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医療法人社団菅沼会
腎内科クリニック世田谷

2026年3月取材

腎内科クリニック世田谷様施設紹介

透析中の工夫が違いを生む、「元気」を守る医療

腎内科クリニック世田谷先生紹介

『元気で長生き』を理念に掲げる医療

―自己紹介と本院が注力しているテーマ

●菅沼先生
 私は旭川医大を卒業後、東京女子医科大学病院に10年間勤務し、透析専門医および腎臓専門医を取得した後、2008年に現在の東京都世田谷区千歳烏山にて腎臓透析と糖尿病に特化したクリニックを開院いたしました。お陰様で、本院は来期で開院20年を迎えます。また、2年前からは美容外来も新たにスタートしております。
 現在注力しているテーマは、「透析患者さんが十分な透析時間を確保して頂ける仕組みづくり」です。
日本国内の一般的な施設における透析治療は、週3回、1回4時間(計12時間)が標準とされていますが、世界の臨床データや長年の経験から、透析時間は長い方が身体への負担が少なく、予後が良いことが分かっています。そこで本院では、患者さんのライフスタイルや希望に合わせて十分な透析時間を確保していただけるよう、日本国内ではまだ実施施設が限られている「在宅血液透析(HHD)」や、夜間の睡眠時間を有効活用する「オーバーナイト透析(深夜透析)」といった治療選択肢を積極的に取り入れ、長時間の透析を患者さんの生活の中で実現できる工夫をしています。
  「オーバーナイト透析」では、眠っている間に1回あたり約8時間の施設透析を行います。これにより、日中は仕事や趣味などの時間を完全に自由に使えるだけでなく、8時間かけてゆっくりと除水や毒素の除去を行うため、透析特有の血圧変動や終了後の疲労感が軽減されます。また「在宅血液透析」を選択されている患者さんの多くは、ご自宅で週5回から6回という高頻度での透析(頻回透析)を実践されています。1回あたりの時間は比較的短くとも、頻度を増やすことで体液バランスが常に一定に保たれ、食事制限も大幅に緩和されます。これらの長時間透析・頻回透析を実践されている患者さん方は、皆さん驚くほど「元気」でいらっしゃいます。そういった患者さん方を見ると、やはり、長時間透析や頻回透析が患者さんの状態を良好に保つうえで重要であることを実感しています。
 最近は竹石先生とともに、透析患者さんの「皮膚明度の測定」という、他施設ではあまり例を見ないユニークな取り組みを行っています。かつて、長期の透析患者さんといえば「皮膚が黒ずんでしまう」というイメージが一般的でした。これは透析不足による尿毒素の蓄積や、色素沈着が原因とされています。しかし、本院で十分な透析を行っている患者さんを対象に皮膚の明るさを定量的に測定したところ、健常者の方々と比較しても遜色のない、素晴らしい結果が得られました。つまり、本院の透析患者さんは皮膚の明るさが保たれている方が多いということです。この結果については、2026年3月に開催された「腎不全スキンケア研究会」でも発表させていただきました。
 また、透析のモダリティに関しては、間歇補充型HDF(I-HDF)という透析方法にも注目しています。
これは栄養状態の改善に寄与する可能性があり、本院でも早い段階からその有用性について発信してきました。現在、透析患者さんの高齢化やフレイルが大きな課題となっていますが、I-HDFを導入することでフレイル予防につながる可能性があります。実際に、患者さんによっては体重の増加がみられるケースもあり、GNRIやNRI-JHといった栄養評価指標においても有意な改善が認められています。このように、透析医療の質を高め、患者さんの生活の質を向上させるための取り組みにも力を入れています。
 本院が医療活動の理念として重視しているのは、「元気で長生き」を目指すことです。患者さんにとって究極のアウトカムである生命予後の改善にこだわり、診療に取り組んできました。
 その中で重要なのが透析時間です。本院では「しっかり食べて、動いて、しっかり透析」という方針のもと、十分な透析時間の確保に加え、栄養状態(血清アルブミン値など)の維持や身体活動の促進にも注力しています。
 日本の透析患者における年間粗死亡率は、従来9~10%前後でしたが、近年は高齢化や感染症(特にCOVID-19)の影響もあり約11%まで上昇しています。 一方、本院では開業以来おおむね6%弱で推移しており、全国平均と比較して低い水準を維持しています。これらの結果から、「元気で長生き」を目指す本院の理念は、一定の成果として現れていると考えています。

