持が健康寿命延伸に重要であることを示しています。
しかし現実には、呼吸器疾患患者の多くが身体活動不足に陥っています。
特に、
 ・息切れへの不安
 ・増悪への恐怖
 ・外出機会の減少
などが活動制限の要因となります。
その結果、心肺持久力の低下が進行し、さらに活動量が減少するという悪循環が生じます。
呼吸リハビリテーションの役割は、この負の連鎖を断ち切ることにあります。

これからの呼吸リハビリに求められる視点

これまでの呼吸リハビリは、医療機関内で完結するケースが多くありました。
しかし近年では、
 ・在宅リハビリ
 ・地域運動教室
 ・遠隔リハビリテーション
など、継続的な運動支援の重要性が注目されています。
心肺持久力は短期間で獲得できるものではありません。
また、効果を維持するためには継続的な活動が不可欠です。
そのため医療従事者には、患者が日常生活の中で運動を継続できる環境づくりを支援する役割も求められています。

まとめ

呼吸器疾患患者の運動耐容能低下は、肺機能だけではなく、身体活動量の低下や骨格筋機能低下が複雑に関与しています。
そのため、心肺持久力向上を目的とした運動療法は、呼吸リハビリテーションの中核となる重要な介入です。
有酸素運動や筋力トレーニングを適切に組み合わせることで、運動耐容能やQOLの改善が期待できます。
呼吸器疾患に対するリハビリは、単に呼吸を楽にするための治療ではありません。患者が再び活動的な生活を送るための支援であり、健康寿命の延伸にもつながる重要な取り組みなのです。

参考文献

(※1)An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Statement: Key Concepts and Advances in Pulmonary Rehabilitation, Martijn A Spruit, et al.
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine.2013;188(8):e13-e64.
https://doi.org/10.1164/rccm.201309-1634ST

(※2)Pulmonary rehabilitation for chronic obstructive pulmonary disease, Bernard McCarthy, et al.
Cochrane Database of Systematic Reviews.2015;2:CD003793.
https://doi.org/10.1002/14651858.CD003793.pub3

掲載日:2026/9/24

この記事の著者

コンテンツ制作チーム
コンテンツ制作チーム

医療機器メーカーとして培ってきた経験を大切にしながら、健康や身体に関する情報を発信しています。

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