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ADLの評価②:FIM(機能的自立度評価法)とは?評価方法と活用のポイント

はじめに

ADL(日常生活動作)の評価は、高齢者や障害を持つ患者さんに対するリハビリテーションや介護計画の基盤となる重要なプロセスです。その中でも「FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)」は、国際的に広く用いられている標準化された指標であり、患者の機能的自立度を総合的に評価できるツールです。本コラムでは「ADL」と「FIM」に焦点をあて、その概要や評価方法、臨床での活用法について解説します。

FIMとは?ADL評価における位置づけ

FIMは1980年代に米国で開発された評価法で、急性期から回復期、維持期に至るまで幅広い医療現場で使用されています。FIMの大きな特徴は、ADL評価の中でも「身体的側面」だけでなく「認知的側面」も含め、患者の生活全体を多面的にとらえることができる点です。

ADL評価は一般に「どの程度自立して生活できるか」を測るものですが、FIMはその中でもより詳細かつ国際的な標準として位置づけられています。

FIMの構成と評価項目

FIMは18項目から構成され、さらに運動(Motor)13項目と認知(Cognition)5項目に分かれています。

・運動項目(Motor)
食事、整容、更衣(上半身・下半身)、トイレ動作、排尿管理、排便管理、移乗(ベッド・椅子・車椅子、トイレ、浴室)、歩行・車椅子、階段昇降

・認知項目(Cognition)
理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶

各項目は7点法(7=完全自立~1=全介助)で評価され、合計点は18~126点となります。点数が高いほどADLの自立度が高いことを意味します。

FIMの評価方法

FIMの評価は、患者が日常生活をどの程度自分で遂行できるかを観察し、必要に応じて介助の程度を加味して行います。評価は以下のように分類されます。

・7点:完全自立(安全にかつ合理的な時間内で遂行)
・6点:修正自立(補助具の使用や時間を要するが自立)
・5点:監視または準備(監視下での実施)
・4点:最小介助(患者が75%以上を自分で行う)
・3点:中等度介助(50%以上~75%未満を自分で行う)
・2点:最大介助(25%以上~50%未満を自分で行う)
・1点:全介助(25%未満しか行えない)

FIMはこのように介助の度合いを詳細にスコア化できるため、患者のADL能力を客観的に数値化し、リハビリ計画や経過観察に役立ちます。

FIMの特徴と利点

1. 包括的な評価
身体機能だけでなく、認知機能を含めた生活全体の自立度を把握できます。

2. 経過の追跡が容易
数値化されるため、リハビリの効果や患者の回復過程を明確に比較できます。

3. 国際的な活用
世界各国の医療現場で使用されており、研究や臨床でのエビデンスも豊富です。

4. チーム医療での共通言語
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など多職種が共通の指標として使えるため、情報共有がスムーズになります。

FIMの限界と課題

一方で、FIMには以下のような課題も指摘されています。

・評価に一定の経験と訓練が必要で、評価者間のばらつきが生じる可能性がある
・高次脳機能障害や軽度認知障害などの微細な変化は十分に反映できない場合がある
・評価に時間がかかるため、繁忙な臨床現場では負担となることがある

これらの課題を理解した上で、他のADL評価法(例:Barthel Index)と併用することも推奨されます。

FIMの臨床応用とエビデンス

FIMは特に回復期リハビリテーション病棟において、リハビリ効果の評価や退院支援に広く活用されています。研究では、FIMの改善度がその後の自宅復帰率や生活の自立度と相関することが報告されています。

例えば、回復期リハビリ病棟の全国データベースを解析した研究では、FIMの入院時スコアと退院時スコアの差(FIM利得)が大きいほど、自宅復帰の可能性が高いと示されています(Tokunaga et al., 2017)。

また、脳卒中リハビリにおいてもFIMは有効な予後予測因子であり、退院後の生活自立度の指標として信頼性が高いとされています。

まとめ

FIMはADL評価の中でも、身体機能と認知機能を含めた包括的な評価が可能な有用なツールです。医療従事者にとって、FIMを活用することは患者の現状把握、リハビリ計画の立案、退院支援に不可欠です。

今後も高齢化社会の進展とともに、FIMの重要性はさらに高まっていくでしょう。臨床での適切な運用とエビデンスに基づく活用が求められています。

参考文献

1. Tokunaga, M., Nakanishi, R., Nishioka, S., et al. (2017).
A Method of Calculating Functional Independence Measure at Discharge from Functional Independence Measure Effectiveness Predicted by Multiple Regression Analysis Has a High Degree of Predictive Accuracy/J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017;26(9):1923–1928
https://doi.org/10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2017.06.028

2. Keith, R. A., Granger, C. V., Hamilton, B. B., & Sherwin, F. S. (1987).
The functional independence measure: a new tool for rehabilitation. Advances in Clinical Rehabilitation, 1, 6–18.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3503663/

更新日:2025/11/20

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