腎内科クリニック世田谷_施設内01

―「これはすごい!」と感じたG-TES導入の決め手

●菅沼先生
 G-TESの導入のきっかけは、業者の方から「こういった素晴らしい装置がありますよ」と、紹介していただいたことでした。そこで私たちもG-TESについて調べてみたところ、すでにいくつもの臨床研究が行われていることがわかりました。それらによれば、G-TESの使用によって膝伸展筋力や握力といった筋力の改善がみられるほか、SPPBで評価される運動機能の向上、さらには血管内皮機能(FMD)や下肢血流の改善、血糖値の改善など、さまざまな有益な結果が示されていて、「これはすごい!」ということで、臨床研究で良好な結果が示されていたことと、保険適用も可能であるという点から、G-TESは非常に有用な機器ではないかと感じました。本院でも、下肢エルゴメーターを用いた運動を行っておりますが、実際には実施できる患者さんが限られていて、運動ができる患者さんを増やせないという課題がありました。患者さんには寒がりの方も多く、運動を行うために布団を外す必要があると、「寒いから勘弁してくれ」などと言われてしまうことも少なくありませんでした。その点、このG-TESであれば布団をかけたままでも実施することができ、透析中に無理なく運動刺激を与えることができます。また、普段は歩いている患者さんだけでなく、フレイルが進んでいる方や、自力で足こぎ運動が難しい方にも適用できる可能性がありますので、より多くの患者さんに運動刺激を提供できるという点が大きな魅力でした。価格面では決して安い機器ではありませんでしたが、こうした利点を総合的に考え、導入を決めました。結果として、良い機器を紹介していただいて、大変感謝しています。

状態に応じたG-TESの細かなモード調整

―G-TESの対象症例と有用性

●菅沼先生
 G-TESは、あらゆる患者さんに適応が可能だと思います。「やってもいい」と言ってくださる患者さんには、できるだけ積極的に使用していただいています。ただし、現時点では本院に導入しているG-TESは1台のため、複数の患者さんに順番で使用していただいていて、使用の継続を希望される患者さんについては、できるだけ継続できるよう調整しながら運用しています。運用方法としては、透析中に1人あたり30分間実施し、終了後に次の患者さんへ交代する形で、順番に使用していただいています。本院の平均透析時間は5時間を超えているため、透析中の時間を活用しながら、多くの患者さんにG-TESを体験していただけるようにしています。

●竹石先生
 まずは、ご自身での運動が難しい患者さんをピックアップして使用しました。 ベッドで横になったままでも運動ができない方は少なくありませんので、そういった方を優先にG-TESを使い始めました。
以前から下肢エルゴメーターを行っていますが、実際に取り組んでくださる患者さんは全体で1人か2人ほどでした。 患者さんの中には「ちょっと面倒くさい」という気持ちを持たれる方も多く、その面倒というハードルを越えるためにG-TESの使用はとても有用でした。 患者さんは寝たままで、電極ベルトの装着はスタッフ側で行い、あとは30分間自動で電気刺激が入ります。 患者さんの負担が少ないので、「それなら、やってみてもいいかな」と言われる患者さんが多く、こうした形で徐々にG-TESを使用する患者さんの数を増やしています。 まずは、自力で運動が難しい患者さんを優先しながら、運動による転倒やけがが心配な方にも積極的に使用しています。]

