関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、主に関節に慢性的な炎症を引き起こす自己免疫性疾患です。国内では約70万人が罹患していると推定されており、特に30〜50代の女性に多く見られます。早期に診断し、適切な治療を開始することが、関節の破壊進行を抑制し、QOLの維持につながるとされています。
本コラムでは、関節リウマチの「初期症状」や「原因」、診断・治療の最新エビデンスについて解説し、臨床現場での早期対応の重要性をご紹介します。
関節リウマチの原因は完全には解明されていませんが、免疫システムの異常によって自己免疫反応が誘導されることが知られています。遺伝的素因と環境因子の相互作用が発症に関与しているとされ、特に以下の要因が報告されています。
• 遺伝的要因:HLA-DR4などのHLA-クラスII遺伝子が関与
• 喫煙:RAの発症リスクを約2倍に高める
• 感染症:EBウイルスやパルボウイルスB19などとの関連が示唆されています
• ホルモン:エストロゲンが免疫調節に影響を及ぼすとされ、女性に多い理由の一因とされています
関節リウマチの初期症状は、非特異的で見逃されやすい傾向があります。しかし、早期発見・早期治療によって関節破壊の進行を抑えられるため、以下のような症状に着目することが重要です。
• 朝のこわばり:30分以上持続する関節のこわばりは典型的な初期所見
• 関節の腫脹と痛み:手指(PIP関節、MCP関節)や足趾の関節に左右対称性の炎症
• 倦怠感・微熱・体重減少:全身症状として出現し、他疾患との鑑別が必要
MRIや超音波による滑膜炎の評価、DAS28、CRP、ESRなどの炎症マーカーの併用が診断に有用です。
2010年にACRとEULARが策定した分類基準が用いられており、以下の4項目から構成され、合計6点以上でRAと分類されます。
1. 関節の罹患数(最大5点)
2. 自己抗体の有無(最大3点)
3. 炎症反応(最大1点)
4. 症状の持続期間(最大1点)
関節リウマチ治療の基本は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を中心とした薬物療法です。
• メトトレキサート(MTX):最も標準的な初期治療薬
• 生物学的製剤:TNF阻害薬、IL-6阻害薬など。MTXが効果不十分な場合に導入
• JAK阻害薬:内服可能な新規分子標的薬として注目
加えて、理学療法や作業療法などのリハビリテーションも併用することで、関節可動域の維持や筋力低下の防止に寄与します。運動療法は、痛みのコントロールと身体機能の改善に効果があるとされています。
関節リウマチは、”治療の窓”(window of opportunity)と呼ばれる発症早期の6か月間に適切な治療を開始することで、関節破壊を最小限に抑え、寛解に導くことが可能とされています。
そのため、初期症状の段階での鑑別診断と迅速なリウマチ専門医への紹介が、予後を大きく左右する要因となります。地域連携や早期紹介システムの構築が、臨床現場において今後ますます求められるでしょう。
関節リウマチは、早期診断と適切な介入により、進行の抑制が可能な疾患です。初期症状を見逃さず、リスク因子や症状に敏感に対応することが、患者のQOL維持に大きく寄与します。医療従事者が基礎知識を共有し、エビデンスに基づく介入を行うことが今後さらに求められます。
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