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超高齢社会で求められる新戦略とは? いま見直したいリハビリと運動療法の役割

はじめに

外来診療の現場では、「検査値は安定しているのに元気がない」「治療は順調だが活動量が落ちている」といった高齢患者に接する機会が増えています。慢性疾患の管理が進歩した一方で、身体機能や生活機能の低下が患者の予後やQOLに大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。

超高齢社会を迎えた日本では、疾患中心の医療だけでは患者を支えきれない時代に入っています。こうした中で改めて注目されているのが「運動療法」と「リハビリ」です。従来、リハビリというと整形外科や回復期病棟の領域と考えられがちでした。しかし近年では、内科診療においても運動療法を積極的に活用し、フレイルやサルコペニアを予防・改善する取り組みが重要視されています。

本稿では、超高齢社会におけるリハビリの現状と、内科クリニックが果たすべき新たな役割について紹介します。

超高齢社会で増大する「生活機能低下」という課題

日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。厚生労働省は健康寿命の延伸を重要な政策課題に位置付け、介護予防を推進しています(※1)。

高齢者医療では、高血圧や糖尿病、慢性腎臓病、慢性心不全などの疾患管理が重要であることに変わりはありません。しかし患者が本当に困るのは、検査値の異常そのものではなく、「歩けなくなること」「外出できなくなること」「自立した生活が送れなくなること」です。
こうした生活機能低下の背景には、フレイルやサルコペニアの存在があります。
フレイルは加齢に伴い心身の予備能力が低下した状態を指し、要介護状態へ移行する前段階と考えられています。
一方、サルコペニアは加齢や疾患に伴う筋肉量・筋力の低下を意味します。
問題は、これらが内科疾患とも密接に関連している点です。糖尿病患者では筋量低下が起こりやすく、心不全患者では身体活動量の低下が予後悪化につながることが知られています。そのため、疾患管理と並行して身体機能への介入を行う視点が欠かせません。

運動療法は「治療」の一つになっている

運動療法は単なる健康指導ではありません。現在では多くの慢性疾患に対してエビデンスが蓄積されており、治療介入の一つとして位置付けられています。

Denise Taylorらは、「Physical activity is medicine for older adults」において、高齢者が定期的な身体活動を実施することで心血管疾患、糖尿病、転倒リスクなどの低減が期待できることを報告しています(※2)。

重要なのは、運動療法の効果が身体機能だけに留まらないことです。運動は筋力や持久力を改善するだけでなく、
・認知機能の維持
・抑うつ症状の軽減
・社会参加の促進
・QOLの向上
にも寄与します。


近年では「Exercise is Medicine(運動は薬である)」という考え方が世界的に広まりつつあります。内科診療において薬物療法が重要であることは当然ですが、薬だけで患者の生活機能低下を防ぐことは困難です。その意味で運動療法は、慢性疾患管理を補完する極めて重要な治療手段といえるでしょう。

リハビリの現状と課題

一方で、リハビリの重要性が認識されているにもかかわらず、実際には十分な介入が行われていないケースも少なくありません。

特に地域医療においては、
・症状が悪化してから紹介される
・転倒後に初めて介入される
・要介護認定後に支援が始まる
といった状況が依然として見られます。

しかし本来のリハビリは、「失った機能を回復する」だけではありません。近年では予防的リハビリの概念が重視されており、生活機能低下が進む前に介入することが推奨されています。実際、フレイル高齢者を対象としたシステマティックレビューでは、多面的な運動介入によって身体機能や移動能力の改善が認められています(※3)。
つまり、リハビリは介護状態になってから始めるものではなく、元気なうちから取り組むべき医療資源へと変化しているのです。

内科クリニックだからこそできる運動療法の実践

では、超高齢社会において内科クリニックにはどのような役割が求められるのでしょうか。
その答えは、「早期発見」と「早期介入」にあります。

内科クリニックは患者と最も接触頻度が高い医療機関です。

高血圧や糖尿病で定期通院している患者に対し、
・歩行速度が低下していないか
・最近転倒していないか
・活動量が減少していないか
・体重減少がないか
を確認するだけでもフレイルの兆候を捉えることができます。


また、運動療法を継続させるためには、患者自身がその必要性を理解することが重要です。

「筋力が低下しています」

と伝えるだけでは行動変容は起こりません。
「今のうちに運動を始めることで5年後も自分で買い物に行ける可能性が高まります」br>といった生活機能の視点で説明することが、患者のモチベーション向上につながります。
さらに、理学療法士や訪問リハビリテーション、地域包括支援センターとの連携も重要です。
クリニック単独では十分な運動支援が難しくても、地域資源を組み合わせることで継続的な介入が可能になります。

これからの内科医療は「機能を守る医療」へ

超高齢社会では、寿命の延伸だけでなく健康寿命の延伸が求められています。
そのためには、疾患を治療するだけでなく、「動ける身体を維持する」ことが不可欠です。
リハビリや運動療法は決して特別な医療ではありません。むしろ、慢性疾患管理の延長線上にある日常診療の一部として考えるべき時代に入っています。
今後の内科医療に求められるのは、検査値だけを追うのではなく、患者の生活機能や社会参加まで視野に入れた包括的なアプローチです。
運動療法とリハビリを積極的に活用することは、その第一歩となるでしょう。

まとめ

超高齢社会の進展に伴い、フレイルやサルコペニアへの対応は内科診療における重要な課題となっています。運動療法は慢性疾患管理を支える有効な治療戦略であり、リハビリは機能回復だけでなく予防の観点からも価値を発揮します。
患者が「長生きすること」ではなく「自分らしく生活し続けること」を実現するために、内科クリニックには生活機能への早期介入という新たな役割が期待されています。今こそ、運動療法とリハビリの可能性を改めて見直す時期ではないでしょうか。

参考文献

(※1)介護予防マニュアル 第4版(令和4年3月)
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25277.html

(※2)Physical activity is medicine for older adults, Denise Taylor
Postgraduate Medical Journal:2014;90(1059):26-32
https://doi.org/10.1136/postgradmedj-2012-131366

(※3)Effects of physical exercise interventions in frail older adults: a systematic review of randomized controlled trials, Carmen de Labra, et al.
BMC Geriatrics:2015;15:154
https://doi.org/10.1186/s12877-015-0155-4

掲載日:2026/10/22

この記事の著者

コンテンツ制作チーム
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