●菅沼先生
 竹石先生が述べたように、G-TESはフレイルの患者さんや、普段運動が困難な方、さらには寝たきりに近い方にも適応できる点が大きなメリットであり、筋力や運動機能の改善効果についても、すでに臨床研究で報告されている点は大きな魅力です。
 本院では「しっかり食べて、動いて、しっかり透析」を推奨していますが、これは透析量・栄養状態・筋肉量の3点が揃っている患者さんほど、長く元気に生活されていることが分かっているためであり、筋肉量維持の観点からも患者さんに運動を取り入れることを積極的に勧めています。 本院での筋肉量の指標としては、MLTという、身体組成分析によるインピーダンスモデルを用いて体液量などを測定し、むくみの評価などにも使用しているのですが、その評価では筋肉量のデータも確認することができます。 その結果として、実際にG-TESを開始してから筋肉量が明らかに増えている患者さんもいらっしゃいました。 看護師さんがそれを見てくれていて、数値が上がっていることを報告してくれまして、「上がっている、素晴らしい!」と感激したのですが、さらに、その患者さんは歩数も伸びていて、以前よりも歩けるようになっていました。 歩数管理については、患者さんに自己管理用のスマホアプリの利用を勧めています。 月に1回、看護師がフットケアとして、透析患者さん全員の足の状態をチェックする際に、歩数の確認もあわせて行っています。
 自己管理アプリについては、いろいろなものがありますが、現在は、クリニック側も患者さんも双方無料で利用できるものを勧めています。 このアプリでは、生活記録を残すことができ、食事の写真を撮って管理栄養士が内容を確認することもできます。運動だけで食事量が不足すると体重が減ってしまうため、食事と運動の両方を意識してもらうことが重要です。 歩数も自動で記録されるため、患者さんの活動量の把握にも役立っています。
私自身も歩数を記録しており、「私も頑張って歩いていますから、あなたも歩きましょう」と患者さんに記録をお見せすることもあります。 また、このアプリはクリニックのパソコンとも連携しており、患者さんのバイタル、歩数や血圧などの記録される形になっており、スタッフがそのデータを確認することもできます。
 臨床的な透析データの管理には、「透析支援システム」を導入しています。 この支援システムでは、栄養状態の指標であるGNRIやNRI-JH、さらに筋肉量の指標とされる%CGRなどを自動計算し、一覧で確認することができます。 特に「%CGR」は、透析患者さんにおける筋肉量の増減を最も敏感に反映する指標の一つであり、この値が高い患者さんほど生命予後(長期生存率)が良好であるという統計調査結果報告がなされています。 毎月1回の定期採血(前後採血)後には、回診の際にそれらのデータを確認し、患者さんの状態を評価しています。
 G-TESの使用については、本院では基本的に「代謝モード」から始めます。 G-TESを始めて%CGRが上がる患者さんはもちろんいらっしゃるので、それには「おお、やった!」と思いますが、逆に下がってしまう方もおられます。 そういったケースでは、筋トレソフトに上げるといった形で、モードの調整、変更の指示を出して、筋肉量の維持や改善に繋げています。 このような使用法で、代謝モードから始めて筋トレソフトに移行された患者さんは何人もいらっしゃいます。先日は、%CGRが下がってはいなかったのですが、以前に比べると低い値で横ばいというケースで、筋トレモードの中の微調整を行いました。
 筋トレソフトでも比較的高めの設定で「全然大丈夫」と言われる患者さんもいらっしゃいますので、そのような方で%CGR値が横ばいで推移している場合には、筋トレモードで負荷を上げて使用していただくこともあります。このように、患者さんの状態や毎月の採血データを確認しながら、G-TESの設定を段階的に上げていくという形で運用しています。

下肢の血流改善を目的にG-TESを

―G-TESの対象症例と有用性

●竹石先生
 現在、足に創傷(傷)のある透析患者さんの治療において、通常の創傷ケアに加え、G-TESを併用しています。 目的は、電気刺激によって筋肉を動かし、下肢の血流を促進することです。
血流が改善されることで、創傷治癒(傷の治り)が促進されるのではないかと考え、検証を兼ねて試用しています。 現在はまだ1症例のみですが、今後治療効果が確認できれば、G-TESの「創傷治癒促進」という新たなアプローチ(治療選択肢)を確立できると考えています。 将来的には、こうした医療分野での活用にとどまらず、美容や運動効果の向上など、G-TESを幅広いニーズに応用していきたいと考えています。

●菅沼先生
 そのほかにも、下肢の血流改善については、SPPが改善したという報告がすでになされていて、本院でも、竹石先生が透析中に評価をしてくれています。やはり、その中には、SPPの値が20程度、ひどい方では10程度まで低下している患者さんが、ちらほらいらっしゃいますので、そういった方にG-TESを受けていただくことで、SPPの値が上がってくれれば、それはとても意義のあることだと思っています。
 透析患者さんは、心血管系疾患のリスクも非常に高いことが知られています。脳梗塞や心筋梗塞だけでなく、重症下肢虚血(CLI)もあり、そういった状態に至らないように予防できれば良いと考えています。透析中の運動療法についても期待している点があり、例えば下肢エルゴメーターなどの運動を行うことで、透析低血圧の予防につながる可能性があると考えています。
 透析患者さんについては、透析低血圧もなるべく避けたい合併症のひとつです。透析中の後半になると、除水が進むため、どうしても血圧が下がりやすくなりますが、収縮期血圧90は切らないほうが良いので、透析低血圧がある患者さんには透析中に運動していただいたほうが、透析低血圧も起こりにくくなるのではという期待を込めて、G-TESを使用しています。G-TESの使用について、今後の展望としては、現在は代謝モードと筋トレソフトで実施している患者さんが多いので、今後は可能な方については、より負荷の高い筋トレモードに徐々に移行していきたいと考えています。また、評価の面では、竹石先生の取り組みにあったような、血管内皮機能はFMD検査で評価可能であり、SPPの測定に加えて、CAVIやABIといった指標も下肢血流の評価として重要です。こうした検査を用いながら、今後はG-TESの血流改善の効果についても評価していきたいと考えています。

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