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自家培養軟骨移植術のすべて~適応からリハビリ、社会復帰までの道のり~

はじめに:なぜ今、自家培養軟骨移植術が注目されるのか?

変形性関節症や離断性骨軟骨炎による軟骨損傷は、患者さんのQOLを著しく低下させる深刻な問題です。従来の治療法では十分な効果が得られないケースも少なくありませんでした。そうした中、近年注目を集めているのが、ご自身の細胞から軟骨を再生し、損傷部位に移植する自家培養軟骨移植術です。本コラムでは、この先進的な治療法について、その手術手技からリハビリ、そして社会復帰までのプロセスを詳しく解説します。

自家培養軟骨移植術とはどんな手術?軟骨損傷に対する新たなアプローチ

自家培養軟骨移植術(以下、ACI)は、患者さんご自身の正常な軟骨細胞を採取・培養し、軟骨が欠損した部位に移植することで、軟骨を修復する手術です。従来の軟骨修復術(マイクロフラクチャー法など)が線維軟骨と呼ばれる質的に劣る軟骨を形成するのに対し、ACIは硝子軟骨に近い、より質の高い軟骨を再生できるとされています。

この手術は、基本的に以下の2つのステップで構成されます。

1. 軟骨細胞の採取と培養:まず、関節鏡を用いて、荷重のかからない大腿骨顆部などの軟骨から、ごく少量の正常な軟骨細胞(約200mg)を採取します。この細胞を専門の施設に送り、約4週間かけて数百万個にまで増やします。

2. 軟骨細胞の移植:細胞の培養が完了したら、再び手術を行います。軟骨欠損部の周辺の骨をきれいに整え、培養した軟骨細胞を移植します。移植方法は、細胞懸濁液をコラーゲンゲルに混ぜて欠損部に注入するタイプや、細胞をメンブレン(膜)状にして移植するタイプなど、様々な方法があります。

どのような患者さんが適応となるか?

ACIの適応となるのは、一般的に以下の条件を満たす患者さんです。

・損傷部位:膝関節の軟骨損傷
・損傷の大きさ:軟骨欠損面積が4cm²以上など、比較的広範囲の軟骨損傷
・年齢:16歳~55歳など、比較的若い年齢層

重度の変形性関節症や、軟骨損傷以外の関節疾患を併発している場合は、適応外となる可能性があります。また、患者さんの活動性や骨の状態も考慮されます。

自家培養軟骨移植術に保険はきくの?

自家培養軟骨移植術は、2013年から特定の製品(ジャック®)が医療保険の適用となり、日本の保険診療として実施できるようになりました。しかし、すべての施設で実施できるわけではなく、厚生労働大臣が定める施設基準を満たした施設でのみ実施可能です。そのため、手術を検討する際は、その施設が保険適用施設であるかを確認することが重要です。

術後のリハビリと社会復帰までの期間

自家培養軟骨移植術の成功は、適切なリハビリなしには語れません。移植された軟骨細胞が成熟し、安定した組織となるまでには、長い時間と慎重な管理が必要です。

術後早期(術後0~6週)
目的:術後の炎症を抑え、可動域を確保すること。
内容:CPM(持続的他動運動装置)を用いたROMエクササイズ、大腿四頭筋の等尺性収縮訓練など。この時期は、荷重をかけず、松葉杖などを使用します。

術後中期(術後6週~6ヶ月)
目的:徐々に荷重をかけ始め、筋力やバランス能力を回復させること。
内容:徐々に部分荷重から全荷重へと移行します。スクワットやレッグプレスなどの筋力トレーニングを開始し、歩行訓練も行います。

術後後期(術後6ヶ月~1年)
目的:スポーツ復帰に向けた機能訓練。
内容:ジョギング、サイドステップ、ジャンプなどの高負荷な運動を開始します。スポーツの種類や患者さんの目標に合わせて、専門的なトレーニングを行います。

最終的な復帰まで

個人差はありますが、日常生活動作への復帰は術後3ヶ月程度で可能となることが多いです。スポーツへの完全復帰には、一般的に術後6ヶ月から1年程度を要します。特に、高いパフォーマンスが求められるアスリートの場合、慎重なリハビリプランを組む必要があります。

まとめ:自家培養軟骨移植術がもたらす未来

自家培養軟骨移植術は、軟骨損傷に苦しむ患者さんに新たな希望をもたらす画期的な治療法です。保険適用となり、より身近な治療選択肢となった今、私たち医療従事者は、この治療法の特徴を正しく理解し、患者さんに適切な情報を提供することが求められています。術後の丁寧なリハビリが、患者さんのQOL向上に直結することを肝に銘じ、多職種連携を強化していくことが重要です。

参考文献

1. Jian Li et al. Differential early diagnosis of benign versus malignant lung cancer using systematic pathway flux analysis of peripheral blood leukocytes/ Scientific Reports volume 12, Article number: 5070 (2022)
doi: 10.1038/s41598-022-08890-x

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