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最新の再生医療も解説!
軟骨損傷の種類と治療法まとめ

はじめに

関節疾患の中でも、軟骨損傷は患者のQOLを著しく低下させる要因のひとつです。
近年では、スポーツ外傷に限らず、加齢や生活習慣に起因する変性によって軟骨損傷が生じるケースも増えています。医療従事者にとって、軟骨損傷の「種類」やそれぞれの「治療」選択肢を理解することは、的確な診断と治療計画の立案に欠かせません。
本コラムでは、軟骨損傷の分類、治療方法、そして「最新」の再生医療の動向について、エビデンスに基づいて解説します。

軟骨損傷とは

軟骨は関節を構成する重要な組織であり、骨同士の摩擦を防ぎ、衝撃を吸収する役割を担っています。
しかし、軟骨には血管や神経が存在せず、自己修復能力が乏しいため、一度損傷すると自然治癒は期待できません。

主な原因
・スポーツ外傷(ジャンプ・ねじれ動作など)
・加齢による変性(変形性関節症)
・外傷後の慢性負荷

軟骨損傷の種類

軟骨損傷は、その深達度や関節内での状態に応じて分類されます。
国際的にはOuterbridge分類やICRS分類がよく用いられます。

Outerbridge分類(膝軟骨の変性度評価)
1. グレードI:軟骨の表面が柔らかくなる
2. グレードII:表層に割れ目や裂け目(≦1.5cm)
3. グレードIII:深層まで達する裂け目(≧1.5cm)
4. グレードIV:軟骨下骨が露出

ICRS分類(国際軟骨修復学会)
より詳細なステージ分けがされており、臨床応用でも活用されています。

軟骨損傷の症状

代表的な症状
・関節痛(運動時・荷重時)
・関節可動域の制限
・関節の引っかかり感、ロッキング
・腫脹・水腫の反復

軟骨損傷の部位

軟骨損傷は、膝関節・股関節・肩関節・足関節など、全身の関節で発生しうる疾患ですが、特に臨床で多く見られるのは膝関節です。部位ごとの特徴を解説します。

1. 膝関節
最も多いのが膝関節で、大腿骨顆部(特に内側大腿骨顆)や膝蓋骨裏面に軟骨損傷がみられることが多いです。膝関節は荷重関節であるため、スポーツ外傷や変形性関節症との関連も強く、患者数も多い傾向にあります。

2. 股関節
寛骨臼(かんこつきゅう)や大腿骨頭における軟骨損傷が多く、FAI(股関節インピンジメント)や臼蓋形成不全に伴って発症することが知られています。画像診断が難しく、見逃されることもあります。

3. 肩関節
肩関節では、関節唇の損傷や関節窩の軟骨変性がみられます。野球やバレーボールなどオーバーヘッドスポーツに関連するケースが多く、反復性の脱臼を伴うこともあります。

4. 足関節
足関節では、特に距骨滑車面における軟骨損傷(距骨骨軟骨損傷)が知られており、捻挫や打撲の既往を有する若年層に多く見られます。MRIによる評価が重要です。

軟骨損傷の治療法

軟骨損傷の「治療」は保存療法から手術療法、さらには再生医療まで幅広く存在します。患者の年齢、活動レベル、損傷部位や範囲によって最適な治療が異なります。

1. 保存療法
・運動制限・免荷
・鎮痛薬(NSAIDsなど)
・関節内注射(ヒアルロン酸、ステロイド)
・理学療法(筋力トレーニング、可動域訓練)
保存療法は初期の軟骨損傷や手術適応外の高齢者に選択されます。

2. 手術療法
関節鏡視下デブリードマン
軟骨の遊離体や損傷部の整形処置。疼痛軽減には有効ですが、再発例も少なくありません。
② マイクロフラクチャー法
軟骨下骨に小孔を開け、骨髄からの幹細胞を利用して軟骨様組織の再生を図ります。比較的若年者向け。
③ モザイク形成術(モザイクプラスティ)
非荷重部から自家骨軟骨柱を採取し、欠損部に移植。適応は小範囲の軟骨欠損。

最新の軟骨損傷治療:再生医療

近年、「最新」の再生医療技術が臨床導入されつつあります。代表的なものを以下に紹介します。

自家培養軟骨移植術(ACI:Autologous Chondrocyte Implantation)
患者自身の軟骨細胞を採取・培養し、欠損部へ再移植。長期的な関節機能改善が期待されます。

組織工学的再生療法(スキャフォールド+幹細胞)
• コラーゲンやハイドロゲルなどの「足場素材(スキャフォールド)」と幹細胞を組み合わせる治療法。
• 軟骨の構造と機能の再現を目指すアプローチで、将来的には標準治療の一部となる可能性があります。

関節内幹細胞注射(MSC療法)
脂肪組織や骨髄から抽出した間葉系幹細胞を関節内に注入し、軟骨再生を促す方法。臨床研究段階ながら、変形性関節症における疼痛軽減や機能改善に一定の効果が示されています。

まとめ

軟骨損傷は自己修復が困難であり、早期の診断と適切な治療が重要です。従来の治療法に加えて、「最新」の再生医療技術の進展により、今後さらに多様な選択肢が広がることが期待されます。

参考文献・引用論文

1. Brittberg, M. et al. (1994). Treatment of deep cartilage defects in the knee with autologous chondrocyte transplantation. The New England Journal of Medicine, 331(14), 889–895.
2. Kreuz, P. C., et al. (2006). Results after microfracture of full-thickness chondral defects in different compartments in the knee. Osteoarthritis and Cartilage, 14(11), 1119–1125.
3. Koh, Y. G., et al. (2016). Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cells With Microfracture Versus Microfracture Alone: 2-Year Follow-up of a Prospective Randomized Trial. Arthroscopy, 32(1), 97–109.
4. International Cartilage Repair Society (ICRS) Classification.
5. Outerbridge, R. E. (1961). The etiology of chondromalacia patellae. Journal of Bone and Joint Surgery, 43(4), 752–757.

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