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歩ける透析患者がクリニック経営を支える|転倒予防リハビリがもたらす医療・経営双方のメリットとは

はじめに

透析医療の現場では、高齢化の進行に伴い身体機能が低下した患者への対応が大きな課題となっています。
なかでも見落とされがちなのが、転倒や骨折による入院・転院です。
透析患者は筋力低下やサルコペニア、フレイルを合併しやすく、一般高齢者と比較して転倒リスクが高いことが知られています。そして一度骨折を起こすと、長期入院や施設入所につながり、結果として透析クリニックへの通院継続が困難になるケースも少なくありません。
これは患者本人のQOL低下だけでなく、透析施設にとっても継続通院患者の減少という経営上の課題につながります。
だからこそ今、透析患者が「歩ける」状態を維持することが重要視されています。
本コラムでは、透析患者の転倒リスクと運動療法の効果を整理しながら、「歩ける透析患者」を増やすことが医療の質向上だけでなく、クリニック経営にも好影響をもたらす理由についてご紹介します。

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透析患者はなぜ転倒しやすいのか

透析患者は転倒リスクが高い集団として知られています。
その背景には複数の要因があります。
まず慢性腎臓病患者では、加齢以上の速度で筋力低下が進行します。
さらに、
 • サルコペニア
 • フレイル
 • 低栄養
 • 末梢神経障害
 • 透析後の血圧低下
 • 骨粗鬆症
などが重なります。
週3回の血液透析を受けている患者の中には、透析後に著しい疲労感やふらつきを訴える方も少なくありません。
実際、透析患者は一般高齢者よりも転倒発生率が高く、骨折リスクも高いことが報告されています(※1)。
特に大腿骨近位部骨折は予後に大きく影響します。
骨折後に歩行能力を失うと、自宅からの通院が困難となり、回復期病院や療養施設への転院を余儀なくされるケースもあります。

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「歩けなくなること」が透析医療に与える影響

透析患者にとって歩行能力は単なる移動手段ではありません。
透析継続そのものを支える重要な機能です。
例えば、
 • 自宅から送迎車まで移動する
 • 施設内を移動する
 • ベッドへ移乗する
 • トイレを利用する
これらの動作には一定の身体機能が必要です。
歩ける患者であれば外来透析を継続できます。
一方で歩行能力が著しく低下すると、
 • 通院困難
 • 入院透析への移行
 • 転院
 • 介護施設入所
などにつながる可能性があります。
つまり「歩ける」という機能は、患者の生活を支えるだけでなく、外来透析という医療提供体制を維持する上でも重要な意味を持つのです。

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転倒・骨折はクリニック経営上のリスクでもある

医療機関では患者の健康改善が最優先ですが、経営という視点も無視できません。
透析医療は継続的な通院によって成り立つ医療です。
そのため、患者が転倒や骨折によって入院すると、施設側にも影響が生じます。
例えば、
転倒

骨折

入院

回復期病院へ転院

透析施設変更
という流れは決して珍しくありません。
本来であれば長期的に通院継続していた患者が離脱することで、クリニックは患者数減少という形で影響を受けます。
もちろん患者の転院先で透析が継続されること自体は医療として必要な選択です。
しかし、転倒予防によって通院継続が可能であれば、患者満足度向上と経営安定化の両立が期待できます。
近年、透析医療においては医療の質と経営の両立が重要なテーマとなっています。
そのなかで歩行能力の維持は大きな価値を持っています。

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運動療法は透析患者の身体機能を改善する

透析患者に対する運動療法の有効性は数多く報告されています。
運動というと「透析患者には負担が大きい」と考えられることがあります。
しかし近年では、適切に管理された運動療法が身体機能改善に寄与することが明らかになっています。
Cheemaらによるシステマティックレビューでは、透析患者への運動介入によって筋力や運動耐容能の改善が認められました(※2)。
また運動療法には、
 • 下肢筋力向上
 • 歩行速度改善
 • バランス能力向上
 • フレイル予防
 • ADL維持
などの効果が期待されています。
つまり転倒予防の土台となる身体機能そのものを改善できる可能性があるのです。

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転倒予防はリハビリの重要テーマ

透析患者へのリハビリでは、単なる筋力トレーニングだけでは不十分です。
重要なのは転倒予防という視点です。
具体的には、

下肢筋力強化

立ち上がりや歩行能力に直結します。
大腿四頭筋や殿筋群へのアプローチは転倒予防の基本です。

バランス練習

片脚立位や重心移動練習などを取り入れることで姿勢制御能力向上が期待できます。

歩行練習

「歩ける透析患者」を増やすためには、実際の歩行場面を想定した訓練が重要です。

活動量向上

透析日以外の活動量低下は身体機能低下を招きます。
日常生活全体の活動量向上を支援する視点も欠かせません。
運動療法によって歩行能力を維持することは、患者の生活圏維持にも直結します。

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「歩ける透析患者」が増えるクリニックの価値

患者が元気に通院を続けられることは、医療の質を示す重要な指標の一つです。
近年では透析医療においても、
 • 生命予後
 • 入院率
 • ADL
 • QOL
といったアウトカムが重視されています。
Johansenらは、透析患者の身体機能低下が入院や死亡リスクと関連することを報告しています(※3)。
つまり身体機能維持は単なるリハビリの成果ではなく、医療の成果そのものといえます。
患者が歩ける状態を維持できれば、
 • 転倒が減る
 • 骨折が減る
 • 入院が減る
 • 通院継続率が向上する
という好循環が生まれます。
結果として患者満足度の向上や地域からの信頼獲得にもつながるでしょう。

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これからの透析医療は「治療」から「機能維持」へ

透析技術の進歩によって、患者の長期生存は珍しいものではなくなりました。
その一方で課題となっているのが健康寿命の延伸です。
透析を受けながらも、
 • 自分で歩く
 • 自宅で暮らす
 • 社会参加する
こうした生活機能を維持することが求められています。
そのためには運動療法やリハビリを医療の周辺サービスとして捉えるのではなく、透析医療の重要な構成要素として位置付ける必要があります。
「透析できる患者」ではなく、「歩ける透析患者」を増やす。
それが今後の透析医療に求められる視点ではないでしょうか。

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まとめ

透析患者はサルコペニアやフレイルの影響を受けやすく、転倒や骨折のリスクが高い集団です。
そして一度歩行能力を失うと、入院や転院によって外来透析継続が困難になる場合があります。
こうした背景から、運動療法を活用して「歩ける透析患者」を増やすことは、患者のQOL向上だけでなく、入院予防や通院継続率向上にもつながります。
リハビリによる転倒予防は、患者利益のためだけではありません。医療の質向上とクリニックの安定的な運営を支える重要な取り組みとして、今後ますます注目されるテーマといえるでしょう。

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参考文献

(※1)Risk Factors for Falls in Patients on Hemodialysis: A 12-Month Prospective Study
Luciana Angélica da Silva de Jesus, et al.
Hemodialysis International. 2026;30(3):591-599.
https://doi.org/10.1111/hdi.70068

(※2)Effect of progressive resistance training on measures of skeletal muscle hypertrophy, muscular strength and health-related quality of life in patients with chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis, Birinder S Cheema, et al.
Sports Medicine. 2014; 44(8):1125-38.
https://doi.org/10.1007/s40279-014-0176-8

(※3)Significance of frailty among dialysis patients, Kirsten L Johansen, et al.
Journal of the American Society of Nephrology. 2007;18(11):2960-2967.
https://doi.org/10.1681/ASN.2007020221

掲載日:2026/8/28

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