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骨粗鬆症治療は薬だけで十分?運動療法を併用する意義|骨折予防とADL維持のために医療従事者が知っておきたいポイント

1.骨粗鬆症治療は「薬物療法だけ」でよいのか?

骨粗鬆症は、高齢化が進む日本において重要性が増している疾患の一つです。骨密度の低下により骨折リスクが高まり、特に大腿骨近位部骨折や椎体骨折はADL低下や要介護化、さらには生命予後にも影響を与えることが知られています。

近年では、ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体、PTH製剤など、薬物療法の選択肢が増えています。しかし、実臨床では「薬を飲んでいるから安心」と考え、身体活動量が低下している患者も少なくありません。

実際には、骨粗鬆症治療において薬物療法単独では十分とは言い切れず、「運動療法」を併用することに大きな意義があります。
骨粗鬆症の本質的な問題は「骨密度低下」だけではなく、「転倒しやすい身体機能」にもあるためです。

2.骨粗鬆症と転倒リスクの深い関係

骨粗鬆症患者では、加齢に伴う筋力低下やバランス能力低下を合併しているケースが多くみられます。特に下肢筋力低下は転倒リスクを増大させ、結果として骨折につながります。
そのため、骨密度を改善するだけではなく、「転ばない身体づくり」が重要になります。
近年のメタアナリシスでは、運動介入によって高齢者の骨折リスクが有意に低下することが示されています(※1)。

また、長期的な運動習慣は、転倒、骨折、入院、死亡リスク低下とも関連していることが報告されています(※2)。

つまり骨粗鬆症治療では、

・骨を強くする
・筋力を維持する
・バランス能力を改善する
・転倒を防ぐ

という多面的なアプローチが求められます。

3.なぜ運動療法が骨粗鬆症に有効なのか?

3-1.骨には「荷重刺激」が必要

骨は単なる構造物ではなく、力学的刺激に応じて代謝を行う組織です。
適切な荷重刺激が加わることで骨形成が促進され、骨密度維持につながります。逆に、活動量低下や長期臥床では骨吸収が進行しやすくなります。
そのため骨粗鬆症患者に対する運動療法では、荷重運動やレジスタンストレーニングが重要になります。

特に、

・スクワット
・立ち上がり練習
・階段昇降
・レジスタンストレーニング
・バランストレーニング

などは骨への刺激と転倒予防を同時に期待できます。

3-2.筋力改善は転倒予防につながる

骨折予防では「骨密度」ばかりが注目されがちですが、実際には転倒予防が非常に重要です。
高齢者ではサルコペニアやフレイルを併発していることも多く、下肢筋力低下によって歩行能力や姿勢制御能力が低下します。
そのため、運動療法による筋力向上は、骨折予防の観点でも大きな意味があります。
特に下肢伸展筋群や体幹筋群への介入は、歩行安定性向上に寄与しやすく、転倒リスク低下につながります。

4.骨粗鬆症に対する運動療法の実際

4-1.推奨される運動内容

骨粗鬆症患者に推奨される運動療法としては、以下が代表的です。

レジスタンストレーニング
筋力向上と骨刺激を目的に実施します。特に大腿四頭筋、殿筋群、脊柱起立筋への介入は重要です。

荷重運動
ウォーキングや階段昇降などは比較的導入しやすく、継続性も期待できます。

バランストレーニング
片脚立位、タンデム歩行などは転倒予防に有効です。

多面的運動プログラム
筋力、バランス、敏捷性を組み合わせた複合的介入は、骨折リスク低下に有効とされています(※1)。

5.運動療法を行う際の注意点

5-1.過度な脊柱屈曲運動は避ける

高度骨粗鬆症患者では、強い体幹屈曲動作によって椎体骨折リスクが高まる可能性があります。

そのため、

・強い前屈運動
・急激な回旋動作
・高負荷ジャンプ

などは慎重に判断する必要があります。

5-2.個別性を重視する

骨粗鬆症患者は年齢、既往骨折、疼痛、併存疾患、身体機能が大きく異なります。

そのため、画一的なプログラムではなく、

・骨折既往
・歩行能力
・バランス能力
・疼痛
・転倒歴

を踏まえた個別的な運動療法が求められます。

6.医療従事者に求められる視点

骨粗鬆症治療では、「薬を処方して終わり」では十分ではありません。

特に高齢患者では、

・運動習慣の有無
・活動量低下
・転倒リスク
・サルコペニア
・フレイル

を包括的に評価する必要があります。

また、患者自身が「安静のほうが安全」と考えてしまい、活動量低下を招くケースもあります。
しかし、過度な安静は筋力低下や骨量低下を進行させる可能性があります。

そのため、医療従事者には、

・適切な運動指導
・継続支援
・多職種連携
・患者教育

が求められます。

特に理学療法士や運動指導に関わるスタッフの役割は非常に重要です。

7.まとめ|骨粗鬆症治療では運動療法の併用が重要

骨粗鬆症治療では薬物療法が中心となる場面も多いですが、それだけでは転倒や骨折リスクを十分に抑えられない場合があります。

運動療法には、

・骨への力学的刺激
・筋力向上
・バランス能力改善
・転倒予防
・ADL維持

といった多面的効果が期待できます。

特に高齢者では、骨密度だけではなく「転ばない身体づくり」が極めて重要です。

今後の骨粗鬆症診療では、薬物療法と運動療法を組み合わせた包括的アプローチが、より重要になるでしょう。

参考文献

(※1)Effectiveness of exercise intervention on fall-related fractures in older adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials, Qiang Wang, et al.
BMC Geriatrics, 2020 Sep 4;20(1):322
https://doi.org/10.1186/s12877-020-01721-6

(※2)Association of Long-term Exercise Training With Risk of Falls, Fractures, Hospitalizations, and Mortality in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis, de Souto Barreto P, et al.
JAMA Internal Medicine, Vol. 179, No. 3
https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2018.5406

掲載日:2026/6/2

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