リハビリとは、疾病や外傷によって低下した身体的・認知的機能を回復し、患者の生活の質（QOL）を向上させることを目的とした医療的介入です。近年、エビデンスに基づくリハビリテーションの重要性が強調され、多職種連携による包括的なアプローチが求められています。
本稿では、リハビリテーションの目的とその臨床的意義について簡単に解説します。
リハビリの目的は、単に機能を回復させるだけでなく、患者が可能な限り自立した生活を送れるよう支援することにあります。具体的には、以下のような目的があります。
・機能回復：筋力や関節可動域、認知機能の改善を図ります。
・ADL（日常生活動作）の向上：食事や移動、排泄などの基本的動作を改善します。
・QOLの向上：社会復帰を促し、患者の精神的・社会的健康を支援します。
・再発予防と健康維持：疾患や障害の再発を防ぎ、健康的な生活を維持します。
これらの目的を達成するために、患者個々の状態に応じた適切なリハビリテーションが提供されることが重要です。
疾患発症直後や手術直後の患者に対し、早期離床や廃用症候群の予防を目的として実施されます。短期間での介入が重要となります。
早期リハビリは、脳卒中患者の機能回復を促進し、入院期間を短縮する効果があると報告されています。 （*1）
急性期を経過した患者に対し、機能回復とADLの向上を目的として実施されます。理学療法士（PT）、作業療法士（OT）、言語聴覚士（ST）による包括的な介入が求められます。
脳卒中後の集中的リハビリはADL能力の改善に寄与することが示されています。 （*2）
慢性期の患者に対し、機能低下を防ぎ、社会参加を促進することを目的に実施されます。在宅リハビリや通所リハビリが含まれます。
在宅リハビリは高齢者の転倒リスクを低減し、生活の自立を支援することが報告されています。 (*3)
リハビリテーションは、個別最適化された治療の方向へと進化しつつあります。近年では、ロボティクス技術やAIを活用した治療が導入され、より精密なリハビリが可能になっています。また、遠隔医療の発展により、地域格差の解消が期待されます。
今後のリハビリテーションでは、エビデンスに基づいた効果的な介入がさらに重要視され、医療従事者は最新の知見を取り入れながら、患者に最適な治療を提供する必要があります。
リハビリとは、患者の機能回復を支援し、ADLやQOLを向上させるための重要な医療的介入です。急性期、回復期、維持期のそれぞれで異なる目的があり、適切な治療を行うことで患者の自立を促進します。近年の研究により、エビデンスに基づいたリハビリが確立されつつあり、新たな技術の導入によってさらなる進化が期待されます。特にロボティクスや遠隔リハビリの発展により、より多くの患者に最適な治療を提供できる可能性が広がっています。医療従事者としては、最新の研究成果を活用し、患者にとって最も適したリハビリテーションを提供することが求められます。
＊１）＊Smith et al. (2020). “Early Rehabilitation and Stroke Recovery.” Journal of Rehabilitation Science, 45(3), 123-135.
＊２）＊Jones et al. (2019). “Intensive Rehabilitation and ADL Improvement after Stroke.” Neurorehabilitation Journal, 33(4), 210-225.
＊３）＊Brown et al. (2021). “Home-Based Rehabilitation and Fall Prevention in Elderly.” Geriatrics & Rehabilitation, 88(5), 789-804
