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春先に増える転倒・骨折を防ぐ!骨粗しょう症患者に対する運動療法の実践ポイント

1.春先に「転倒」「骨折」が増える背景

春は気候が穏やかになり活動量が増える一方で、「転倒」や「骨折」が増加しやすい時期でもあります。特に高齢者では、冬季の活動量低下による筋力低下やバランス機能の低下が残存したまま外出機会が増えるため、転倒リスクが高まります。
さらに、春特有の環境要因として以下が挙げられます。
 • 冬明けで身体機能が十分に回復していない
 • 花粉症や体調変化による集中力低下
 • 昼夜の寒暖差による身体機能の不安定化
 • 外出機会増加による歩行距離の急激な増加
これらの要因が重なることで、転倒発生率が上昇し、その結果として「骨折」につながるケースが少なくありません。

2.骨粗しょう症と転倒・骨折の関連

2-1.骨折リスクを高める骨粗しょう症

骨粗しょう症は骨密度の低下および骨質の劣化により、軽微な外力でも骨折が生じやすくなる疾患です。特に大腿骨近位部骨折や椎体骨折は、ADL低下や寝たきりの原因となるため、予防が極めて重要です。
骨粗しょう症患者では、「転倒=骨折」となるリスクが健常者よりも著しく高いことが報告されています(※1)。

2-2.転倒予防と骨折予防は一体で考える

臨床において重要なのは、「骨密度改善」だけでなく「転倒予防」を同時に行うことです。
骨が弱くても転倒しなければ骨折は起こらず、逆に骨が比較的保たれていても転倒すれば骨折する可能性があります。
したがって、「転倒」「骨折」「予防」は一体として捉え、包括的に介入する必要があります。

3.転倒・骨折予防における運動療法のエビデンス

3-1.運動は骨密度・身体機能双方に有効

複数の研究により、運動療法は骨密度の維持・改善に加え、筋力やバランス能力の向上を通じて転倒リスクを低減することが示されています(※2)。
特に以下の要素を含む運動が有効とされています。
 • レジスタンストレーニング(筋力強化)
 • バランストレーニング
 • 荷重運動(ウォーキングなど)
これらを組み合わせることで、骨粗しょう症患者における骨折予防効果が高まる可能性があります。

3-2.転倒予防運動の効果

バランス訓練や筋力トレーニングを含む多因子運動プログラムは、高齢者の転倒発生率を有意に低下させることが報告されています(※3)。
つまり、運動療法は「骨折予防」だけでなく、「転倒予防」の観点からも重要な介入手段です。

4.臨床で実践できる運動療法プログラム

医療従事者が患者指導に活かせる、具体的な運動療法の例を紹介します。

4-1.下肢筋力トレーニング

 • スクワット(椅子からの立ち座り)
 • かかと上げ(カーフレイズ)
 • 太もも前面の筋力強化(膝伸展運動)
→ 下肢筋力の向上は歩行安定性を高め、転倒予防に直結します。

4-2.バランストレーニング

 • 片脚立位(支持ありから開始)
 • タンデム歩行
 • 重心移動練習
→ バランス能力の改善は転倒リスク低減に重要です。

4-3.有酸素運動(屋外活動)

 • ウォーキング(20〜30分)
 • 軽い坂道歩行
→ 荷重刺激により骨代謝を促し、骨粗しょう症対策にも有効です。

5.春先の運動指導で注意すべきポイント

5-1.急激な活動量増加を避ける

春は「動きたくなる季節」ですが、急に活動量を増やすと転倒リスクが高まります。
段階的な負荷設定を徹底することが重要です。

5-2.環境リスクの評価

 • 濡れた路面
 • 段差や不整地
 • 人混み
これらの環境は転倒リスクを高めるため、事前の指導が必要です。

5-3.服装・体調管理

寒暖差対策としての重ね着、花粉症対策、水分補給など、季節特有の注意点を指導します。

6.患者指導に活かすための実践的アプローチ

6-1.「できること」から始める

運動習慣がない患者には、「1日10分の散歩」などハードルを下げた目標設定が有効です。

6-2.転倒経験の振り返り

過去の転倒状況を評価し、原因分析を行うことで、個別化した予防指導が可能になります。

6-3.多職種連携

医師・理学療法士・看護師・栄養士が連携し、
• 運動
• 栄養(カルシウム・ビタミンD)
• 服薬管理
を包括的に行うことで、骨折予防の効果が高まります。

7.まとめ

春は活動量が増える一方で、「転倒」や「骨折」のリスクが高まる時期です。特に骨粗しょう症患者では、転倒が直接骨折につながる可能性が高いため、「予防」の視点が極めて重要となります。
運動療法は、骨密度の維持だけでなく、筋力・バランス能力を向上させることで転倒予防にも寄与する有効な介入です。医療従事者は、患者の身体機能や生活環境に応じた個別化指導を行い、春先のリスクを踏まえた安全な運動習慣の定着を支援することが求められます。
「転ばない身体づくり」と「骨を守る生活習慣」を両立させることが、骨折予防の鍵となります。

参考文献

(※1)Osteoporosis and fracture risk assessment: improving outcomes in postmenopausal women, Mariana Ortega Perez, et al.
Rev Assoc Med Bras.2023 Aug 4;69(suppl 1):e2023S130.
https://doi.org/10.1590/1806-9282.2023S130

(※2)Exercise for improving bone mineral density in postmenopausal women, Kelley, George A. FACSM.
American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation.77(1):p 76-87, January 1998.
https://journals.lww.com/ajpmr/abstract/1998/01000/Exercise_and_Regional_Bone_Mineral_Density_in.15.aspx

(※3)Exercise to prevent falls in older adults: an updated systematic review and meta-analysis, Catherine Sherrington,et al.
British Journal of Sports Medicine. 2017 Dec;51(24):1750-1758.
https://doi.org/bjsports-2016-096547


掲載日:2026/5/9

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