当サイトページは日本国内の医療関係者(医師、理学療法士、その他医療関係者)の皆様を対象に医科向け医療機器を適正にご使用いただくための情報を提供しています。
日本国外の医療関係者や、一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

医療関係者ですか?

YES
/
NO

NOを選択すると、
トップページに戻ります。

ADL評価の基本①:Barthel Index(バーセルインデックス)による日常生活活動の測定

はじめに

高齢化社会において、医療・介護の現場では日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)の評価がますます重要になっています。ADL評価は、疾患や障害を抱える患者の生活機能を客観的に把握し、治療やリハビリテーション、ケアプランの策定における基礎情報となります。本コラムでは、ADL評価の中でも代表的な「Barthel Index(バーセルインデックス)」に焦点を当て、その概要や活用方法、注意点について解説していきます。

Barthel Index(バーセルインデックス)とは

Barthel Indexは、1965年にMahoneyとBarthelによって開発されたADL評価指標で、主に脳卒中患者を対象に日常生活の自立度を定量的に評価する目的で使用されてきました。評価項目は10項目で構成されており、それぞれの項目には加点基準が設けられ、合計点が高いほどADLの自立度が高いと判断されます。

評価項目とスコアの概要

Barthel Indexは以下の10項目から構成されています。

評価項目
食事
移乗(ベッド・椅子間)
身体の清拭
トイレ動作
入浴
歩行または車椅子移動
階段昇降
更衣
排便コントロール
排尿コントロール

各項目には5点〜15点程度の配点が設定されており、満点は100点です。評価結果により、自立度を以下のように分類することが一般的です。

合計点自立度分類
0〜20点全介助
21〜60点中等度介助
61〜90点軽度介助
91〜99点自立に近い
100点完全自立

Barthel Indexの特徴と利点

・短時間で実施可能(5〜10分程度)
・観察評価または患者・家族への聴取によって実施可能
・評価者間の信頼性が比較的高い
・点数が明確であり、変化を追いやすい

そのため、急性期病院から回復期リハビリテーション、さらには在宅医療や介護施設に至るまで、幅広い領域で使用されています。

評価の実施と活用のポイント

1. 評価時点の明確化:ADLは病状や環境によって変化するため、評価を実施した時点とその状況を明記する必要があります。
2. 観察と聴取のバランス:可能な限り観察による評価が望ましいですが、状況に応じて家族からの聴取情報も参考にすることがあります。
3. 継続的な評価:定期的な再評価を行うことで、治療やリハビリの効果を測定する指標として活用できます。

Barthel Indexの限界と補完的視点

・IADL(手段的日常生活活動)の評価が含まれていない
・心理社会的要素の反映が乏しい
・文化的・生活習慣的背景を考慮しにくい

そのため、IADL評価(Lawton IADLスケールなど)や認知機能評価(MMSEなど)、QOL評価(EQ-5DやSF-36)と併用することで、より包括的な評価が可能になります。

臨床での活用事例

急性期病院においては、Barthel Indexを用いることで退院支援の目安や転院の判断材料になります。また、回復期リハ病棟では、入院時・退院時の比較によりリハビリ効果を評価する指標として使用されます。さらに在宅医療・介護の場面では、ケアマネジメントにおけるADL評価の基礎資料としても重要です。

まとめ

Barthel Index(バーセルインデックス)は、ADL評価の中でも信頼性と実用性が高く、医療・介護現場で広く活用されています。ADL評価を適切に実施することで、個々の患者に対する適切な治療計画や支援の設計が可能となります。今後は、Barthel Indexに加え、他の補完的評価ツールも併用しながら、より総合的な視点で患者の生活機能を評価していくことが求められます。

参考文献

1. Mahoney FI, Barthel DW. “Functional Evaluation: The Barthel Index.” Maryland State Medical Journal, 1965.
2. Shah S, Vanclay F, Cooper B. “Improving the sensitivity of the Barthel Index for stroke rehabilitation.” Journal of Clinical Epidemiology, 1989.
3. Wade DT, Collin C. “The Barthel ADL Index: a standard measure of physical disability?” International Disability Studies, 1988.
4. 日本リハビリテーション医学会編.「日常生活活動(ADL)評価の手引き」最新改訂版.

関連商品

記事一覧に戻る